出来損ないの機械と少女

 この世界は人間と機械によって出来ている。


 『人間が暮らす街』

 

 『機械が暮らす街』


 別々に暮らしている両方の街は活気に溢れて賑やかだった。しかし資源は有限でいつもどこかで戦争が起こっていた。戦争が終わった土地は荒れ果て、ただ広い荒野だけが残り、人と機械の影すらない。

 

 どこにでも忌み嫌われ、迫害されることはよくある。人にも機械にもそういった者たちは居る。その者たちは行くあても無く、荒れて廃れた街に移住していった。

 そんなゴミ溜めみたいな場所はスラム街と呼ばれいつしかゴロツキ達の住みかになっていた。

 

 そんなゴミ溜めに一人少女がいた。

「はぁ…はぁ…」

 小さなパンと瓶を持って走る少女。


「待て!ガキ!食い物寄越せー!!」

 

 少女は追いかけてくる大人から逃げる。ここでは食べ物はとても貴重でいつでも奪い合いだ。

 何とか大人たちから逃げ切れた少女は小さな路地に入っていった。

 

【ピピ…ピピピ、キュルルル】

 おかしな機械音が奥から聞こえてくる。

 

「ただいまぁ、ご飯持ってきたよ」

 

 少女は奥に居た小さな丸いロボットにそう話しかけた。丸いロボットは喜ぶようにピピピ、と音を出しながら少女に近づいてきた。

 

「はい、今日はオイルだけだけど」

 少女はロボットに瓶にストローをさして渡した。

 

 少女は小さいパンを食べて、ロボットはオイルを飲んでいる。

 

 二人が出会ったのは小さなスラムの外れだった。

 少女は親に捨てられ、ロボットは喋れないからと機械たちにこのスラムに追いやられたのだ。


『君も一人なの?』

 小さな少女が語りかける。


【ピ、ピピピ… 】

 機械音で答えるロボット。


『じゃあ、一緒に来る?』

少女は聞くとロボットは何も言わず少女に近づいた。


 それから二人はずっと一緒に居る。街から街へ荒野を歩き、食べ物を盗んで生きている。

 

ー出来損ないのロボットと捨てられた少女はまた次の街へと歩き出す。生きるためにー

 

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