第103話 アスラ48

48人では有りません、もっと居ます…………


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本文


雪上の戦闘は基本的には寒さとの戦いと言っても過言では無い。

防寒が不十分で凍傷にかかる者、レーション、凍りつく水、全てが敗北に繋がる。

オーストラリアと言うと南国で温かいと言うイメージを日本人は皆持っているが、妄想だ。

日本の北半球が冬真っ最中の時に、南半球は真夏だからそう言うイメージが付いただけ、実際シドニーの真冬は東京よりも平均気温は5度も低い、寒いのだ。

ましてやこの時代のオーストラリアは現在よりも南にある、南極に近い位置に有るため極寒と言えよう。


そこでこんな言い争いが起きていた


「パンツよ!」


「スカートだ!」


「パンツに決まってるでしょ!」


「スカートに決まってる‼」


「スカートだとインナー沢山履けないじゃない!」


「タイツを重ねて履けば充分だ‼ヒートテック生地にすれば問題ない!」



「パンツの方がもっと暖かいのよ‼」


「どうですか?」


「決まりそうも有りませんね帝……兄さんと久美はいつもあんな感じ何ですか?」



「毎度の事です、最終的に私が間に入って納めます」



「変わりませんね……」



「向こうでも同じですか?」


「そうですね、私か姉がよく間に入っていました」



「ですがそろそろ入った方が良さそうですね!」


「そうしましょう……」


「スカートーーーーーーー!」


「五月蠅い!パンツよ!」


「ではこうしましょう!実際に隊員達に両方履いて貰い、レムリアの寒い場所でどちらが有効かを決めて貰います、それで良いですね?」



「仕方ねー」


「それが良いわね……」



そして俺はヒートテックタイツの開発に取りかかった。

久美はヒートテックの重要な部分の一つ、吸湿発熱の仕組みを知らない。

あいつは恐らく一番言われている空気の膜、保温作用の部分しか知らない筈だ、ククク俺の勝利は揺るがないぜ!

しかもパンツの欠点は裾に水分がまとわりついて凍る、阻害要因が多すぎる、ブーツに入れれば動きが悪くなる、だがタイツならばパンストと同じで動きを阻害される事はまず無い!

そして吸湿発熱にはレーヨンを使う、レーヨンは水分で縮む特性がある。

一番多くレーヨンを股間の位置にふんだんに使用すれば、洗濯を一度してしまえば激しく食い込む、これをフロントI部とリヤI部に仕込めば食い込みタイツの出来上がりだ!


そして俺はワルキューレ隊御用達の呉服屋に出向いた。



「成る程……閣下、これは素晴らしい素材です」



「寒い時期には役に立つ、今回は負けられないぞ?久美は川向こうの呉服屋に発注している、冬場の隊服の発注が掛かっている、負けるなよ⁉」


「勿論です閣下、実は先日閣下からお話を伺った時にこんな構想が浮かびまして……」



「凄いじゃないか!これなら隊員のスカートをより短く出来る!よし、早速取り掛かってくれ!」



そして勝負の日


レムリア、雪上訓練所


今回はレムリア国王や重鎮達など軍服に採用するため、隊服の見学に大勢参加しての採用試験であった。


「では格10名づつの隊員が、二種類の隊服を交互に着て戦闘訓練を致します。勿論勝敗も審査対象と成りますので隊員は本番さながらに訓練をお願い致します。基本的には隊員の意見を採用致しますが、意見が割れた場合に備え、審査員を儲けて有ります。審査員にはムー皇国より帝、朔上皇、ナーナ親王。

