東国連邦国家とダーク帝国の合戦
スグルがこの台地に生を受ける以前の遠い遠い昔の話ではあったが、アジア台地では台地を2分した壮絶な大きい合戦が起きたのである。
この壮絶な合戦の様子は、東の国の将軍(ヤン、キンゴ―)の勇猛さを讃える叙々詩となり台地の民の間に絶えることなく語り継がれていた。
半人半獣の兵士やゾンビ兵を有するダーク帝国軍と東の国を中心とした東国連邦国家軍の壮絶な合戦である。
この事は「スグルの嘆き」にも詳しく触れられている。
このことが今のアジア台地の状況を語るにおいて重要な序章となるからである。
北西の峰々の奥深くにて誕生したダーク帝国は、先ず北西の峰々周辺のいくつかの山地民族の小国家に向けて侵略を開始したのである。
そして北西部地域を度重なる戦闘によりほぼ平定すると、今度は台地最大の河川オウガ上流域周辺の部族への侵略を開始した。
オウガ上流周辺にはまだ国家の体をなしていないハウマン一族(オウガ河川の両岸沿いに居住し大型のワニを信仰している)やギャウティ―一族(オウガ上流岩山沿いに居住し大鷲を信仰している)、ドウマル一族(オウガ上流森林地帯に居住し、熊を信仰している)の一族がおり、各部族が信仰している宗教が異なるためか小競り合いを起こしつつも平安なる狩猟と農耕生活を営んでいた。
この3部族に、将軍を有しその下部組織に軍司令官を有した組織的な軍隊をもったダーク帝国軍が襲いかかったのである。2~3日を有する迄もなく3部族の領地はあっと言う間に蹂躙され、ダーク帝国軍の統治下に組み入れられてしまったのである。
この3部族の領地を拠点とし、ダーク帝国軍はオウガ河川沿いにおいては東の国の領地への侵略を開始した、また一方では台地中央部を走る原人の住む原生林の西端(コルド峡谷)ぬけ西方の山の国へと侵略を開始した。
東の国、山の国の領民は今まで見たこともないおぞましい風体をした半人半獣の兵士の出現に驚き、同時にその風体を目のあたりにし恐れおののいた。逃げまどう他策はなかった。
東の国ではすぐさま専従騎馬軍団が時の将軍ヤーンキンゴー将軍に率いられその討伐に向かう。山の国では、専従の騎馬軍団はなく農耕と兵士の兼務であった。騎馬軍団組織まで相当の時間を要した。その隙を見逃さないダーク帝国軍は一気に攻め入り山の国の山城を包囲した1万余の大軍である。
東の国においては、オウガ河川沿いの平地を進軍するダーク帝国騎馬軍団とオウガ河川上に展開するダーク帝国軍船団とに対し、4万余の東国兵団をもって対峙した。
ダーク帝国騎馬軍団と東国騎馬軍団との戦闘は方物線をえがいた弓矢のおびただしい応酬から始まり、長槍での突撃そして両刃の平刀による白兵戦に突入した。
エンジに黄金の竜のあしらわれた軍旗と漆黒の軍旗がオウガ河川の平原を入り乱れて埋め尽くした。平刀が打ち下ろされ、長槍が踊り、騎馬は嘶き、炎は草頭を這い、黒煙が渦状に立ち昇る。怒号と悲鳴。頭上には放物線を描いた矢が降りそそぎ、血しぶきが一面を舞った。視界が途切れ敵か味方か判別できない、誰もが目前の者に平刀を振り下ろし、長槍をぶち刺す。かろうじて判断できるのは背に負った軍旗しかない地獄の合戦場だ。
ダーク軍は死人、死獣の回収を専門とした後方部隊が組織されていた。軍団の先頭は血のけの失せた顔色をしぎこちない動きをするゾンビ兵士である。痛みも恐れも死への恐怖もなにも感じない、刺されても、斬られても前へ前へと平刀をふりかざし突進する。勇猛で知られた東国の騎士達もさすがに恐れおののく、それでも果敢に戦い敵陣を斬り分け突入する。
その前には強制的に組織されたオウガ河川の3部族の兵士が立ちはだかるが、戦闘意欲には欠ける、すぐさまチリジリバラバラとなり退却する。
だがその後面に配置された半人半獣の兵団は勇猛だった。組織的戦術をとりまた刀剣の扱いも優れていた、攻め込まれては攻め戻し一進一退の壮絶な戦いである。平地草原は黒煙が舞い上がり、草木がなぎ倒されおびただしい鮮血で真っ赤に染まる。
おびただしい鮮血で真っ赤に染まった草木と死人や死獣の間を牛の頭をもった巨人が荷車を曳き死人死獣を回収してまわる。死体を荷車に無造作に投げ入れる、ポン、ポンと投げ入れる、おぞましい見るに堪えない光景である。
東国の勇敢なる兵士達もさすがにこれを見て恐れおののいた。
