第195話 迷いから覚悟へ

まだ少し続きます、最終章といいながらもう一つ作らねば成らなくなりました…………


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本文


ムー軍本陣


「これで溶けたわ、本当にごめんなさいメドゥーサ」


「いえ、私ももう少しましな言い訳を考えれば…………」


アテーナーがメドゥーサの呪いを解いていた。

アテーナーは今揺れていた、精神的に非常に不安定な状態だったのだ。

何千年も敵として見ていた健達の中に、その最も足る敵の筆頭健の妻としてパラスが居る、そしてアプスーやティアマトと言った尊敬する女神までもが健の妻なのである、そして空中の平泳ぎで自分に突っ込んで来た健を娘であるエレキシュガルがはたき落とし自分を守ってくれた。

そして何より大切な親友との仲を取り戻してくれたのが当の健であった。

そして自分を見捨てたのが本来の仲間で有るアレース。

もう何を信じて良いのか解らなく成って居たのである。


「浮かない顔だな? マルティアや朔や桜が俺の妻だったのがそんなに以外か?」


「そうね…………アプスー様やティアマト様がまさか私達の敵だった何て…………」


「なあ、お前本当に戦の女神なのか? 俺には天然ボケの女神にしか思えねえぞ?」


「失礼ね! 何でそうなるのよ‼」


「だって普通に考えて宇宙の意思に反する道を宇宙創造の神が選ぶと思うか?」


「私だって最初はおかしいと思ったわよ! だけど評議会の決定だとベール様から聞かされれば…………」


「自分の思いに蓋をするのか? だからマルティアとあんな事に成る! 自ら確かめる事を怠ったからだ! お前は二度現場把握を怠った、一度目は人間を操り人形にすると言われて違和感を覚えた時、二度目はトリトーンとマルティアを抹殺すると言われて違和感を抱いた時、、、、お前は自分の目で確かめる事をしなかった。自分の思いに蓋をしなければ今回のような悲劇は起こらなかったんだ。お前が本当にマルティアを思っていたのならその時トリトーンに真実を確認して置けば良かったんだ、よくそれで軍略が練れる…………」


「そうよね…………貴方の言う通りだわ大和…………あの時トリトーンにちゃんと確かめて置けば…………パラスとこんな事には成らなかった…………」


「んな!、、ちょ! 泣くな‼ いや、俺はお前を責めてる訳じゃねーんだよ、俺が言いたいのは今後の事だ‼ 自分の思いに素直な気持ちで今度こそ向き合え‼ もう失敗するなって言いたいんだよ‼」


「アテーナー、主人様の言う通りだ! 私はもうお前を恨んではいない、もしお苗が私達の敵に成る道を選んだとしても、今度は強敵として悔いの無い戦いが出来ると思う、だからアテーナー、お前も悔いの無い道を選んでくれ! お前がどの道を選ぼうとも私とお前はもう親友だ!」


「パラス……そうよね……うん! 少し頭を冷やして考えて見るわ‼ ありがとう大和、パラス」


だがもうアテーナーの意思は決まっていた、友を助ける道を進みたい、そう思っていたのだ。


ムー軍主力部隊

現在北アトランティス軍の部隊と激しく交戦していた。

主力部隊を率いるのはセーラ将軍だ。


「報告します! 我が主力部隊は完全に港を封鎖に成功、敵部隊を海岸奥に釘付けに致しました!」


「ワルキューレ隊に念話を、作戦を実行されたし、作戦が始まったら速やかに部隊を内地に避難させなさい、多少敵が上がって来ても無視なさい、至急避難する事が先決です」


「御意!」


ワルキューレ隊を現在率いているのはセレスティア大将である


「セレスティア大将、セーラ将軍からです、作戦を実行されたし、との事です」


「成功したんだな、良し、魔法特化隊に直ぐに決行せよと伝えろ!」


「御意!」


この作戦こそ浩二が今回立てた作戦であった、直接転移できるティアマト人と違い、人間の軍はどうしても海を渡ってこなければならない。だから敵軍を港へつく前に海岸線へ釘付けにして風の魔法で大波を作り出し、船ごと海に沈める作戦であった。

そしてティアマト人は健達とワルキューレ対で包囲殲滅する作戦であったが、これはオリュンポスの特別隊とエインヘリャルの登場により失敗したのであった。

ワルキューレ魔法特化隊の魔法攻撃により敵軍船のほとんどが海の藻屑と消え、北アトランティス軍は敗走した。


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その頃小さな部隊が海からムー本陣へ目指していた。


「フレイア様、北アトランティス軍が後退しています! ムー国が勝利したのです!」


「そうですか、よかった・・・・では皆さん急ぎましょう 一刻も早く大和様やアプスー様に主神やゼウスの企みをお伝えせねば!」


「そこの一団止まりなさい! 私はムー帝国ワルキューレ隊少将アンナです! ここからはムー帝国の領土、許可無き者は立ち入る事は許されません!」


「これはムー国の士官様ですか、私はニビルにあるアルフヘイム国に住むフレイアと申します、こちらの者たちは私を慕いついてきた者達、決して貴国に仇なす者ではございません! 先ずは加急に大和様にお伝えせねばならない用向きがございまして、まかりこしました」