レムリア王国からは国王、コトポニア王妃、レミーナ王姫レムリア軍参謀ゴスペル様の7名の皆様にお願い致します」



「しかし軍服一つにまでこれ程の試験を重ねるとは、ムー皇国の強さの秘密が解りますな!」



「え?え~…………勿論軍服の出来一つでも隊員の生き死に関わる問題ですから…………」


陛下は思った…………

健様の助平さから来た試験等とは言える訳が有りません……


「では戦闘訓練、、初め!」


そしてワルキューレ隊隊員同士の模擬戦闘が開始された、一進一退の戦闘、流石にワルキューレ隊だ、双方にルチーナタイプのジャーリアが居るので空中線とも呼べる様な戦闘だった。特務隊がルチーナタイプを襲い、双方敵の攻撃力を下げる作戦に出ている、やはり厄介な神道魔法を黙らせたいのだろう。

だが近衛隊員が双方ともルチーナタイプに相手を一切寄せ付けない、近衛隊員の防御力は並みじゃない、いくら特務隊が優秀でも近衛の防御は突発出来ない。



「凄まじい戦闘よ!これが恐れられているムーのワルキューレ隊の実力か…………悔やまれる、ヴァルキュリア伝説を信じてジャーリアを早々に保護していれば…………」



「レムリア王よ、それは我が国でも同じこと……たまたま我が主人殿がムーに現れてくれたからこそレムリアより早くジャーリアの保護が出来たのじゃ、妾も何れだけ悔しい思いをしたか……」


そして少しずつ大勢が崩れて来た、パンツ組が押されて来たのだ


「嘘?何で?」



俺はここぞとばかりにズボンの欠点を並び立てた!



「解ったか久美!ズボンの欠点はここにある!ズボンは最初こそ暖かくていいが、人間は必ず動けば汗をかく、これだけ寒くてもあれほどの高速戦闘をしているワルキューレ隊は既にかなりの発汗がある筈だ!その時、その発汗した水分は何処に行くか⁉

俺のタイツは一枚のタイツを通して外に水分が逃げる、だが重ね着をしているズボンはその水分が吸湿されて上履きに吸いとられる事になる!そうなるとどうなるか、、服が湿ってこの寒さで凍りついてしまう、自然と服が重くなり、防寒着が戦闘の阻害要因と成るのだ‼解ったかーーーー!」



「う!…………まだよ!まだ解らないわ!」



だが大勢は決した、服が湿り重たくなったワルキューレ隊員は動きを阻害され、僅かな隙をタイツ組に突かれる事になり敗北した。

ルチーナタイプの神道魔法が絶たれれば勝敗は意図も容易く決してしまう。

昼食後今度は服を入れ換えての戦闘を行ったが結果は同じくタイツ組に軍配が上がった。



「では結果発表です、戦闘勝利によりタイツに2点

入りました。続いて隊員投票の結果を点数に加えます」



フッ……勝ったな……


「パンツ、11点、タイツ、11点、同点となり、審査員判断と持ち越しました」



「何ーーーーーーー!どういう事だアンナ!何故そうなる‼」



「何故と言われても投票の結果ですから……」



どういう事だ!隊員達は歴戦の有志、阻害要因の多いズボンを選ぶ訳は……は!



そこで俺は気付いてしまった、何人かの隊員が股間を手で押さえて隠して入るのを……

発汗と雪により濡れたタイツが、レーヨンの縮み作用に寄って激しく食い込んでしまっていた。

タイツはそれにより、大事な部分をくっきりと浮かび上がらせていたのだ。

今回の模擬戦闘は新人隊員も積極的に参加させていたため実用性よりも恥ずかしさを優先させた隊員が居たのだろう、痛恨のミスだ!

レーヨンはいざ生産させる時に組み込めば良かったのだ。


「なんかやっぱり隊員達はズボンの方が良いみたいね?兄さん」


「まだ審査は付いていない!」


だが望み薄だ……


「では審査員の皆様は前にある札を掲げて下さい、青がタイツ、赤がパンツと成ります、どうぞ!」



「帝赤、朔上皇青、ナーナ親王赤、コトポニア王妃赤、王姫殿下青、参謀青、国王が最後です、お願い致します」



だが国王は切れぎみの顔でタイツを睨んでいた。

難しいだろう、あの顔はタイツの股間を怒っている感じだ……

朔が青を上げたのが以外だったが、見てくれより実用性を取ったのだろう、流石というべきか……



「ヴァストゥール国王?いかがですか?」



「おおっとこれはすまん、これだ‼」


何と国王が上げたのは青だった


「えーーーーー?」


そりゃ不思議だろう、あの顔でタイツの股間を凝視していたのだ



「素晴らしい出来だ‼特にあの食い込みは何とも言えん!」


ズザザーーーーー!