この時点では、すでに東国の国王より各国、国王に兵団の応援依頼が出されていた、その内容は次の様なものだった。
親愛なる各国、国王殿
・・・アジア台地最大の危機が迫る、今こそ各国一丸となりて、この台地の危機を乗り越え、安定と繁栄を・・・
「北西部峰々奥より、野獣の頭をもった兵団現る。(ダーク帝国軍)と呼ぶ、黒の布地に野獣の目、さけ上がる口の描かれし漆黒の軍旗、勇猛果敢、また死人の兵士多数、兵団益々増強、6万余を上回る、早急なる援軍をこう。東国には北の国、文明の国の援軍をこう。山の国、山城一万余の大軍に包囲される、海の国、水の国の援軍至急こう」
この報を受けた北の国では、女王アミダスが即刻決断を下す。1万余の兵団をオウガ河川を渡り東の国に送る、他5千の兵を50隻の船団に乗せオウガ 上流へと向かわせた。
砂漠に囲まれた文明の国では、国王は存在しない、10人の評議会義員により全ての決断が下される。評議会においては空飛ぶ鉄騎(空飛ぶ自転車をここでは空飛ぶ鉄騎と呼ぶ)500騎、火炎の爆裂弾(1000個)を決定し、すぐさま援軍の準備にとりかかかった
西方では山の国の隣接国家、海の国、国王が自ら2千の兵を引き城を飛び出した。すぐさま海の国将軍サクゼンは1万余の援軍の準備にとりかかる、合わせて1万2千の兵団が1昼夜うちに山の国の山城に到着するだろう。
西方で最大の国家、水の国では国王ミチャ王が2万余の騎馬軍団をすぐさま結成し、他に10万本の弓矢を携行した別途補給部隊をも結成しムハンバル渓谷を超え山の国へと援軍に向かわせた。
・・・その頃・・・
山の国の山城を包囲した1万余のダーク帝国軍は、数千本の火矢を山城内に打ち込む。山城はたちまちの内にいたる所でグエンの炎に包まれた。
そこへ新たな一手が城壁正面の鉄扉の前に一抱えもある巨大丸太を括り付けた荷車を持ち込む。
牛の頭の巨人だ、何人もの巨人が丸太の荷車を押す、正面の分厚い鉄の扉にぶつける、ガッン、ゴーン、ガシンと何度も、何度も分厚い扉にぶつけては引き戻し、またぶつける。
分厚い扉の留め金はゆがむ、分厚い鉄扉は今にも大きな口を城内に向け開けそうだ。城内では7~80人の兵士達が必死に鉄扉を押さえ込む、取り囲むようにして数百名の兵士達が長槍、平刀を突きだし身構える。その背後にはグエンの炎が迫っている。
牛の頭の巨人の荷車がまたぶつけられたいた。分厚い鉄扉も、もう破壊目前だ!ダーク軍は城内への突入準備に入った。
だがその時だ・・・ダーク軍の後方にすざましいトキの声があがる・・・海の国の援軍1万余だ、その軍姿を現すやいなや、その騎馬軍団は平刀をふりかざし ダーク軍の側面に突入した。
両軍の兵力は共に1万余、一進一退の壮絶な戦いが開始された。
その壮絶な戦いのさなか、水の国2万余の騎馬軍団が姿を現した。
大軍団だ、その軍団はゆっくりと動き、ダーク軍と海の国軍の入り乱れる戦場を二重三重に囲こみ、海の国軍に戦場より後方への撤退を促す。
海の国軍の撤退を見届けるやいなやダーク軍に数万本の矢を射かけた。バタ、バタと倒れ込むダーク軍の兵士。
そこにダーク軍の2倍、2万余の騎馬兵士群がついにトキの声をあげ平刀を振りかざし突入した。ダーク軍はたちまち総崩れとなる。
山城の城壁周辺にはダーク軍兵士の死体の山がいたる所に塁類と積み上げられた。水の国の将軍モクレンは命じた。その死体の山に燃える水をかけ、火矢を放った。トカゲ頭の騎士達は炎の中に消滅した。ダーク軍は壊滅したのである。
海の国、水の国の連合軍は一時の間をおいて陣営を立て直し、すぐさま東の国の東の戦場に向け海の国、水の国の無傷の騎士2万余の援軍が進軍を開始した。
東の戦場では、6万余のダーク帝国軍に対し4万余の東国軍はジり、ジりと後退し前線は押し込まれてはいたが孤軍奮闘していた。
そこに北の国の援軍がオウガ河川を越えてついに到着、戦闘に合流した。
北の国軍は台地随一の弓の軍団である、放物線を描く弓矢の応酬での弓の名手ではない、接近戦での弓の名手である、騎馬に跨りビシ、ビシと目前の敵に矢を放つ、その矢はブス、ブスと正確に敵の眉間を射貫く。
ダーク軍に押し込まれた前線は徐々に徐々に押し戻す、だが倒しても倒してもダーク軍は崩れない益々その兵は増えている。
オウガ河川の上流より何艘もの船団が新たなゾンビ兵士を次々に戦場に送り込んでいたのである。
