第27話:漢字とカタカナの書き分け
カタカナ表記も悩みどころである。
基本的には「まあ、好きなように書けばいいじゃないの」と楽観的に構えている私だが、たとえば「携帯」と書くべきなのか「スマートフォン」と書くべきなのか「スマホ」あるいは「ケータイ」にすべきかとなると、時代設定にもよるし、簡単そうで難しい。海外の小説で「ブラックベリー」が出てくると、かなり古い印象を受ける。
昭和の頃の作家は、カタカナで人名を書くことすら稀だったはずで、村上龍あたりから「キク」「ハシ」といった表記が出てきて、90年代以降は「ショータ」「リューイチ」「リョーコ」といった表記が珍しくなくなってくる。これは耳で聴いた音をそのまま書いているような含みがなくもない。
以前はカタカナで書くと、どことなく小馬鹿にしているようなニュアンスが含まれたもので「先生」と「センセー」「センセイ」では天地の差がある。と思っていたら川上弘美の「センセイの鞄」あたりからそうしたニュアンスは減ってきて、現在ではほぼ消失したように感じられる。
「ココロ」「カラダ」「ジョーシキ」といった表記は特定の若者だけでなく、新聞の書評などでも目にするので、もはやわざわざ漢字で書く方が堅苦しすぎると思われるかもしれない。
自分はそうした風潮に反して、これからも漢字にできる単語は漢字で書きます!と宣言できればいいのだが、現実にいわゆるキラキラネーム的な名前の人間が大勢いる現代の日本を舞台にした場合、やはり一定の割合で「羽亜翔(はあと)」ちゃんや「心人(あいと)」くんを出して、しかもカタカナで「ハート」「アイト」とでも書かないと、リアリティが不足してしまうかもしれないのである。
おそらく5年後や10年後は「当て字」という概念すら消えて、いきなりひらがなやカタカナだけの名前が出てくると思うのだが、どうだろうか。そうなると書き分けで悩む必要もなくなってくるので、今は過渡期なのかもしれない。
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