第22話「初ダンジョン・小鬼の洞穴、2日目(3)」
探索2日目の昼過ぎに『
能力差の関係でこの辺りの
夕方には、9階層の最深部に到達。
ダンジョンボスが待ち構える10階層へ続く階段も早々に見つける。だが階段を下りるのは大事をとって翌日に回し、その日は早めにテントを広げて休むことにした。
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その夜、テント内。
翌日のボス戦に向け、俺達は作戦会議をしていた。
事前にテオに聞いていた情報によると、ダンジョンの攻略情報自体は、かなりの精度で世界中の冒険者ギルド及び冒険者達の間で共有されているのだそうだ。
はるか昔から
掃除や収穫の手伝いといった非力な子供でも可能な依頼から、特定の魔物の討伐・生産に使う素材アイテム採集まで
中でも国と国との間の輸送・強い魔物のドロップ品採集など高額報酬が発生する
比較的平和な世の中において、身一つで高収入を見込める仕事はなかなか無いため、旅の冒険者には高い戦闘力を持つ者が集まりやすくなっていた。
だが
国や街は魔物達に対抗する手段として、戦闘に慣れていない一般人を鍛えるより、冒険者達に任せるほうがよいと判断。冒険者ギルドへ異常発生した魔物の
その支援の一環で、ダンジョンに関する情報提供へは懸賞金がかけられ――懸賞金の額は、情報の重要度により決定――、ギルド側で真偽を確かめた後、その情報は無償で一般公開されているのだ。
ちなみにテオも『小鬼の洞穴』に潜るのは今回が初めてらしい。とはいえギルド公開のダンジョン情報はチェック済みで、各階層に出現する魔物の種類等はもちろん、ボスの詳細も頭に入れたと。
テオから色々話を聞いた俺も、既にひととおり事前情報を把握している。
逆に俺は、【光魔術】によるダンジョン浄化方法――「神様に聞いて知った」等とごまかしながらも喋れる範囲で――を、ある程度はテオに教えておいた。
「じゃあタクト! 具体的な作戦を立てる前に、改めてダンジョンボスについての情報整理するよー」
「おう!」
目の前に広げた見取り図を前に、テオ主導で話し始める。
「まずこれが、小鬼の洞穴の最下層・10階層の見取り図。9階層に繋がる階段への扉が壁にあるだけで、特に障害物もトラップもない、30m四方ぐらいの小さな部屋が1つだけ。そんで、ここがダンジョンのボス部屋でもあるんだよね」
「この扉からはいつでも逃げられるんだよな?」
見取り図の扉部分を指さしつつたずねる。
その質問に「うん」と答えたテオは、腰に付けた
「戦闘中危なくなったら、部屋から出さえすれば、ボスはそれ以上追ってこないはずだよ。ま、普通に逃げられりゃそれでいいんだけど、そううまく行かない状況の時もあるだろ? そういう時に便利なのが、この『
「あぁ……そういえば、エイバスの街でも『逃走用に一応買っとけ』って言ってたもんな」
ゲーム中にも存在する
テオに強く勧められて買った数個が、俺の【
「まぁこのダンジョンのボスはそんなに強くないから、たぶん
「持っとくに越したことはないな」
「そうそう。で、10階層に出現するボスはLV5のゴブリンリーダーなんだけど、普通のゴブリンリーダーとちょっと違うんだよね……」
テオは喋りながら見取り図の下に重ねてあった情報メモを取り出した。
内容は既に知ってはいるものの、俺も念には念を入れ情報に目を通していく。
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ダンジョン『小鬼の洞穴』ボス情報
名前 ゴブリンリーダー
種族 ゴブリン
称号 ゴブリンの統率者:ゴブリン達を従える者
土の魔物:肉体が土属性の魔力で構成される者
魔王の
状態 健康
LV 5
■基本能力■
HP/最大HP 103/103
MP/最大MP 24/ 24
物理攻撃 36+8
物理防御 27+3
魔術攻撃 11
魔術防御 18
■スキル■
<称号『ゴブリンの統率者』にて解放>
剣術LV3:剣技での攻撃力が27倍になる
同族召喚LV3:自分より低レベルの同種族の者を10体まで召喚できる
<称号『土の魔物』にて解放>
土特性LV1:自身の全ての攻撃が土属性攻撃になる
風属性攻撃で受けるダメージ増加
水属性攻撃で受けるダメージ軽減
<称号『魔王の
魔誕の闇LV5★:周辺の魔力を増幅し、攻撃的な魔物を生み出しやすくする
魔王の援護LV5★:特定の条件下で、魔王の援護により強化される
■装備■
