第78話「さっ魚的にぃぃぃ!」

 「あんた……。しゃべらないところ見ると旧世代の着ぐるみだな?」


 メイちゃん(ピンクの雌猫。頬に傷あり。明るい裏に暗い幼少期あり。の中の人は29歳農業ベンチャー社長風間大志)の前に仁王立ちしているのは2回戦の対戦相手の魚着ぐるみである。その姿はまさに魚。リアルな魚から生ものの手足が出ている。どこぞのアニメで見たおかまモンスターの様だ。


 「……ふふふ。いいねぇ。そのキャラクターを大事にする姿勢。……嫌いじゃない」


 何だろうこの【イケメンが良くする意図的な】上から目線の発言は……。メイちゃんは呆然としながらも、ここが入場口であることを思い出す。コロシアム風の会場なので相手は反対側の入場口のはずだが、試合開始直前になんでいるのであろうか。不思議になったのでホワイトボードを取り出す。


 『黙れ、地方の負の遺産』


 メイちゃんの一撃 → 魚の心をえぐった! 魚は片膝をついた。世界の声は魚男の濃いすね毛が気になった! 


 『お前のゲートは反対だ。さっさと迎え。魚類」


 メイちゃんの追撃。若干常識的な言葉にリアルな魚着ぐるみは立ち上がる。


 「とにかくだ。貴様の様なロートル着ぐるみに、この俺、ニュージェネレーションの着ぐるみが負けないと宣言させていただこう……」


 無い髪の毛をふぁさーとさせる仕草をして背を向ける。

 そこにメイちゃんのヤクザキックがさく裂。


 『イラついたからやった。後悔はしていない』


 抗議の声を上げる魚を踏みつけにしてメイちゃんはステージに上がる。


 「メイちゃん! ファイトだよ! そして、僕、とぉとぉ君だよ!」


 観客席から賭けのチケット片手に無料配布のメイちゃん団扇を持ったとぉとぉ君から檄が飛ぶ。

 メイちゃんは事前に指定されていた舞台中央の立ち位置まで来ると腕組をして首を回す。可愛いピンクの雌猫の外見に似合わず武闘派アピールである。そこで会場は沸く。半分笑っているが。


