メガネ男子になりきれない僕


 僕はメガネをかけている。

 子どもの頃から徐々に目が悪くなってきて四年ぐらい前に初めてメガネをかけはじめた。

 

「目が悪い人ってわりとたくさんいるよね」

 バイトの先輩が僕の顔を見るなり口を開いた。

「そうですね。皆コンタクトにしてるから見た目じゃ分かりませんけど話してみるとわりと多いですね」

「君はコンタクトにしないの?」

「しないんじゃなくて出来なかったんです」 

 先輩の顔からハテナマークが出ているのが見ていて分かる。

「一回しようと試みたんですが相性が悪いのかすぐにとれてしまうんです」

「あー。だからメガネなんだ。でも普段は外してるよね?」

 納得したような顔からまたハテナ顔に変わる。

「それは僕が完全なメガネ男子になりきれてないからです」

「メガネ…男子?」

「そうです!メガネ男子とは普段からずっとメガネをかけている男性に使う言葉です。お風呂に入る時、寝る時以外ずっとメガネをかけている人!それが完全なメガネ男子なんです」

「へ、へー。そうなんだ」

 先輩は一歩後ずさる。

「でも僕はずっとメガネをかけてると目が痛くかけてるのが辛くなるので必要な時以外はかけないんです」

 心がだんだん重く暗くなっていく。

「僕だってメガネ男子になりたいんですよ…でもなれないんです…」

「が、頑張ってね」

 何となく出した話題でこんな熱弁されると思わなかったと先輩は思っているのだろう。

 一歩また後ずさり微妙な笑顔で応援してくれた。


 もう一度言う。

 僕は(必要な時だけ)メガネをかけている。

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