第176話 久美の剣術
抜刀術と言うとどうしても頬の十字傷のあの人を思い出すでござる。
とにかく見るでござる
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本文
久美は神衣を持っていない為、一先ず海王軍の鎧を借りた、神衣と違って如何にも安っぽい何処にでも有りそうな所謂ミラープレートの様な鎧だ。
だが防御力や魔法耐性は神衣に近いらしい。
「では久美、準備は良いかな?」
「大丈夫よ!」
「じゃあ来てくれ! カライス」
「カライスか! アルゴナウタイの勇者…………」
カライスはギリシア神話に登場する有翼の英雄である。
北風の神ボレアースとアテーナイ王エレクテウスの娘オーレイテュイアの子で、クレオパトラー、キオネーとは兄弟だ。
クレオパトラーと言っても世間一般に言われている絶世の美女のクレオパトラーは、クレオパトラー7世の事であり、カライスの兄弟のクレオパトラーは一世であるから勘違いをしてはならない。
ではこのクレオパトラーはどうなのか? 充分美人であろう、この子孫がクレオパトラー7世なのだから当然だ!
「では両者良いかい? では初め‼」
久美、空中戦はするなよ⁉ そいつの母はハルピュイアだ、空中戦では絶対勝てない、何としても地上に引きずり下ろせ‼
ハルピュイアとは…………簡単に言うと皆がゲーム等でよく知るハーピーの事だ。
ゲーム等ではキモイ顔に設定されているが、クレオパトラーはハーピーの子孫である事を忘れてはならない。
詰り美人のハーピーも居ると言う事である…………
カライスが得意の空中戦に持ち込もうと飛び上がった、そして久美もそれに釣られ飛び上がる。
「間抜け‼ 釣られてんじゃねー!」
「え? あっ…………」
久美は俺の慌てように気が付いたらしい…………
「大和君? 今のは大目に見るけど戦いが始まってからの助言は無しだよ?」
「おっ……おう!」
アブねー、最初に呼んどけば良かったぜ…………
「主人様、確かカライスの母はハルピュイアでしたよね?」
「そうだ、だからあいつの翼は俺達のそれとは違うんだ。奴の羽は母譲りの鳥の羽、空中戦では勝ち目は無い」
久美は地上に降り、何とか地上戦に持ち込もうと思考を巡らせていた。
だがカライスは地上戦では久美に勝てない事を理解しているので降りては来ない。
相手の力量を見定める能力は流石と言えよう。
「残念だけど地上戦には付き合わないよ? 君は強い、恐らく地上戦では私に勝ち目は無いだろう。だから空中から攻撃させて貰う!」
カライスは上空から魔法の連打を久美にぶつける、だが久美は魔法を全て相殺していた。
カライスも無意味を悟り、今度はヒット&アウェイで攻撃を仕掛けて来た。
『確かに早くて正確な攻撃だわ、空中戦でやり合っていたらやられていたのは私の方……でもどうしよう? どうすれば良いの? 兄さん』
久美、迷うな、俺との組手を思い出せ! そんなの手こずる様な相手じゃ無いだろ! 最速の剣術を当てれば良いだけだ‼
久美が俺の方を見ている、俺はマルティアにデコピンをした…………
ビシ‼
「痛い! 何をするのですか主人様…………痛いです~……」
マルティアがむくれているがこれで気付け久美!
『デコピン⁉ あっ! そうか、そうだわ‼ 何も迷う必要は無いのね? ありがとう兄さん‼』
久美は前傾姿勢を取り剣を鞘に納めた、俺の意図を理解したらしい。
最速の剣、詰り抜刀術だ!