錆びた剣(物理攻撃力+8)、破れた毛皮(物理防御力+3)、ぼろぼろのマント
●出現
小鬼の洞穴10階層・ボス部屋
※一度倒した後は8時間程度出現しない模様
●特徴
戦闘開始時に【同族召喚LV3】スキル使用
※以降は仲間ゴブリンが3体以下になると使用
※LV4以下の棍棒・槍・弓ゴブリンをランダム召喚
※召喚できる仲間は、場にいる者と合わせ10体
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「……称号・魔王の
基本能力数値や特徴などは、普通のゴブリンリーダーと変わらない。
だけどこの魔物には『魔王の
そのうち【魔誕の闇LV5★】こそが、その周辺をダンジョン――局所的に濃い闇属性の魔力で支配し、狂暴な魔物が生まれやすいエリア――と化してしまう原因のため、このスキルを持つ魔物を『ダンジョンボス』と呼ぶ。
ダンジョンボスを倒すことで、それが復活するまでの約8時間、そのダンジョンでは魔物が生まれなくなるのだ。
そして問題は、特定の条件下で魔王の援護により強化されるというスキル【魔王の援護LV5★】。
テオが仕入れた情報では、過去に多数の冒険者が様々なダンジョンで、「どのような条件なら、スキルによる強化が行われるのか?」を試したものの、結局誰も解き明かすことが出来なかったらしい。
苦笑いしながらテオは言う。
「そりゃそうだよね……まさか【魔王の援護】の発動条件が、『【光魔術】を使える者、つまり
勇者は、世界においてただ1人しか存在しないはず。
普通の冒険者パーティでは、【魔王の援護】の発動条件を満たせるわけがない。
「……タクト、勇者がパーティにいる場合、戦闘開始時にボスが自動強化されるんだよな?」
「ああ。ただ……どれぐらい強化されるかは、行ってみないと確実には分かんないけど……たぶん、そんなに無茶な数値にはならないとは思ってる」
ゲームにおいて各種族の魔物のLVや強さは、出現場所等でほぼ固定されている。
だが唯一、例外がある。
それが『魔王』という存在と、魔王の援護が行われるスキル【魔王の援護】だ。
魔王は強さが固定されていないものの、プレイヤー有志の検証により「魔王のLVは、その時の勇者と同じLVである」ということが確認されている。
またLV毎の魔王の能力値もLV1から最大LV999まで全て算出されており、攻略サイトをのぞけば細かく確認することが可能だ。
そして【魔王の援護LV5★】は具体的には『その時点の魔王の能力値の10%』が『援護対象の魔物の能力数値』に加算されるスキルである。
つまり、ダンジョンボスの強化数値は、勇者の現在LVで確定するのだ。
現在の俺はLV11。
そしてゲームのLV11勇者に対応する『小鬼の洞穴』ボスの【魔王の援護LV5★】発動状態ステータスはこちら。
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名前 ゴブリンリーダー
種族 ゴブリン
称号 ゴブリンの統率者、土の魔物、魔王の
状態 【魔王の援護LV5★】発動中
LV 5
■基本能力■
HP/最大HP 653/103+650
MP/最大MP 924/ 24+900
物理攻撃 36+ 44
物理防御 27+108
魔術攻撃 11+ 90
魔術防御 18+105
■スキル■
剣術LV3、同族召喚LV3、土特性LV1、魔誕の闇LV5★、魔王の援護LV5★
■装備■
錆びた剣(物理攻撃力+8)、破れた毛皮(物理防御力+3)、ぼろぼろのマント
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
多数のプレイヤーの検証で『勇者のLV毎の、ダンジョンボス強化数値一覧表』なども細かく作られ、攻略サイトに掲載されている。
また検証では「【魔王の援護LV5★】の援護を受けた各ダンジョンボスは、普通にプレイすれば、『各ダンジョンの攻略推奨LV勇者1人のソロパーティ』でも何とか倒せる強さ」であること等も判明済みだ。
ダンジョン『小鬼の洞穴』の攻略推奨LVはたったの5。
今回は、勇者であるLV11の俺以外に、LV38のテオもいる。
しかもゲームと違い【能力値倍化LV5★】スキルの効果で、俺の能力はLVの割には大幅に増加しており、だいぶ有利な状況のはずだ。
たぶん何とかなるだろうと思うけど、準備だけは入念にしておかなきゃな。
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