第130話 完全なる目的
ポセイドン神殿内
「先ずは健大和の事、礼を言っておこう、我が一族と孫娘が助かった」
「私はその事には関わってはいないわ? 気にしないで?」
「未だ完全覚醒には至っていないと言うのにオリュンポス族やナンムの一族と事を構えようとは、馬鹿なのか、度胸なのか…………だがアグディスティスよ、このままでは奴は死ぬぞ?」
「そうよね~、言ってきく子じゃないし…………私もどう説得しようかと…………」
「私に10年ほど預けてみないか? 勿論南北アトランティスの戦が終わってからだがな、恐らく大和達がオリュンポス族と全面的に戦う事になるのは今から230年後、ニビルが接近する時だ、現在ここ地球にはオリュンポスは私とハデス、ディオニューソスとヘスティアー、それと付の者。全て合わせても30人足らずしかいない、一度でもディオニューソスが大和に敗れているこの状態では大和と戦うのはハデスが反対するだろう、それまでに最低でも魔法は使えるようにしておく必要がある」
「どういう風の吹きまわしかしら?」
「大和と同じだ、我は孫娘の悲しむ顔は見たくない、大和が死ねばマルティアは後追いすらしかねん」
「じゃあ私も一緒に…………」
「ならぬ‼ お前が一緒では甘やかすであろう‼」
「そんな! 可愛い健ちゃんをスパルタ何て!」
「息子が死んでも良いなら好きにするがよい」
「嫌よ!」
「ならお前は大人しく息子の帰りを待つがよい!」
「そんな! 折角可愛い健ちゃんと逢えたのに!」
「なら息子が死ぬのを見守るしか出来ないな」
「そんなの嫌よ‼」
「どっちなんだ‼」
「う…………仕方ないわ…………鍛えて頂戴……」
二人と男一人、もう一人の美しい女が神殿から出てきた。その女はマルティアを見て涙を流していた。
「マルティア、健大和、アトランティスの内戦が終了しだい、お前達は我が神殿にて10年修行をする事に決まった」
「んな! どういう事だ?」
「口で説明するより実際に模擬戦闘を行った方が解りやすいであろう、その前にこの者は私の妻の一人で、トリトーンの母、アムピトリーテー、
マルティア、お前の祖母だ」
「おばあ様⁉」
「パラス‼ 此方へ来て下さい、お顔をよく見せて‼」
抱き合う二人、暫くそうさせた後にポセイドーンが
「もういいな? アムピトリーテー、それでは先ずこのアイオロスとお前達二人で模擬戦闘をして貰う、このアイオロスはトリトーンとは異母兄弟、マルティアの叔父にあたる、二人一辺に掛からなければ恐らくはアイオロスにかすり傷一つつけられないだろう」
「言ってくれるじゃねーか、ポセイドーン、あんたならいざ知らず、いくらなんでもかすり傷とか位ならやれねーことはねーぞ! マルティア、手を出すなよ!」
「やめておいた方がいい、お前一人の力では私には立ち射ち出来ないのは見れば解る、マルティアの鎧で私の攻撃の防御、お前が攻撃担当、其が一番理想的だ」
「いや、マルティアには手は出させない、俺一人で…………」
「マルティアの怪我の心配をしているなら余計な心配だな、私にとっても可愛い姪、攻撃等しないから心配するな!」
「何を馬鹿にして! 私だって騎士の端くれだ! 手加減など無用!」
「いや、マジで止めとけマルティア! こいつはマジでレベルが違うから……」
「主人様迄私を馬鹿にするのですか! 私は絶対攻撃するぞぉぉぉぉ!」
「いや、マジそうじゃなくて…………」
「嫌です! 聞けません!」
俺は何とかしてくれと言う表情でポセイドーンを見るが…………
ポセイドーンは目を反らした……逃げやがった
「諦めろ大和とやら、昔からパラスは単純で言い出したら効かない娘だ…………」
「アイオロス叔父上! 私は単純ではありません‼」
「そ、そうか、すまん…………」
「仕方ね…………とりあえずアイオロスの言う通りマルティア、攻撃を鎧で防御してくれ」
「解りました! パラディオン、私の想いに答えてくれ」
パラディオンは大きな光を出した、そしてマルティアの体に次々と鎧がつけられていく、だがそのパラディオンは以前見た物とは大きく異なっていた。
神衣とでも言えば良いのか、パラディオンは以前のシルバーパールの様な色ではなく、黄金に輝いていた。
オリハルコン、その輝きは目が眩む程の眩しさだ。
「す、凄い、お祖父様、ありがとうございます。力が後からどんどん沸いてきます‼」
「お前の力が上がればもっと大きく成るであろう、さあ、マルティアよ、愛する者と共に戦うと言ったお前の覚悟、見せてくれ」
「はい! では健様‼」
「おう!」
一先ず俺は今持っている自らの力を全開にした、一部覚醒迄は至っている、大きな片翼の翼が生えて来る、黒い大きな翼が
「まあ健ちゃん、そこまで力を取り戻していたのね!」
「おらいくぞーーー!」
草薙の剣を振りかぶり凪ぎ払う、剣檄が飛びアイオロスを襲うが片手で弾かれた。
あの剣檄を弾くのかよ…………
「ではこちらからも行くぞ‼」
アイオロスは剣を抜いて飛び上がる
ギャイン‼
マルティアが左手の甲に付いている盾でアイオロスの剣を受けた、だが余りの強さにマルティアは体ごと飛ばされた。
「大丈夫か⁉ マルティア」
「はい! 痛くも痒くも有りません! この盾凄いです」
俺は剣を再度振りかぶり剣檄を飛ばす
「このような単調な攻撃ではいくらやっても意味は…………何?」
俺は剣檄に追い付き更に剣を重ねて打った
「良い攻撃だ、人間相手ならこれだけで十分に致命傷だろう、だが!」
ギョワン‼
弾かれた、それでも俺は止まらない、更に二度三度と剣檄を入れる、背後からマルティアがアロンダイトを振るうが、アイオロスが消えた、と思ったら俺の背後に現れた、即座に切り返すが、更にアイオロスは消え、俺の真下に現れ剣を放つ、マルティアが止めたがやはり飛ばされた。
「つええ…………」
「もうおしまいか?」
「んな訳有るか‼」
俺はメッタギリ要領で剣を振るう、だが全て防がれる
ギャイン、ギャイン、ギャイン‼
「こんな剣檄の数に任せた攻撃が私に通用する筈が……何?」
ガン!
