第86話「国王からの、約束の品」
翌朝、俺とテオは滞在していた宿屋を引き払った。その際、受付カウンターにてネレディからの「約束の品が用意できたので、本日昼以降に冒険者ギルドへ寄ってほしい」という伝言を受け取る。
商業区でしばらく時間を潰した俺達は、午後早めにギルドへと到着した。
窓口で名前を告げると、ギルド奥の応接室へと通される。
およそ8畳とそこまで広くない応接室には、中央に置かれたガラス製の小さな丸テーブルを囲むように、上質そうな茶色い革張りのソファーが配置されている。
装飾品といえば壁に小さめの静物画が1枚かけられている程度と、インテリアはかなりシンプルだ。
ソファーに腰かけた俺達は、喋りながらしばらく待つ。
「やっぱり魔石とかスライム関連素材は世界中で需要があるから、トヴェッテ冒険者ギルドは『取引規模が世界一大きい冒険者ギルド』としても有名でさー。ギルド内にはここみたいな個室がいっぱいあって、ものすご~い金額が動く商談が毎日行われまくってるって噂なんだぜっ!」
「確かにこの辺りの廊下、やけに強そうな警備員達が配置されてたもんな……」
応接室への道々を思い出し、テオの説明にうなずく。
ゲームでは応接室周辺は関係者以外立ち入り禁止エリアであり、プレイヤーが入れるのは特定イベント内の限られた時間のみと、あまり馴染みが無い場所である。
そんな理由もあって俺が物珍しそうに部屋の中を見回していたところ、木箱を持ったネレディが「お待たせ!」と部屋に入って来た。
ソファーに腰かけるなりネレディは木箱を開け、俺達に中身が見えるよう、そっとテーブルへと置く。
「早速で悪いけど、まずは約束の品を確認してもらえるかしら」
手のひらより一回り大きなサイズの木箱に入っていたのは、直径5cmぐらいの滑らかな球形の透明石。
光沢がある紫色の布で覆われた台座に綺麗にはめ込まれていて、どことなく高級感が漂っている。
【鑑定】スキルを使い、これが目的の品であるのを確認した俺が言う。
「……確かに、最高級の透明魔石です」
「確認ありがとう。じゃあ遠慮なく、受け取ってちょうだい!」
「はい……貴重な物を用意してくださりありがとうございますと、国王様にもお伝えください」
俺はぺこりと頭を下げた。
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ひとまず受け取った透明魔石を俺が【
なお前日に国王から提案された爵位授与と見合いの件については、「今は目の前で手一杯で、まだ魔王討伐後のことまで考えられないので……」という無難そうな理由で断りを入れたところ、ネレディは残念そうに「そう……気が変わったらいつでも言ってちょうだいね」と答えた。
ひととおり話を終え退室しようとした俺達に、ネレディが思い出したように言う。
「そうそう! 昨日の話にも出た『
「え!」
「なんて?」
ぐっと身を乗り出す俺とテオ。
「あなた達にだったら内容を言ってもいいとは思うんだけど……報告と一緒にダガルガから私宛に届いた手紙には、テオ宛にも同時に手紙送ったって書いてあったから、それを直接見てもらうほうがいいんじゃないかしら」
ネレディは、にっこりと微笑むのだった。
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