日本刀では無いので抜刀術としては遅くなるが、鞘走りと鞘引きは充分に行える、、詰り早い。
なぜ俺がデコピンをしたのかと言うと、抜刀術が様はデコピンの理論だからだ。
抜刀術は簡単に言うと、弱い…………
こんな事言うと居合術をやっている人に怒られそうだが事実は事実として理解しなければいけない。
だが抜刀術の優れた所はその抜刀速度である、詰り最速の剣で相手を一撃で仕止めるのが抜刀術だ、威力は日本刀は基本両手剣だ、片手で刀を振るう抜刀術は威力が無いのだ。
抜刀術の基本は抜き打ち、十文字、逆袈裟である。
予め鯉口を抜刀方向に返しておくことにより、鞘を捻る動作なしで一直線に早く刀が抜くことができ、抜刀後の振りの速度も速い。
刀の軌道が読まれやすといういリスクはあるが、早さと気迫で押し斬るようにするのが基本だ。
また鞘を引き出して、正中線に近い位置から鞘側と柄側に均等に抜刀していくことで、鞘放れの際に体を左右に開きやすくし、抜刀の勢いを高める。
鞘を引き出し、鞘と鍔を正中線上に持ってくることによって、正中線周辺を防御する。
おそらく、抜刀動作を中断して柄での防御動作に移行するのも、こちらの構えの方が有利だと思われる。
この一連の動作が全て完成してこそ最速の抜刀術が生まれるのだ。
さてここで気付いただろうか? またこんな事言うと怒られそうだが、予め鯉口を抜刀方向に返しておくことにより、鞘を捻る動作なしで一直線に早く刀が抜くことが出来る…………
鯉口とは鞘の入り口になる部分で刀を反対にしてもスコ‼ と抜けない様に入り口の部分は強く締め付けてある。
行きなり抜けて足でも切ろう物ならPL法で訴えなければ成らない。
江戸時代にはPL法はなかっただろうが、クレーマーは居ただろう…………
話が盛大に脱線したが…………よく時代劇なんかで刀を抜くとき、チャキ! とやって刀の鍔の部分を親指で押して少しだけ出すが、あれを鯉口を切ると言う。
もう解ったであろう、抜刀術は鞘走りをさせ、剣の抜く速度を早め、更に鯉口の部分をカタパルトにして刀を発射させる事で速度を早めるのだ。
デコピンは親指をカタパルトにして親指の中間から中指を滑らせ(鞘走り)、親指の先端を(鯉口)カタパルト発進位置にして中指(刀)を加速して発射させるのだ‼
詰り抜刀術はデコピンなのだ! 俺は久美やマルティアにこの様に抜刀術を説いた…………
そして最後の鞘引き、これは簡単だ、デコピンを早く加速して打ち出す為には中指だけを動かしては駄目なのだ、親指も動時に中指とは反対の引く方向に動かす必要が有るだろう、その一連の動作を全て完成させる事により、相手の額に巨大なタンコブを作成させる事が可能となる。
相手に涙迄ださせ、うずくませる為にはここまで理論全とした、法則に乗っ取ったデコピンシステムが必要不可欠なのである。
詰り刀を抜くと同時に鞘を後方に引く、これが鞘引きだ。
そして久美は正にこれからその抜刀術を繰り出す構えに成っていた。
「何だあの構えは、解らないが私の中の危機感覚が最大限の警鐘を鳴らしている、あれは危険だ、だが久美は攻撃意思を構えで見せている、私がこのまま手をこまねいて要れば、戦闘意欲無しとして私の敗北が決定してしまう…………大丈夫だ、攻撃速度は落下速度も足した私の方が早い筈、危険を感知した時点で一撃を入れ直ぐに離脱すれば良いだけだ‼」
この時点で既にカライスの敗北が決定した、抜刀術の速度は落下速度等を入れても容易に越えられる物では無い。
カライスは剣を垂直に構え体を剣から放し、刺突の様に落下してくる、最善の構えだ。
だがそんなもの通用しない、抜刀術には二の太刀攻撃が有る、相手の攻撃を抜刀で受け流し、二の太刀を入れる、威力は無いが、実は最大加速の攻撃を当てられるのでこちらの方が早い。
カライスが迫って来る、だがまだ久美は動かない
「何だ? 何故剣を抜かない! もうすぐ俺の剣はお前を貫くぞ⁉」
『まだよ、まだ私の間合いに入って無い、まだ我満するのよ』
「早く剣をぬけえ! このままではお前の敗北が確定するぞ‼」
そしてカライスの剣が久美を捉えようとした瞬間、久美の剣が抜刀され、カライスの剣の刀身を滑るように流れて行く。そしてカライスの剣は方向をずらされ久美の返し刃が二の太刀の軌道を作り出す、逆袈裟で抜かれた刃が二の太刀で袈裟斬りの軌道に変わった、電光石火で振り降ろされる久美の剣をカライスは防ぐ事が出来ずに諸に食らった
ガシ‼
「ガハ!」
「勝者久美‼」
ふ~…………全くはらはらさせやがって…………
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