第38話 恨み

「……みんな手伝って!」


「健様、ほら、こちらへ」

「健様、解りましたから」

久美に促され、ラフィーネとリーアによる絶妙なタッグ技で引き離されてしまった、さながらだだっ子の様になる


「オラー!邪魔だ!このゴリ蹴り足りねー!後100発は蹴りあげる」


「もう死んでしまいます」


「構うこっちゃねー!アンナ、ぶっ殺す」


「健様、ここは私に免じて一度鉾を納めてくださいませんか?」



「んぁ?陛下か、どうしてこんなとこにいんだ?」


「健兄さんのせいでしょ!」



「ちげー!コノ巻き毛ゴリヤローがナメタ口聞きやがったから」



「帝、ここでは拉致があきません、また回復して帝の御前で再燃されても困りますし、一度宿の方へ」



「セリナさん、そうですね、宿へ戻りましょう」



「セリナ様、私達の泊まれる宿はありますでしょうか?無ければジャーリアの部落を」



帝が割って入る

「有りますよ‼ラフィーネさん、私達と同じ宿です、貸しきりに致しましたので問題ございません」



「そ、それは行けません、帝の御前を私共の」



「ラフィーネさん、私にも健様と殴りあいをさせるおつもりですか?私はこの様なお顔になるのは嫌ですよ?」



そういってプレゾールを指差す帝



「………………」


セリナは苦笑いしながらも

「一本取られたようね、ラフィーネ、帝のご上意です、従いなさい」



「お気使い痛み入ります」



俺はいまだにムカムカしてたが陛下の言葉を無視する訳にもいかず、とりあえず後を追って宿に向かった



そして布団に横になっているプレゾールを発見、今だ気を失っている。

皆が目を離している内に1発蹴りを入れた



「うーん……」


まだ目が覚めない、そして俺はおもむろにウエストバッグからマジックを出す。そしてまずはバ○ボンパパの髭、デコにはレレレのおじさんのシワを書き、頬っぺたにはバカ○ンの渦巻きを記入、念のためピー!の言葉も顔中に記録して置いた。


そして帝の部屋に久美に呼ばれて行く、そこにはすでにラフィーネやルチル達も来ていた、アンナは念のためセフィリア、セレスティアと一緒に扉の前にいた。



陛下が心配そうに聞いて来る……マジ可愛い……

「お加減はどうでございますか?健様」



「体は何でもねーけど、あの野郎がどうしても殴り足りねー!」



「私から見れば回復してもいまだに目が覚めない程なのですから十分だと思うのですが……」



「ナーナ、あいつはモヤシみたいな体つきだからひ弱なだけだ、殴られた回数なら20人からボコられた俺の方が余程多いぞ!

