第173話 アリアドネの糸

アリアドネの糸、あまりにも有名な話ですが、テーセウスの妻だって知ってました?

そうなんです、そして美しい女神何です


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本文


ポセイドーン神殿での卒業試験、マルティアの一番目の対戦者はアルゴー船の英雄イーアーソーンだった。


「我が思いに答えよ‼ パラディオン」


いっそう強く輝きを増したパラディオン、神衣は意思を持つ防具、その所有者の強さが増せば増す程その能力を上げて行く、マルティアのパラディオンはオリュンポス十二神に匹敵する程の能力を既に有していた。


「素晴らしい輝きよ、パラスの時よりもその輝きは増しておる」


「そうでしょう? ポセイドーン様、マルティアはアテーナーを倒せると僕は確信していますよ!」


「うむ、我もそう思うぞ!」


親バカである…………


「では両者中央へ、初め‼」


先に動いたのはイーアーソーンだった、マルティアの盾を持つ手を仕切りに狙っている、だがマルティアの盾はアテーナーの持つイージスと同じもの、破壊はできないのはイーアーソーンも知っているだろう。


「ブラフか…………いや、ブラフと見せかけているのか?」


「どういう事? 兄さん」


「マルティアの持つ盾はイージスだ、破壊は恐らく今の俺でも出来ない、勿論イナンナクラスでも無理だ、全力が使える朔か母ちゃん辺りじゃなきゃ無理だろう。だから一見無意味にも見えるイーアーソーンのあの攻撃だが、所謂左手を痺れさせる攻撃としては有効何だよ。人間同じところに何度も同じ打撃を喰らうとその部分が麻痺してくるんだ、そしてその状態が続くと意思とは無関係に手が動いたりして有る意味致命的なミスをおかす、だけどあれはそれ狙いと見せかけているんだろうって事さ」



「違う攻撃を狙っている?」


「恐らくな、マルティアは気づいてるか解らないけど良く見るとガードを下げていってる様に見える、マルティアの一番厄介な所は鬼の様なあのパラディオンの防御力何だよ、あれに亀の様に固まられると手も足も出ない、だからイーアーソーンは恐らく何度も同じ打撃を当てに行っていると見せかけ微妙に打撃位置をずらしていって、ガードを少しずつ下げているんだと思うぞ? 流石は歴戦の英雄って所だな」



事実イーアーソーンはそれを狙っていた、パラディオンの防御力は並みじゃない、恐らく全神衣の中でもトップクラスの防御力を誇るだろう。

そしてそれよりも厄介なのがパラディオンの盾、簡単に言えば、パラディオンとはアテーナーの彫像が着ているあの鎧の木像の事だ。

詰りアテーナーとパラスは同じ鎧を身に纏っているのだ。

故にあの像をパラス.アテーナーと呼ぶ。

だからパラスの、マルティアの持っている盾はイージスの盾なのだ。

硬い、もの凄く硬い…………だからこそ先ずマルティアを倒す為に最初にやらなければいけないのは盾をどうにかしなきゃいけないのだ。

そこでイーアーソーンは盾を破壊出来ないのであれば盾を機能させなければ良いと言う理論だ。


数回打ち合っているうちに、マルティアのガードが剣一本分だが下がっていた。

イーアーソーンに誘導されたのだ、マルティアの防具を着けていない首が露出する。


「貰った‼」


イーアーソーンの最速の剣が無防備になったマルティアの首を襲う…………だが


「解っていたぞ‼」


何と襲った筈のイーアーソーンがマルティアの前でうずくまっていた。


「そこまで‼ 勝者マルティア!」


「やったぞ!」


「な! 何をやったの⁉ マルティア! 防具の羽で良く見えなかったわ?」


「まさかあんな攻撃が来るとはイーアーソーンも面食らったろうな…………」


「健兄さん見えてたの?」


「ああ、調度こちらからは見えた、先ずマルティアは防具に着いている羽のうち、左側の羽を盾替りに使って防御したんだ、同時にマルティアは右の羽をイーアーソーンが踏み込んだ直後、目の前に展開してイーアーソーンの視覚を塞いだんだ、そしてその羽の死角部分に自分の右手を忍ばせてイーアーソーンの鳩尾に拳打を打ち込んだんだ」


