第90話 雲
見上げた雲が
生々しいくらい広がって
下の方に差す
黒い影が生きていて
ウサギの形 リスの形
綿菓子みたいにふわふわで
でもあるがままに広がった
野生の形に息をのむ
その白い広がりの中
飛び込んでしまえたら
この頼りない体は
受け止めてもらえるのかな
冷たい氷に凍える体は
空へと投げ出されてしまうのかな
分厚い雲を突き破り
差し込んでくる日の光
救われる気がして、それでも
割れた雲がもったいなくて
現実逃避に近い憧れは
見透かされそして切り刻まれ
ただむきだしの心だけが
白い雲へと溶けてゆく
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