「用向きを話してください、閣下にお伝えするかしないかはここで私が判断いたします、これでも私は大和閣下の妻の一人です・・・『あの耳は? それに下半身が魚・・・健様が好まれそうな・・』」


「何と運の良い事でしょう、大和様の奥方にいきなりお会いできるとは! 私達がニビルから訪れた理由はオーディーンとゼウスを止めて頂きたいからと、大和様と奥方様達に危険が迫っている事をお伝えしたかったからです!!」


「どういう事ですか!?」


「主神オーディーンとゼウスは大和様とイナンナ神の意思を告ぐムー国帝とその妹様及びイシュタル様分身を亡き者にしてパルスーを強奪し、ナンムの一族からニビルの覇権を強奪するつもりです。今はこうして戦をしかけて正面から対峙していますが、その気になればそれなりの者達を使い暗殺すら行うでしょう。

そういう事が出来る神がニビルには沢山いるのです。一刻も早くこの事をお伝えして対策を! そして私たちも共にあの者達と戦います!」


「わかりました、本陣は向こうです、ついてきてください。シエラ! 閣下に念話を」


「はい! 姉さん」


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ムー本陣


「エルフちゃーーーーーーーーーーん!」

「きゃーーーーー!」


バキ!!


「グフ!・・・・マーーーーーーーメイドちゃーーーーーーーーーーーん!」

「きゃーーーーーーーーー!」

バキ! ボコ! グキャ!

「滅びろこのくされ外道!」

「グッハー!!」


「あっ・・・あの・・・このお方がその・・・大和閣下でしょうか? アンナ様」


「そうです・・・」


「頭と鼻から血が噴出している様子ですが?・・・」

「いつもの事です、気になさらずに・・・・・」


「またやっているの? 本当に大和は馬鹿ね?」


「は! アテーナー!!」


「身構えなくて野いいわよフレイア、私こっちに着く事に決めたから! それよりも貴女こそこっちに着く気? フレイを・・実の兄を裏切る事になるのよ?」


「兄には私の考えを何度も伝えました、だけどあの人はわかってくださりませんでした。宇宙の意思を、アプスー様やティアマト様、大いなる母をの意思を裏切る事など絶対にあってはいけないのです!! 故に刺し違えてでも止めてみせます!」


「威勢がいいのはいいが、死んだら何もかもおしまいだぜ? そんな事俺の嫁が緩さねえぞ?」


「大和・・・かっこつけても鼻血だらだら垂らしながらだとしまらないわね?・・・」


「ウルセーアテーナー!」


「まあ・・・鼻血が止まってから主人殿は話すがよい、よく知らせてくれたのう? 道中危険じゃったろ、少し休んでから詳しい話を聞こう。肝心な主人殿もこの出血じゃしの…………」


「あ! 貴女様は・・・・アプスー様!」


「うむ、分身じゃがのう」


「お会いできてよかった!」


「じゃが先程主人殿が申したであろう? 刺し違えるなど許さぬ、いかに宇宙の意思を守るためと言え、おぬしが命を粗末に扱う事自体が宇宙の意思に反しておる事も又事実じゃという事を心得よ」


「は! はい…………アプスー様」


「では皆様お疲れでしょう、こちらでお休み下さい。 私はルチル、何かお困りの事が有りましたら何なりと私にお申し付け下さい」


「貴女様は…………何処かナンナ神様に…………」


「ルチルは私の妹イシュタルの分身なのよ、私は久美、イナンナお母さんの娘よ! 一応父親はそこの変態だけど…………私もルチルも妻でも有るわ」


「そうだったのですか、ではやはりニンガル様もナンナ様も」


「そうよ、それに一番驚いたのが、彼処で兵を慰問している帝と妹のナーナの顔を見て来ると良いわ」


「アテーナー、あのお方が帝なの?」


「ええ、そうよ!」


帝の側に行くフレイア


「ティ! ティアマト様‼」


「? …………ああ、貴女が先程見えられたニビルからのご使者様ですね? 私はティアマト、母桜と健様との間に出来た娘です、顔が似ているのは当然でしょう」


「そ…………そうだったのですか…………」


「フレイア! お前がまさかここまで来ているとは、驚きだぞ‼」


「パラス! 貴女パラスなの?」


「ああ、今はマルティア、このムー軍の大将軍だ‼」


『兄上…………ここには原初の神々が沢山おります…………この方達に弓を引く事を本当に正義だとお思いなのですか? 恐ろしい…………オリュンポスとヴォーダンは、母なる宇宙から見捨てられる事になるでしょう…………』


フレイアは恐怖を覚えていた、そして自らの覚悟も同時に決めていたのである。




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