「考えたわねー!」


「第二試合を始めるよ~! いいかな? マルティア」


「大丈夫です!」


そして出てきたのは、イシユタルに負けず劣らずの絶世の美女であった。


「ぬわにーーーー⁉ 誰だあれはゴフゥーーー!」


久美にアゴパンチを食らった、特訓後のパンチは致命傷を食らう程の威力だった…………


「あぶねーじゃねーか! 普通死ぬぞ‼」


「五月蠅い! 妻を二人も目の前に置いておいて、露骨に他の女に目移りするな‼」


「そうだ! 主人様‼」


「ウフフ、相変わらずね、パラス」


「お前、アリアドネか!」


「そうよ! 覚えていてくれてうれしいわ」


「あれが噂のアリアドネか! テーセウス!テメーこんな美女を妻にしたのゲローーーー!」


今度はマルティアの嫉妬魔法が飛んできた


「死ぬ! 死ぬぞ普通‼」


「主人様! パラスの記憶が戻った私は遠慮しませんよ‼」


「くそう、前のマルティアの方が可愛かった…………」


だが何やらアリアドネとテーセウスが真赤になっている…………


「ん? どうした二人とも?」


「兄さん! 多分まだ二人は結ばれてないのよ‼」


「う! そ、そうなのか?」


「大和君、君未来人て事を少し考えて言動しようね?」


「何だテーセウス、お前アリアドネが好きだったのか?」


「ポ、ポセイドーン様…………」


「ポセイドーン様、父は本心からオリュンポスを裏切ってはいませんでした、確かに今回の父がしでかした事は許されざる行い、ですが…………だからこそ私はマルティアの稽古に…………」


「ポセイドーン、それは俺が保証しよう、確かにアリアドネの父は冥界の三審判であるミーノースだ、だが俺の知る歴史ではその後ミーノースはクレタ島の王になって長らく安定した王国を築いている、そしてテーセウスが英雄と成るとある怪物を倒す手助けをこのアリアドネがしているんだ、まあそれでテーセウスはアリアドネを妻にするんだけどな…………」


「うむ、大和がそう言うならそうなのであろう、良い! ミーノースの事も我は気にしておらん! そして今回この海王神殿までマルティアの稽古に参加してくれた事、ご苦労であったな、ワハハハ、しかし未来人にお前たちの関係をばらされるとはな、傑作だ‼ 二人とも結婚して強い子を成すがいい」


「は!」

「ありがとうございます、ポセイドーン様!」


「結果オーライか…………」


「ではアリアドネ、これは試験だ、マルティアへ手加減は無用だよ?」


「ああ! 手加減何てしてくれるなよ? アリアドネ」


「解っております、テーセウス様、本気で行くわよ? パラス! じゃなくて今はマルティアね」


「テーセウス! 一つだけマルティアの助言してもいいか?」


「構わないよ! これは本番さながらの戦闘訓練だ、そう言う場面も有るだろうからね!」


「解った、マルティア、ちょっとこっちへ来い!」


「何でしょう? 主人様」


俺は一応小声で話した

「いいか? マルティア、糸と言う物は時としてとてつも無い武器に成る、アリアドネは今は剣を持っているが、恐らくはアリアドネの

武器は糸だ、そしてその糸を手足の様に使う」


「糸?」


「あ! アリアドネの糸‼」


「知っているのか? 久美」


「ええ、難問解決の糸口を手繰り寄せる時に使う言葉でアリアドネの糸を手繰り寄せるって使うの」


「詰りことわざに成るほど主人様の時代ではアリアドネの使う糸が有名と言う事ですね?」


「そうだ! 糸に気をつけろよ?」


「解りました‼」


糸、恐らくアリアドネの糸は相当強力だろう、アロンダイトならともかくも試験要に使うこの刃が落とされた剣では切るのは不可能だ。

マルティア、どう戦う?


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その頃ムーでは陛下、ナーナ、ブローマ、シャチー、カーリーが朔の行う地獄の訓練を繰り返し、ルチルがイシュタルに魔法の訓練をされていた。


「甘えては成りません! 貴女はもう只のジャーリアでは無いのよ? ルチル、楓が集めてくれた魂で貴女は既に私の完全な分身体に成っているの‼ 魔法はもう使える筈です! 今の貴女が魔法を使えないのは自分で自分自身を貶めているからに過ぎないの、魔力はもう貴女に膨大に蓄積されている、有り余る程の魔力の渦が貴女の廻りに張り巡らされている、良いですか? 私に戦闘は不向き、それはその分身である貴女も同じこと、でも十二神以上に膨大な魔力が私には備わっているの、何故だか解る?」


「わ、解りません、はあ、はあ、はあ、はあ」


「お父様の神衣よ! お父様の神衣はエアから与えられた物、それをこの世で唯一無二、纏うことが許された存在、其がお父様なの、その膨大な魔力が必要なお父様の神衣に制限なしに魔力を供給出来る存在が私と貴女なのよ? だから私と貴女がお父様の神衣には絶対に必要なの、私が剣に成れば貴女が魔力供給を、貴女が剣に成れば私が魔力供給を、私と貴女は表裏一体なの、魔力供給が出来なければお父様は敵に殺されるのよ? 貴女はそれで良いの?」


「嫌です! 健様が死ぬのなんて、私は健様を失いたくはない!」


「なら、しっかりしなさい‼」


「はい!」


イシュタルのスパルタがルチルに襲いかかっていた。

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