「ちっ! これも駄目かよ」
「いや、良い攻撃だった、だが今のが入らなかったのは痛かったな、もう通用しない」
俺は剣檄の隙にあわせて蹴りを入れたのだがアイオロスの恐らくは戦いの感だろう、肘で迎撃をした、この時代に空手等あるはずはない、だが最高の、100点満点の返し技だ。
恐らく普通に人間が見ればこのやり合いはまともに見る事が出来ないだろう、そんな高速戦闘のやり取りがもうかれこれ30分は行われていた、俺はもうアイオロスの剣檄を食らいまくり、ボロボロ、マルティアは全て攻撃が弾かれ防御で何度も吹っ飛びへとへとだった。
対するアイオロスは褪せ一つかいていない……
「そこまで‼」
「解ったか? 健大和、マルティア、今の自分達の実力が」
「くそう! 悔しいが解ったぜ…………」
「はい…………お祖父様」
「アトランティスの内戦が終わり次第この神殿に来るがよい、アトランティスの内戦では恐らくティアマト人は出て来ない、お前達が使う有意の奥山、あれは厄介だ。お前達は知らないだろうが、あれはエアの力を呼び覚ます力、お前の娘イシュタルは我らティアマト人のパルスーを媒介して具現化出来る能力を有している。そのイシュタルの完全な分身がそこの娘、ルチルだ」
「パルスー? 何だそりゃ?」
「そんな力がイシュタルちゃんにはあったのね⁉
健ちゃん、パルスーわね? ティアマト人の基本的な社会的慣行・宗教的習慣・技術・行動規範・文明を形成する人間の条件などに関する基本的な事項が記されている聖典なのよ? それを具現化出来るって事はティアマト人の頂点、アヌとも同等の存在になると言う事、ベールが喉から手が出るほど欲しがっている物なのよ …………成る程…………読めたわ、エアがニンガルにパルスーを全て渡してしまったからベールはそれを欲して地球人を隷属させようとしているのね⁉」
「その通りだキュベレイ、奴はパルスーの持ち主である正当性を欲している、その為には大和、お前が非常に邪魔なのだ、我はお前がこの時代に三度転位してきた事でお前の目的が解った。元々我はお前を鍛えてパルスーを守る事を決意していたのだ」
「よく話が見えないんだけどさ? パルスーってのは一体何の事で、何故俺が邪魔なんだ?」
「健大和、お前にはモーセの十戒と言えば解るであろう、そしてそのモーセの十戒が姿を変えた物が現在の帝が使う十種の神宝であり、その使用権が現在のお前と帝、及び親王ナーナ、イシュタル、そしてその分身であるルチル、お前達が持っているのだ。三種神器はモーセの十戒の力を使用するための鍵、あれは単なる死者蘇生の道具ではない! 死者蘇生はあれの力の一端にしか過ぎないのだ」
「な!………………」
全て理解した、そう言うからくりか、俺をこの時代で殺せば未来での使用権を保有した者は居なくなる、そして俺が死ねば陛下達は未来に転生してこない、だからこそ奴等は現代で神器も十種の神宝も全て表に出さずに封印しているんだ‼
クソッタレ‼
「理解した様だな? 健大和、お前は強く成らねば成らぬ、間違ってもこの世界で死ぬような事になっては成らんのだ! 未来の世界で神器を使用出来るか出来ないかはお前に掛かっているのだ、仁義なくばベールには勝てん、そして転生したイナンナが居なければ未来で仁義にまでたどり着けぬであろう、あれはお前達の世界で…………あそこに封印されている」
そう言って真下を指差すポセイドン
「伊勢神宮に安置されているのはやはり偽物か‼」
「そうだ、あれはお前の国が戦争に負けた時に既に奴等の手に落ちている、そして人間の手の届かない場所に封印された」
「だからこその岩戸開きか…………」
全てが繋がった、イナンナめ、段階を経て俺に教えていこうとしてた様だが…………
300発の3セットだ!
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