第96話 マナの結晶
アッシリア近郊の郊外
俺達はイナンナに地上へ送って貰い、妻達は宿に戻し俺はイナンナと二人きりで話をする事にした。浩二の母の事があるからだ。
「この辺りでいいね?」
「ああ、余り人目に付くとお前のその格好は不味いからな」
「ああそうそう、重要な事をいい忘れてたよ、僕ももう歳だね……物忘れが多く成ってきたよ」
「死なねー奴がギャグ飛ばしてんじゃねーよ!」
「覚えてる訳が無いから説明しておくよ!以前健に渡したマリの結晶ね、浮き舟の動力源の他にもうひとつ使い道が有るんだ」
「モスコビウムか?」
「前回と同じ間違いをしていたね健、あれはモスコビウムでは無いよ!」
「違うのか?でも浮き舟、UFOの動力源は……」
「そうだね、勿論モスコビウムでもあれは動く、でもモスコビウムと言うのは完全な物では無いんだ、だから人々に観測出来ない。健?君は物質がどうやってこの世界に現出するか解っているだろ?観測出来ない理由は?」
「そうか!人の認識出来る物では無いと人が勝手に思い込んでいる……未知の物質だからか!」
「そう言う事だよ、物質世界では人が強くその物を認識する事によりその物が強く、大きく現出される、精神世界にその物が造られて初めて物質は物質世界に投影されるんだ。
マナを生み出しているマリの結晶、マナの元となる結晶なんだよ!マナはマリから生み出される、マリは全ての物を形作る物、モスコビウムだってマリから生まれるんだよ!」
「つまり人が認識出来る完全なモスコビウムって事か!」
「正解だ!そしてそのマリは僕たちの一族、僕達が本来この持つ羽、これを生み出している元にも成っている。」
「陛下やルチーナ、それこそ皇族達は何かをすればお前の様に羽が生えるって事か?」
「そうだよ、これは今僕がやって見せた転移をするための力になる。僕やナンナの子であるからこそ転移が出来る。つまり健、君がティアマト人である証拠だね」
「俺にも羽が?」
「君に生やすのは無理だろうね……」
「いらねー!男に天使の羽はキモイ……」
「うん……そう思っていれば君には絶対生えないから大丈夫」
「だがちょっと待て、浩二は?浩二もティアマト人なのか?」
「彼の母がね、ニンフルサグの転生体なんだよ、久美を送る事が出来たのも彼女の力があったからだね‼」
「だから浩二は大丈夫だと……解ってて俺を担いでやがったのか」
「全ての人々の母だよ?彼女は、、そこに気付かない君のミスだね、彼女が人々に害を及ぼす事を黙って見ている訳が無い。戻れば彼女は君の力に成ってくれる筈だよ」
「そうだったな……まあいいか、通りで不自然に若いし、俺を自分の息子の様に扱う訳だ」
「君に伝言を預かっていたんだよ、怒っちゃいや~よ!だそうだ」
「怒るは!じゃぁ……ちょっとアトランティスぶっ壊してくるは、先ずはレムリアの内乱からか」
「アトランティスに行くにはあそこを何とかしないとね……
健、、、愛しているよ、どんな事が有っても体を失ってはいけないよ?君が君でなくなるのは僕には堪えられない、魂は呼び戻せる、だけど身体は一度失えば戻らない……いいね?」
「ああ、お前を悲しませるような事はしねーよ!行ってくるわ」
「次に会うときは僕の本当の姿で逢えるといいな?」
「絶体にそうするぜ、早いとこお前の本当のおっぱい揉みてーしな!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レムリア、朔耶の戦闘
「駄目、兄さん‼」
キン!
「なんだお前は!……ジャーリア?何でジャーリアごときが僕の大鎌を止められる⁉」
「朔耶様!ココノ様より貴女に渡すよう頼まれた物です。お受取り下さい」
「剣?でもこれ、直刀、片刃……太刀‼」
「私はよく解りませんが、朔耶様なら名前を言えば解るだろうと健様が、その剣の名は丙子椒林剣」
「嘘⁉これが!……」
聖徳太子が使っていたと言われる名刀、丙子椒林剣は贈刀としての色合いが強いが、七星剣と並ぶ実は実用刀であり、刀としても一級品であった。
「ありがとう!これなら」
「そんな剣でこの大鎌は!」
ガキン!