まぁ、陛下が言うんだから今日の所は勘弁してやる」


「ありがとうございます、健様、して喧嘩の原因はなんでございますか?」


原因についてはセリナが全て話した



「では原因を作ったのはプレゾール伯爵ではないですか、健様がお怒りになるのは当たり前です!」


「おい!ナーナ、俺が原因だと思ってたのか?」


「いえいえそんな事は決して……」


嘘臭い言い方で否定して来る……これは俺が原因だと思ってたな……



「申し訳ございません健様、我が配下がとんだご無礼を」



「よしてくれ、陛下が謝る事じゃ……」



コンコン‼


「じずれい……ぷ……いだじます、帝……ぷ……セレズ……ぷ……ティアに……ぷ……ございまず」



全員で顔を見渡す


ナーナが不思議そうな顔で答える

「どうしたのですか?セレスティア」



「はい、ぷ……プレゾール伯爵がご面会をと……ぷ……」



実は俺はこの時プレゾールの顔の落書きをすっかり忘れていた。



「お通しください」



「はい!」



そしてプレゾールが入ってきた



「なんだあの物達は、人の顔をみるなり、おっと失礼、帝に際しましては、ご機嫌麗しゅう……」



「前置きは入りません、面をおあげください」




「う!」

「ぷっ、」

陛下とナーナはなんとか我満したようだ



「はー……健兄さん……」



「んぷ……ぷ」


全員我満しているようだが……

こう言うのは盛大に笑ってやる方が本人の為だろう


「ブハハハハハハ!なんだテメ、そのつらはー!」



と指を指して大笑いする俺、全員その俺の声で限界が来たようだ、大笑いする一同、廊下からも爆笑が聞こえる、セレスティア達も限界が来たようだ。


俺は直ぐに思いだす


『うん?、そう言えばあれをかいたのは俺だった、…………まあいい……わからねーだろう』



「と、ぷ……とりあえず……ぷ、プレゾール、あは、伯爵は、鏡をご覧に成って、アハハ、出直されるが、良いでしょう」


陛下はお腹をおさえながらも貴賓溢れる言い方でプレゾールに言い聞かせる……マジ天使すぎ……



プレゾールは何が起きたのか解らず、目をぱちくりさせながらそそくさと出ていった



「もうー、健兄さん?やり過ぎよー」



「な、何の事かな?俺は知らんぞ‼」



「アハハ、私どもの 、あは、知らない字で、あのような卑猥な御言葉が書いて在れば、久美はここにいた、のです、ーぷ、後は健様しか、おりません、、アハハ」



ナーナは爆笑を押さえられないようだが……まてよ?

しまったーーーー!

そうだ!陛下は天空人の子孫!双子のナーナは勿論の事!種が羽化してるからこそ現代で俺に逢うことも出来たと考えるべきだった。

なら俺がこの世界の字が読めるんだ、陛下やナーナが俺の世界の字を読めてもおかしくねー!


だが、2人ともエロ言葉よりバ○ボンパパの髭とかのインパクトが相当応えたらしい、良かった……


そして悲鳴がコダマする


「何と言う事だーーーー!」



その悲鳴が笑いに火をつけた事は言うまでもない




「あのもの 許さん、許さんぞー!お美しくも気高き帝の御前で、この私にこれ程の恥辱を……」


必至こいて消すが、油性マジックで書いてある、そう簡単には消えない、プレゾールは手拭いを擦り過ぎて顔中真赤になっていた



「プレゾール伯爵、遅いですね!」

ナーナが立ちあがり、廊かに歩いていく


「まさか、健兄さん?何で書いたの?」



「おお!これだ」



「お湯じゃなゃきゃ消えないじゃない、セフィリア!ちょっといいかしら?」



「お呼びでしょうか?」



「プレゾール伯爵にお湯で消す様に言って来てちょうだい、たく、健兄さんのせいでもう一泊ね!」



「何で俺のせいなんだよ!」



「門でセリナに帝に報告するから待つ様に言われたでしょ!喧嘩っぱやいのは本当に変わらないのね!」


とりあえず何も言えなかった



「失礼します、プレゾール伯爵が参られました」



「お通しください」

ナーナが応える


「帝、先程は大変お見苦しい姿を、大変ご無礼致しました」



そういって俺を睨むプレゾール


俺は……中指を立てた



「キサマー!」



「んだこのゴリヤロー!」

意味は知らない筈だが、馬鹿にされてる事は解るらしい



「お止めください!帝の御前ですよ!」

セリナが静止をかけた


「プレゾール伯爵、ご面会はまたにされた方が宜しいのではないですか?」


「い、いえ、帝、大変ご無礼を」



「おおむね争いの原因はセリナ公爵夫人から聞かせて頂きました、して、プレゾール伯爵、この街はいつから反乱軍に寝返られたのか?」



「帝、お言葉ではございますが、このプレゾールが反乱軍に与するなど有ろう筈がございません!」



「ならば何ゆえ法を守らぬのですか?如何に私が来ようと、法はこの国に秩序と安寧をもたらす大事な物、その法を司る領主自ら法を破るとはこれ如何に、ご返答を」



「はは、帝ご滞在の急な報せをきき、いささか舞い上がっておりました。今後は身心に背かぬ様、精進して参りますゆえ、平にご容赦を」



ひれ伏すプレゾール、


「此度のみ許す。今後この様な不始末を耳にした場合、法により罰せられると思うが良いでしょう、解りましたね?」



「はは!有り難き幸せ」



俺は最大の勝ち誇り方でプレゾールを見下した

プレゾールは血管が切れそうだ……

更に笑ってやった



「ならば下がるが良い」



「はは!失礼致します」



「はー……」

陛下は大きなため息をついた



「さて、今日は湯浴みしてお食事、後は少ししか話せないわね、誰かさんのせいで……」




俺は聞いていない振りをしながらこの久美の言葉に耳をダンボにしながら聞いていた


『湯浴み?チャーンス‼』



このプレゾールとの確執が、この後大事件に繋がるとは、今は誰も考える事は無かった……

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