 「ぜぇぜぇ、まっまたせたね。れでぃ」

 『きもっ』


 ホワイトボードを見せつけ。そしてメイちゃんは首をかしげる。そしてホワイトボードに追記する。


 『きもっ。そしてきもっ。( ´Д`)キモッ』


 足りなかったらしい。ホワイトボードを掲げて会場をあおる。


 『魚、きもいよな!』


 会場に詰め掛けた神々の視力は計り知れない。なのでくっきり見えている。なので。


 「「「おー!!」」」


 謎の盛り上がりである。


 「ふっ。センスのない奴らだ。俺とお前、どちらが愛されキャラか今ここで証明してやろう!!」


 魚の宣言。そのあとに会場に倍率がアナウンスされた。


 うぉっしゅ平田:1.2

 メイちゃん:18


 『おい。お前ら。どういうこと?』


 ホワイトボードを掲げて観客席をにらむメイちゃん。神々は全員一斉に目をそらし隣の席の神と会話を始める。


 『ちっ』


 メイちゃん。そういう発言だと思います。原因。


 【では2回戦勝負内容を発表します】


 女性のアナウンスに会場はシンと静まり返る。


 【前半:バトル、俺の一撃を受けてみろ! 男の一撃勝負!!!】


 うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


 湧き上がる客席。

 男の一撃勝負とは、同時に一撃を見舞い合う男の勝負である。無論技をかわすのは反則で即時負けになる。


 【1分後に開始します。双方準備開始!】


 アナウンスに従い、魚ことウォッシュ平田は水を纏いその水を口の先圧縮を始める。高水圧弾の様だ。

 対してメイちゃんは目を閉じ、神が設置した着ぐるみのとある機関に集中する。


 「あれは! 新型メイちゃんエンジンが発するシークレットモード! 赤い粒子で速さ3倍の特殊技! ……あ、僕とぉとぉ君だよ! そしてあれの設計者だよ!」


 神の解説を耳にメイちゃんは赤い粒子を纏い、ツメに集中する。


 『みろ! レインボークローだ!』

 「メイちゃん! 説明ありがとうだけどそれ! マジカルな光線技だよ? どうやったかわかんないけど肉弾戦の血まみれ武器のツメはちょっと違うよ? そんな風に僕とぉとぉ君は思うんだよ!」


 とぉとぉ君の叫びもむなしくメイちゃんはウォッシュ平田から十分距離を置いて腰を落とす。


 「余裕だな。俺の技が遠距離技だと知ってその余裕か?」

 「メイちゃん! 距離詰めて!!」


 メイちゃんはふうとため息を吐き腰を上げると、手招きするように挑発を行う。

 「ほう」

 ウォッシュ平田の目に鈍い光が宿る。


 【開始10秒前】


 互いに腰を落としてにらみ合うマスコットキャラクター。


 【5・4・3・2 ……え? 朝ごはん? お爺ちゃん、さっき食べたでしょ。 ん? ああ、アナウンス? えっと1! 開始!】


 程よく緊張感が抜け落ちたところで開始の合図。

 合図とともにウォッシュ平田は高水圧弾をメイちゃんに放つ、当たる。誰もが水弾に弾き飛ばされ壁にめり込むメイちゃんを想像した。当のメイちゃん以外は。メイちゃんの中の人は思わず邪悪に笑った。激突の瞬間。赤い粒子が水を押し返す。そして爪の攻撃を想定して左右に開かれたメイちゃんの腕は水弾をものともせずウォッシュ平田の懐に飛び込むと、姿勢を下げ打ち上げるようにツメを下から3連撃で振り上げる。右・左・右の3連発である。


 突き上げられたメイちゃんの右ツメを見てとぉとぉ君が叫ぶ。

 「いやだ! もう二度と猫島の奥の青猫や、ビーチになぜ沸きまくってるタコメ〇トを狩るだけの時間を過ごしたくない!!! とぉとぉ君の心はあれで折れたんだよ!!!」


 どこぞのオンラインゲームプチ情報でした。

 タイガ〇クローという技が最強の経験値効率をもたらし、もてはやされていた時代のお話です。


 残されたのは3枚におろされたウォッシュ平田と爪を収めて腕組をするイケメン雌猫。

 その後ウォッシュ平田は蘇生班によって蘇生され2回戦に入った。


 【では、第二回戦! 愛想を振りまけ! 幼児20名の支持を得るのはどちらだ! 対決!!】


 ……ウォッシュ平田の血に染まった会場。そこに現れた幼児20名。

 トラウマ物のの光景である。

 引率の先生がおこってらっしゃる。当然である。

 その後大会役員が引率の先生をなだめすかして会場を清掃ファンシーな装飾を施して再開された対決はあっさりとメイちゃんに軍配が上がった。ウォッシュ平田から逃げる幼児。颯爽と助けに現れるメイちゃん。幼児メイちゃんから離れなくなる。を繰り返した結果、20対0。


 「俺はニュージェネレーションなのかでも最弱。きっと、第二第三のニュージェネレーションが……ってきけよーーー!」


 敗者の弁でした。

 勝者メイちゃんは『無駄な時間を過ごした。ん? 写真か? いいぞ。む、そこの幼児も一緒に入るがいい』とホワイトボード片手にファンサービスをしてダンジョンに帰っていった。

 何この子、男前……。


 さて、その時ダンジョンでは。。。。

 デス・マーマン「新キャラでこの扱い! 魚的に! 魚的にぃぃぃぃ!!!」

 暗黒竜先輩「ガオ(うぇるかむ!)」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る