オウガ上流に向かった北の国の船団は必至でこれを殲滅しようとするが如何せんその船団数はダーク帝国船団に対しすくない、一隻一隻が、数隻のダーク船団に包囲されゾンビ兵士に乗り込まれる。
一人の兵士に対し、10人余りのゾンビ兵士が群がり折り重なるように平刀を突き立てる、主の居なくなった船は破壊されオウガ河川の藻づくとなった。
徐々に徐々に北の国の船団数が減っていく、守りの要が失われていった。
東の国、北の国の連合軍は持久戦の様相に陥る。攻めの戦術ではない守りの戦術をとるしかない(先陣を大幅に押し下げ自然の要塞でもある堅固な東国城に籠城、ダーク軍を迎え撃つしかないか)・・・東国の将軍「ヤン、キンゴー」がきびしい決断を迫られていたとき、オウガ河川上の空高くに文明の国の援軍が姿を現した。
その様相を目のあたりにした者は全ての者が驚愕した、東の国、北の国、ダーク帝国軍全ての兵士達が驚愕した。
オウガ河川の空高くに鉄の馬らしき物(自転車なのであるが)がいくつもいくつも浮いている・飛び回っている・そこに騎士達が乗っているのである。
ダーク兵士軍は地上より河川の船団より矢を射かける。何本も何本も数百本も・・・しかし矢は天に浮く鉄騎に届かない、ただ空しく放物線を描き地上や河面に落ちた。
放物線を描き墜ちる空しい矢を嘲笑うかのように、今度は空飛ぶ鉄騎よりの報復が開始された。
空高くより炎に包まれた頭大の大きさの火炎弾が地上に投下された。ダーク帝国軍の兵士達の頭上に、河川上のダーク帝国軍船団にそれは次々と投下された。
投下された火炎弾は地表につくや船の船体に接触するや爆裂したドカーン、ドカーンと爆裂した。
その威力はすざましい、爆裂周辺の兵士数十人もがみな吹っ飛ぶ、爆裂された船体は真二つに割れ兵士もろとも川底に消えた。
オウガ河川上の百隻近いダーク船団に何百発の爆裂弾が投下されたのである。
船団のゾンビ兵士は川岸にたどり着く前に、上陸する前に川底に沈んだのである。
ダーク帝国軍の兵士の補給が途切れたゾンビ兵士の増員が無くなった。平原のダーク騎馬軍団は空からの爆裂弾と勢いを取り戻した東、北の連合軍の攻勢に後退を余儀なくされつつあった。
そこにダーク軍の後方より海の国、水の国の援軍2万余がついに到着襲いかかったのである。
戦陣の前面と後面より攻められることになったダーク帝国軍、ゾンビ兵士の増員が途切れたダーク帝国軍、頭上からの猛烈な炎の爆裂弾にさらされるダーク帝国軍・・・連合軍の度重なる猛攻についに総崩れの時をむかえた。
その時ダーク帝国軍将軍、
2m近い巨体に狼の頭をもったダーク帝国将軍ワガール、ウオー、ウオー、ワオー天に向かい吠えた。
狼最後の遠吠え、四方の大気がビリ、ビリ揺れ、一瞬連合軍の進軍の歩を止めた、だがその遠吠えが止む寸前、将軍ワガールの分厚い胸に北の国の騎士の放つ矢がビシ、ビシと数十本刺さる。
ガク、ガクと体を揺する将軍ワガール、だが倒れない、大きな平刀を振り上げたまま仁王立ちだ。
再度北の国の兵士が矢を放つ、数十本、ビシ、ビシと刺さる、分厚い胸だけじゃない、額に顔面に、両肩に、腹部に、両太ももに、両膝にだ、全身が針ねずみだ、それでも将軍ワガールは倒れなかった、仁王立ちだった。
だが再度に放たれた矢は普通のの矢ではない、先端に炎のついた火矢だった、ダーク将軍ワガールは仁王立ちのまま焼けていった、全身が焼けていった。
ここにダーク帝国軍は全滅したのであった。
北西部の峰々の奥の狂暴な半人半獣の大軍団を率いた闇の帝国ダークの侵略を壮絶な合戦で打ち破った東の国を中心とした東国連邦国家軍。
東の国の将軍(ヤン、キンゴ―)はオウガ上流の北西部に数か所の出城を即築いた。そこに300余の兵を常駐させエンジの布に黄金の龍の描かれし軍旗を掲げ、ダーク帝国とオウガ上流の(ハウマン、ギャウティ―、ドウマル族)の監視に充てた。
山城を取り囲まれた山に国では、専従の騎馬軍団を設けた。また山城周辺に数か所の出城も築いたのである。
北西部よりの恐怖は取り除かれた。アジア台地はまた東の国の東国城、城壁都市を中心に益々の繁栄と栄華がもたらされたのである。
いつしかアジア台地の民の間から、あのトカゲや狼頭の半獣半人のおぞましい獣人の恐怖は忘れさられていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます