第37話 乱闘

「ヤメダ!!」


セリナが間抜けな声で

「へ!」



「こんな所で言い合いしてる場合じゃ無くなった‼

お前ら行くぞ」



「ふざけんなコノヤロー!ゴッホ!」


ドンッ‼


俺は門番の後頭部に回し蹴りを叩き込んで失神させた


「行くぞ!お前ら急げ!」


ルチルとレイナが仲良く怯えてる

「あわわわわわ〰」

「あわわわわわ〰」


周囲の入場待ちの者達も小声で

あいつ門番を殺しちまったのか?

バカ、死んで無いわよ

シ!聞こえるよ!

とひそひそ話をはじめている


セリナは呆れた様に

「はー……後の事少しは考えて下さいよね?健様」



「はー……皆行きますよ」



「アンナ様、良いのでしょうか?」



「リーア!健様のご命令は絶対です」



ラフィーネが先に進む

「行きますよ!」



「健様は手が出るのが早すぎます……」

心底困り果てた様にシエラが呟いていた


その後俺達は宿付近で街の警備隊に囲まれた



「まてー!そこの者達、止まれ!」



「ああん?んだよ、うぜー」



「貴様だな、門番を暴行したばかりか入れてはいけないジャーリアどもを5匹も密入領させた者は」



セリナが俺達の前に出る

「待ちなさい!そもそも最初に暴行を働いたのはその門番です!我が妹が紋章を着けているのにも関わらず腕を引っ張りあげ無礼を働いたのは、このグラハム家第二夫人、セリナグラハムが目撃しております」



「これはこれは、グラハム夫人にセリナ殿、レイラ殿まで、ご機嫌麗しゅうございます」



「なんだ?このヒョロイ似合わねー巻き毛の如何にもなゴリラ顔ング」


「健様シーーーーー!」

レイラが焦って俺の口を塞ぐ



「プレゾール伯爵、こちらの皆さんは私の知人、最初に手を上げたのはそちらなのですから、この様な所業はいささか府に落ちませんが?」


「相も変わらずお美しいセリナ殿!勿論セーラ殿の様な、麗しのご婦人相手に乱暴を働いた不届きものは、こちらで厳重な処罰を致します。ですがこのジャーリア達と奴隷及びその飼主はこちらに引き渡して頂きましょう」



「理由は?」



「今このメルボルンデ領内には帝がご滞在中、よって御前をジャーリアの様な不浄な者達で汚すのは帝に対し奉り恐れ多い事、この私も直ぐに帝の御前に馳せ参じなければならない所にこの様な不始末が耳に入った次第でして」



「その帝がこの様なご無体な話をお許しになるとお思いか?」



「勿論でございますともセーラ殿、そのお美しさ、以前にも増して光り輝いておりますな!もしや以前のお話、我が25番婦人になる決意を固めておいでくださったのでございますか?レイナ殿も御歳200を迎えた様子、我が26番婦人に向かえようではありませんか」


「誰が……」

「いいです……」



「それは何を根拠に申しておられるのか?場合によっては不敬罪に処されますよ?」



「それはしたり、セリナ殿、帝がこの様な不浄な、フゲー!」

バキッ‼


俺は前廻し蹴りをプレゾールの顔面に叩き込んだ、後ろに吹っ飛ぶプレゾール



「あー!」

セリナ達がやっちゃったー!と言う顔で俺を見る



「貴様、領主様に何をする!」



「さっきから黙って聞いてりゃ人の女捕まえてきたねーだの不浄だの言いたい放題言いやがって!もう勘弁ならねーぞ!このモヤシゴリ!大体セーラもレイナも俺の女だこの変態キモゴリラ‼」


「旦那様!」

「健様ー」

二人の目がハートになったようだ


「すみませんセリナ様、間に合いませんでした、申し訳ついでに私共も加勢を」



「アンナ、駄目よ‼」



「ですが」


「絶対駄目、そんな事したらもう助けられない、貴女達は一切手を出しては駄目よ。

天空人である健様はどうにでもなる、ましてや健様は帝への忠誠を誓った身、士官をしたのだから罰せられるのはプレゾールの方よ!

でも貴女達はまだ正式に帝軍天空人松田隊の兵となっていないのよ!

だからここは我慢なさい、健様もそれを望むはず」



「口惜しい……」

ラフィーネが歯軋りをしながら呟いた


「どうにかならないのですか?おば様、これじゃ健様が不利です」

レイラが涙目で訴える……



「レイラ、ちょっと待ってて」



1対約20の殴り合いが始まった、勿論俺はフォルムを使えば簡単だが、仮にも帝軍の端くれであるこいつらを殺す訳にも行かない。

だからと言って自分の女を侮辱されて黙っていられる程人間出来てねーし……

だが、流石にいくら空手をやっていたとはいっても20人相手に勝てる筈もない、俺は標的をプレゾール1人に絞ってボコボコにした、が同時に俺もボコボコになった、そこに……



「何をやっているの!」



「久美様!」



「セリナ、これは一体何の騒ぎ?って、健兄さん!ちょっと何やってるの!ああんもうーヤメナサーイ‼」



久美は上空に向かって極大フォルムを放った


皆一応にその場で止まった、、、かに見えたが……

一人動いている人間がいた



「この!くらー!死ねや!こら!死ね!死ね!」



ドゴ!バキッ!ゴキャ!ゴキャ!



