第61話:アイディアが思い浮かぶとき

 子供の頃からミステリやSFに馴染んで読書をしてきたので、書く場合も何らかのアイディアを元に小説を書く場合がほとんどである。だから、何もアイディアらしきものが見当たらない、落ちもないといったタイプの純文学系の短編を読むと、知らない建物の内部で出口を見失ったような気分になる。


 その「何らかのアイディア」は、うんうん唸って出すというものではなくて、自分でも意外かつ面白そうに思えるアイディアは、読書中や車の運転中に思いつくケースが多い。


 もう一つ、前々から自覚しているパターンは「面白いものに触れたとき」にアイディアが出る、というものがある。これは何らかの「面白さ」がきっかけになって、後押しされたようにの「面白いアイディア」がポッと出てくるというものである。「別種の」という点がポイントで、たとえばミステリを読んでいてミステリのトリックが思い浮かんだりはしないのである。


 たとえば「新しい農業と地方税制のあり方」といった本を読んでいる最中に、何の関連もなさそうな「太陽まで竹馬で行く羽目になる三国志の登場人物」とか「便利な定期券のシェアが誤解と誘拐を生む」とか「一夫多妻制になって裁判がカンフーアクション映画風になる」とか、メチャクチャな発想が急に出てくる。それも退屈な本ではダメで、心底から「面白いなあ」感じられるような、心の手ごたえといったものがないとダメである。


 面白ければ何でもよいかというとそれも難しいところで、ここ最近ではDVD「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」「片腕カンフー対空飛ぶギロチン」、本では「シカゴ育ち」「みそっかす」「高丘親王航海記」など、それぞれ面白かったものの、とんでもないアイディアは生まれていない。


 強いていうなら、普段あまり触れていなかったジャンルの本や、これまで嫌って避けていたようなジャンルの映画などの方が効果がありそうである。この「創作論のメモ」を読んでいる皆さんも、行き詰まった時には未知のジャンルに挑戦してみれば、良い結果につながる可能性が高いかもしれない。

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