第75話:重要人物の長期不在

 フィクションの世界で、重要な人物がいったん表舞台から姿を消す。そして、ある程度以上の時間が過ぎてから、絶妙のタイミングで復活する。


 こういう展開がなぜか大々々々々好きで、ずっと気になっている。


 演劇の世界では第一幕にいた人物が第二幕では不在、という流れはいくらでもありそうな気がするが、小説や映画の創作上のテクニックとして、という教えは見たことがない。


 おそらく、意図的に登場人物の誰かの出番をあえて増やす・減らすという展開は、創作者の内的な、ごく自然な創造の結果としては産まれにくいもので、漫画やライトノヴェルの場合「人気があるからこのキャラクターの出番を増やしてください」、逆に「不人気キャラを整理しましょう」といった外的な要請があってやむなく調整するのではないだろうか。


 人気があるため連載が長期化する場合、延長に次ぐ延長によって人物の出し入れに乱れや狂いが生じることもあるだろう。不人気作品の場合は、作品そのものがやむなく短縮化される傾向があるため、そもそも登場人物の長期不在を描けないのだ。


 演劇の場合は、劇作法うんぬんよりも、特定の役者の出番をもっと多く、台詞の量をもっと多く、あるいは引き立て役の台詞は少なく、といった強い要請が外部から発生しやすい。


 また、ジャンルに関係なく「苦し紛れに表舞台から消しちゃった」と感じられるようなケースもある。特定の人物の個性が余りにも強すぎて、作者自身すらも扱いかねているのでは、と推察したくなることが時々ある。


 おそらく創作上の技法とか効果というよりは、一種のとして「重要人物の長期不在」という要素を捉えた方が自然に思える。中には遠大な構想を持っていて「最初から計算してましたよ……」という創作者もいるかもしれないが、それは客観的に見ると後づけの自慢話か、天賦の才によるものか、微妙なところではある。


 で、具体例を挙げてみたいのだが「この作品は、あの人物が途中からいなくなるんですよ!」の「あの人物」を露骨にばらしてしまうのは、いくら何でも仁義に反する。そこで、重要作(とりわけお勧め度の高い、ぜひとも知ってほしい作品)、あるいはタイトルくらいは誰でも知っている作品については、前後の流れもぼかしつつ、ネタバレを抑え気味に書いてみたい。


                         (次回に続く)

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