そこには半死人の様な血だらけの、顔が原型を留めていない、ボロ雑巾の様になったプレゾールと、やはり顔面ボコボコになった俺がいた。

俺は動かないプレゾールを執拗に殴り続けていた。



「健兄さん‼ちょっと、離れて!」



「んあ?久美か、ふざけんな!この巻き毛ゴリまだ殴り足りねー!

こら!死ね!死ね!ゴリ!」



「ちょっとあんた達も見てないで手伝って!」



流石にアンナ迄が呆気に取られて茫然と見ていたが、久美の一言で皆が俺を引放しにかかった



「オラー!話せ!あのゴリ野郎後100発は殴る!」



「はいはい解りましたから、ここは一旦離れましょう」

リーアが後ろから俺を羽交い締めにして引き剥がす、こいつ以外とパワーがあるぞ?



そしてセリナが応急措置を両者にかけてプレゾールが目を覚ます



「ん?、あーきっさまー!この私に何と言う事を!お前達!こいつを捕まえろー!いや、もう殺して構わん!殺れーーーー!」



「んだとこの巻き毛ゴリ!上等じゃねーかこらー!テメーなんぞ一撃でゴリん獣だぜ!」



そして第二ラウンドが始まった。

久美が大慌てで止めに入るがもう遅い、今度は対に見物人迄が大勢現れる始末、フォルムを派手に打って止める事は出来なく成ってしまった。



「ヤメナサーイ、あなたたち、健兄さん!ちょっと」



「これどうなっちゃうんですか?」



「ルチル……私に聞かないで下さい……」


「アンナ様に同じく……です……」

ラフィーネがガックリと肩を落として首を降る


「帝じゃないと無理なのだー」


「ミーシャ、こんなとこに帝を呼べる訳ないでしょ!」



「セナちゃん……そうよ!帝を、帝を呼んできて、セリナ!帝よ?帝」



「??あっ!ああ、はい、帝ですね!」



ーーーーー


セリナは息を切らして宿に駆け込んで来た

「ブライアン公爵が第二夫人、セリナでございます、支給ナーナ様へお目通りを」



「ご紋確認致しました、しばしお待ちを」



帝とナーナの二人は席の沢山空いている長机を前に一段高いご座所に座り、お茶を口にしている



「帝、ナーナ様、セフィリアにございます。ブライアン夫人が至急お目通りを願っておいでですが」



「セフィリアですか?構いません、お通しください」



「ブライアン夫人は健様と落ち合って早々にここに来られる手筈に成っているのですが、どうした事でしょうか?」



「遅いので様子を見に行った久美も戻りませんね……」



「帝、ナーナ様、ブライアン公爵が第二夫人セリナにございます」



「お入り下さい」



「失礼致します」




「前置きは必用ございません、用向を」



「はい、久美様よりのご伝言、ナーナ様に至急お越し願いたいのでございます」



「なにようでございますか?」



「はい、実は松田様と領主、プレゾール伯爵含む手勢が街で大乱闘、一度は久美様が止めはしたのですが、お互いに怒髪天の如くお怒りになられ再燃、街の住人が物見遊山にふけている始末。

最早久美様にもお手がつけられないご様子、帝のご意向にすがるしかないと……」



「なっ!…………」

「…………お姉さま……」



「何故そのような事に、いえ、それは後に致しましょう、ではお姉さま、行って参ります」



「いえ、私も参りましょう」



「お言葉ではございますが、それは……帝に万が一の事無きよう久美様は」



「そうでございます、お姉さまはここで」




「ナーナばかりに苦労をかけて来ました、これからは一緒です」



「お姉さま……」



「では参りましょう‼」




ーーーーーーーー




大乱闘場




「これは……」



「え!帝?」


焦る久美にアイコンタクトのみで返す二人


「ではナーナ、お止めいたしましょう」



「はい、お姉さま」



その時目映いばかりの金色の光が二人の背後に差した、それは二人の間違いなく後光であった、誰しもが見とれ二人を拝み崇めた、



オォ‼帝だ、、、ナーナ様もおられる、何とお美しい、女神だ、女神の御光臨だ!

素敵だわー、本当に女神様よ!


誰しもが二人の余りにも美しい姿、神々しさに目を奪われ、その場にひれ伏した、、かに見えた……が……

やはり一人、動いてる者がいた……


「こらー!死ね!バナナか!死ねや!くらー!死ね!死ね!ゴリ!」



ドカ!バキッ!ゴキャ!ドゴ!バキッ!ゴキャ!



「……………………」「……………………」

「………………」「………………」

「………………」


久美を含む全員が最早台詞を出すのも面倒くさいと言った状態で健を眺めている……


ボロ雑巾の様になったプレゾールを俺は執拗なまでにストンピングキックの要領で蹴りを入れていた…………


俺も顔面ボコボコになったが、プレゾールはゴリラ顔が豚ゴリラになっていた

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