全員一斉にこけた……

国王は切れぎみに股間の食い込みをガン見していたのだ……


「おう!国王よ、あの素晴らしさがやはりあんたには解るのか‼」



「勿論だ太政大臣よ!あの女性の神秘の食い込み、良さの解らぬ者ほど愚かと言う者よ‼」



ガシッ!


俺と国王はお互いの肩をしっかりと抱き合った、ここに俺とレムリア国王の熱き友情が芽生えた!


「コトポニアよ!レミーナ王姫と共に我がレムリアにもワルキューレ隊の創設を急げ!お前が総帥と成るのだ!手伝ってくれるな?兄弟!」



「当たり前だぜ!兄弟!」



「その時こそレムリアワルキューレ隊の隊服を共に造ろうぞ!」



「任せておけ!兄弟!」



ーーーーーーーーーーー


数日後


レムリアでは急ピッチで様々な事が進んでいた。

国内の建て直しにはムーからミーシャ、セナが派遣され、財政再建が行われた。

寒冷地用の隊服をレムリアで生産、それをムーで買い取る事から始まり、ムーとレムリアでの様々な貿易を盛んに行う様に成った。

そしてコトポニアを筆頭に、アスラ族の勧誘が始まった。レムリアのワルキューレ隊は主にアスラの女性達で組織される事に成った。

アスラ族はシャチーでも解る様に、特種技能を持っている者が多い、そして宝貝に対しての適応力も非常に優秀な者が多いのだ。

このアスラ族の勧誘には、族長であるブローマやシャチーも積極的に参加させた。

本来俺がラ.ムー軍かワルキューレ隊への参加を呼び掛けていたのだが、裏切られたとは言え生まれ故郷であるレムリアに対して弓を引くことは出来ないと言う理由でワルキューレ隊への参加者は少数だった。

だが職に着かなければ生活出来ない。

そこで俺がアスラ族の者達を何とかミーシャが管理する農業ギルドへ入れ込み細々と生活させていたが、今回レムリアとの同盟でアスラ族に対に日の目が上がったのだ。

シオンのアスラの戦士達は男はレムリア軍へ、女はワルキューレ隊へ参加していった。

そして……


「ブローマ。お前はどうする?レムリア軍に戻りたければ構わねーぞ?」



「何言ってんだ兄貴!俺は兄貴に惚れて一緒に行動してんだぜ?今更レムリアに戻る気なんざ更々ねーよ、シャチーもこっちだし、妻達もムーの生活は気に入ってるみたいだしよ」


「そうか、ならお前は今まで通り俺の側近で良いだろう、まあお前もシオンで5人も妻に迎えたからな、嫁さん達もムーの方が何かと良いだろう」


そして俺とヴァストゥール国王、コトポニア王妃、レミーナ王姫、ゴスペル参謀長官、レムリア軍総司令アルトレア、朔耶の7人は、レムリアワルキューレ隊の隊服選びに取り掛かっていた。

又オブザーバー的に、朔とナーナが呼ばれていた。

司会進行はレムリア第二王姫エヴァーナ王姫が勤める。


「ではレムリアワルキューレ隊隊服審議会を開催致します。又レムリアワルキューレ隊の呼称を大和ムー皇国大臣より呼び名が長いのでASR48と名付けてはどうかとのご意見がございましたのでそちらも審議したいと思います。