大鎌を弾き返した、そして
「嘘だろ⁉」
大鎌の歯がかけている
「この太刀を甘く見ないほうがいいわよ?この太刀は剣最強を誇る日本刀を生み出した全ての刀のルーツなの、日本の国宝にも認定されている古代刀、北斗七星を象った七星剣と並ぶ最強の太刀よ!」
「ジャップが!これならどう?アスカロン!」
ガキン!ギャギャン
剣で弾き返し、逆に切りつけた、アスカロンの刃がみるみるボロボロと刃こぼれしていく
「嘘⁉ドラゴンを倒した剣よ?」
「残念ね!ドラゴンは切れてもこの剣には効かないわ、銅ががら空きよ!」
ザシュ‼
対に神代鎧を貫き、エルザの腹部に剣が突き刺さる
「アァァァァ!痛い!痛いーーーー!」
「エルザ!一端引くぞ!ワープ」
「逃がすか!」
「深追いは無用です朔耶様、次期に総帥が此方にお越しになられます!」
「健兄さんが?向こうの用事は済んだの?」
「他の隊員が念話で明日には此方に見えられると」
「そう……良かった……ありがとう……
この剣本当に助かったわ」
「いえ、ココノ様にお預かりしてきただけですから」
「持ってきてくれたのは貴女よ?名前を教えてくれる?」
「フィリアです」
「そう、ありがとう、フィリア」
ーーーーーーーーーーーー
そしてアッシリア
俺は宿に戻った
「おかえりなさい、イナンナ様は戻られたのですか?」
「ああ、だがなるべく事を急がないとな、流石に月までは行けないだろうが、彼女の本体が眠るあそこを攻撃されるのは不味い」
「だから月の事を必至に隠してたのね、全くあの国のお偉いさん達は……」
「アメリカだけじゃないさ、恐らくは日本の中枢まで奴らの支配下にある」
「でも何故私達の時代では月に行っているのに手を出さないのかしら?」
「出さないんじゃ無くて出せないんだろう、アポロ20号のあのタワーは恐らくダミーだ、俺達が今行ったタワーは別の場所に有る、見つけられないんだろうな」
「念話です!レムリアから、反乱軍を鎮圧、バスチアヌを攻略しました」
「ナーナ、バスチアヌのピラミッドの状態を確認させてくれ、あそこにも巨大な物が三っつ程並んでる筈だ!」
「解りました、調査させます」
「アンナ、ルル達に直接ここに来るように伝えてくれ、時間が惜しい、朔達を拾ってそのままここに」
「解りました!」
「陛下、悪いが朔に補強工事の進捗情況を確認してくれないか?後途中でも監督官を置いて一度戻る事も伝えてくれ、シンラにも同様に」
「解りました!」
「健様、バスチアヌのピラミッドに異常は無い様です、他にフィリアさんが間に合わなかったら朔耶さんやラムダ将軍が危なかった様ですね、朔耶さんがココノさんと健様に感謝していると」
「そうか……我ながら恐ろしいぜ……朔耶に何か有ったらと思うと……朔耶とフィリアには充分休んでくれと伝えてくれ、ラムダにも兵達と自分も充分に休ませる様にな」
「はい、解りました!」
「健様、ルルさんはもう朔様の所にいるそうですね、朔様と帝との念話が終わり次第こちらへ向かうそうです」
「タイムリーだな」
「朔姫了解したそうです、補強工事は当初の工程に添って問題なく進んでいる様です、シンラさんが人足を充分に確報してくれたそうです。私の変わりは朔姫がやってくださったそうですね!
かなり楽しんで女神約をやっていたそうで、人足達は女神の為に寝る間も惜しんで工事にかかっているそうです。
シンラさんはレムリアに連れていく人足を連れて既にこちらへ向かっているそうです。明朝にはこちらへ到着予定だと」
「…………そうか、朔の女神は容姿は問題ないが、、、かなり危険な女神だな……」
そして俺達は早めの就寝についた、そこで久美が寝ながら話しかけて来る
「ねえ、健兄さん、、起きてる?」
「なんだ?久美、明日は早いぞ?早目に寝とけ」
「うん、そうなんだけど……イナンナの話し……」
「まあ、驚くだろうな……俺でも相当驚いてる位だ、でもな……久美、今さら俺もお前も後には引けねー所まで来ちまったんだよ」
「うん、解ってる、解ってるんだけど…………私……」
「健様の子である事ですね?」
「帝!起きてたのね」
「ええ、でも久美、私は思うんです、確かに魂の在りかたについては私達は健様の子でしょう、それは否定しません。
ですが、それでも私の母は桜姫です、私をお腹を痛めて産んで下さったのは他の誰でも有りません、お母様なのです。
そして私の愛するお方は健様なのです。私が長いときを待ち続けてやっと巡り会えた大切なお方なのです。
イナンナ様は言いました、宇宙を広げる為にはお互いを激しく求める愛が必要なんだと、私達はイナンナ様に有る意味踊らされていたのかも知れません、実際踊らされていたのでしょう。
イナンナ様の引いた道筋をなぞっていたのでしょう。
でも、私が激しく求めていた健様を思う気持ちは嘘偽りの物では有りませんし、お母様がお腹を痛めて産んで下さったのも嘘偽りでは無いのです。
引かれた道筋でも構いません、真実は真実なのですから!」
「成る程な、魂の在りかたはそうだが実際に男女が交わらなければ子は出来ない。ジャーリア達の様に分身を産み落とす存在ですら結局は俺とイナンナ達の子であった訳だ。」
「そう考えれば確かにそうね、あんまり深く考えるのも馬鹿みたいだし、寝る!」
この時実は全員起きていた、陛下の話を聞いてそれなりに皆納得したようだ。
次の日最高に騒々しい朔を納得させなければいけないのだが、なんと朔はそれよりもまさかと思う所で突っかかってきた。
「妾がアプスだろうがなんだろうがどうでもいいわい!それよりも何じゃ!その楓とか言う女は、本当に妾なのか?妾だとしたら離別などするわけが無い!主人殿、楓に妙な事をしたのではないか?どうなのじゃ!」
まさかと言う所で突っかかって来た朔、この部分の返し言葉は何も考えていない…………
「いや、何もやってないって、ただ俺が久美が心配で余り構ってやれなかったんだよ、それで怒っちゃったんだ!久美にはこの部分は内緒にしてくれよ?」
「なんと言う心の狭き女子じゃ!……その様な者妾ではない!」
プンプンと怒りながら去っていく朔…………
「はー……あの怒りモードはしばらく治まらねーな……」
「相当怒っていらっしゃいますね…………」
「マジか……ココノは別に話し聞いても何でも無いのか?」
「むしろ嬉しく思います、私が愛する主人様の子であったと言う事実に感激しております。エレやタキとも先程喜びを分かち合って折りました!」
「流石は朔の宮家の姫って所か、きもが座ってるな……」
シンラがその後合流、俺は目標をレムリアに定め、新たな戦場へと向かった
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