甘い菓子の匂い


 「ねぇねぇ、お姉ちゃん」

 「どうしたの?」

 「今日のご飯はカレーがいい!」

 「またぁ?仕方ないなぁ」

 「やったー!」

 喜んで繋いでた手を離して走り回る妹。どれだけ嬉しいのか。何でも喜ぶ年頃なのだろう。見ていて笑みが溢れていく。

 ふと妹が立ち止まると辺りを見渡している。

 「どうしたの?」

 「お姉ちゃん、何か良い匂いがする!あっちからだ」

 妹はそういうと路地裏に走っていってしまった。

 「あ、ダメよ、勝手に離れちゃ!」

 私はすぐに妹の後を追いかける。

 路地に入ると妹の姿はどこにも無かった。


 

 あれ?お姉ちゃん?ふと私は足を止めて振り向くとお姉ちゃんが居ない。はぐれてしまった。私はどこだろうと前へ進む。

 「あれ、またいい匂いだ!」

 私は匂いのする方に進む。

 『まだ、ダメよ』

 誰?!私は辺りを見渡した。

 『まだ、ダメよ』

 私は声に導かれるように歩いた。

 「何がダメなの?」

 私は呟いてみた。

 『まだ、ダメよ』

 奥まで行くと右と左に道が別れている。

 『まだ、ダメよ』

 左からは声が、右からは甘い匂いが、どっちに行こうか。私は誰か分からない声より匂いのする方に進んだ。

 歩いていくと目の前にテーブルとイスが置いてある。テーブルの上にはケーキが置いていて、甘い匂いの招待はこのケーキだったんだ。

 私はケーキを食べてみようと前に行く。

 『まだ、ダメよ』

 「え?!」

 私は後ろから声が聞こえてとっさに振り向くけれど誰も居なかった。

 次の瞬間、視界は真っ暗になった。



 [昨夜、未明小さな女の子が誘拐される事件がおきました。少女は見つかりましたが見つけた時には息をしていなかったようで警察は事件として捜査を進めているようです]

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る