では審議開催に先立ち国王陛下よりご挨拶願います」



「うむ、兄弟には本当に世話になった、このレムリアにもムー皇国ワルキューレ隊に匹敵する程の強い軍団が出来た事は一重にムー皇国の支援有ってこそだ、我々レムリアの民はこの恩義を忘れては成らない。又ムー皇国にてアスラ族を保護して貰っていた事により、この軍団の設立が成った事も言うまでも無いだろう。今日は隊服を決定するに当たり、対アトランティスの切札となる部隊になる隊服だ!相応しい物を選ぼうではないか!」



「では先ず呼称から入ろうと思います。先ず大和大臣より名前の由来からご説明願います」


「ウォホン!では説明しよう、まずASRだがアスラの略式の呼名となる、俺達の世界で英語と言う言葉と文字が有るが、その文字の頭文字を取るとASRとなる。そして48はフォーティーエイトと読むが、それはかわいこちゃんの軍団と言う意味で取って貰えば良いだろう」


「はー…………」


朔耶が大きなため息を吐くが……


「素晴らしい!決定じゃ!」



「国王、まだ決まっていません!」



「うん?そうか……」

娘に眼を飛ばされる国王、どうやらやはり俺と同類らしい……



「エヴァーナ王姫、よろしいか?」


「ゴスペル参謀、どうぞ」



「良き名前だと思うが、きく者が意味が解らない、私は賛成しかねる……」


「何を抜かすゴスペル!」

「何抜かしやがる」


言葉がハモる



「国王、大臣、発言は恐れながら挙手を願います」


「ん?うむ……」

「そうか……」


「では国王陛下、ご意見を願います」



「うむ、かわいこちゃんの軍団と言うのがすこぶる良い名じゃ!レムリアの看板娘として名前を売り出せば、国民の癒しとも馴れる。これ程の激戦を繰り広げて来たのじゃ、それぐらいの事は国民に対してせねばならぬ」



「良いこと言うじゃねーか!兄弟」


「そうじゃろう!兄弟」


「大臣…………」


「んあ?お、おう……」


話し合いの末、国王の国民へのサービスというこの意見が通り、呼称はASR48と決まった。


そして対に本日のメインイベントの隊服選びとなる。


俺は予め国王にいくつかの隊服案を提示しておいた。その中から国王がどれを選んだかは解らないが、全ての案で国王のキャノンはパンパンに成っていたので恐らくは…………


「では隊服に関して予めお話ししておきます。お選び頂く隊服は3つ、通常任務の隊服、戦闘時の隊服、訓練着の3つと成ります。隊服案は国王とコトポニア王妃のお二人から頂いております。予め隊員に着ておいて貰っていますのでご確認下さい。では通常任務の隊服です。先ず国王の案から、お入りなさい」


アスラの少女が入って来た、やはりそうか、国王はあれを選んだか……

俺が出した案で国王が選んだのは、ピンク色のチェック柄事務服超絶ミニスカヴァージョン激薄カップスケスケヴァージョンマークワンだった。

気もちコトポニアがプルプル震えているように見えるが…………気のせいだろう…………


「ではご意見を聞いて参ります、コトポニア王妃」



「脚下です、破廉恥極まります‼」


「どこがじゃ!」


「お黙りなさい‼」


「んぐ!す済まぬ」


んな!こいつ……尻に敷かれてるのか!

確かにコトポニアの方が強そうに見えるがそうだったのか!


「では大臣、お願い致します」


「そうだな、確かにコトポニアの言う通り破廉恥に見えるかもしれない、だがムー皇国のワルキューレ隊の隊服を見て貰えば良いだろう、今やムー皇国ではワルキューレ隊の存在を知らない物は皆無だ!それは何故か、俺がワルキューレ隊を創設した時に先ずやった事がワルキューレ隊の存在を恐怖と共に敵に植え付ける事、最初は誰も知らなかった、だが今彼女達はムーでこう呼ばれている。ミニスカの羅刹、ミニスカの魔女、逮捕の女神、詰り彼女達が着る服はその存在を知らしめる物でなければ成らない‼破廉恥上等!そのぐらいの物こそが彼女達の存在を恐怖と共にアトランティスに植え付けるのだ!」



カーーー‼

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