第61話「あ、どうもこの度悪役になりましたXXXと申します」
みんな! こんにちは!
僕はこの間生まれた悪役でXXXXって言うんだよ!
……あれれ? フィルターがかかっちゃったよ。参ったな僕が作った術の影響かな? ん? 術がなんだって? ああ、それ? 生まれたての僕だけど術に関する知識は豊富だ。多分昔の僕(もうその存在は消えているけど)が世界に残した情報なんだけどね。
で、術なんだけど僕は『神様封じ』って名付けたんだ。炊飯ジャーに封印する術は違うよ。れっきとした結界だよ。……ん? なんちゃら白書? 何だいそれ?知らないよ! もう! 話が進まないな! 名前がどうだとか関係ないじゃん!!
僕の術はすごいんだ、4級以上の力を持った神様を通れない様にしたんだ。世界って神界からは無数に穴で繋がってる様なものなんだよ。僕の術はその穴を作る世界の構成情報に介入して穴を小さくしているんだ。だから、力があればあるほど入るためには世界を壊す覚悟がいるんだ。だから彼らはこの世界には介入出来ないってことさ。
うふふふ、この術の強度は1級神を止めるほどの力があったんだよ! いや、正しく言うと介入出来たんだろうけど、するとさっき言ったように【世界が崩壊する】可能性が高いから、介入しなかったのかな?でもそれは僕の術がよく出来ていることを証明しているという事だ。どう?悪役としてこの上なく怖いでしょ♪
ん? 悪役なんて言って、いつもの『正義の反対の正義』とか言うんだろうって?
ぷぷぷぷ、なにそれ? ちょーださ(笑)
僕たち悪役はね。れっきとした悪だ。基準のない正義? あるよ。明確に。
『神様がこの世界を維持したい』って言ってるんだそれが明確な正義さ。
明確に反抗するのは悪だね。それ以外はグレーゾーン。
そう考えると僕達も立派な悪で、その上神様かもしれない!! 崇めて!! ん、邪神? お、その人がいた。邪神様、ご加護を!!
あー、ダメだった邪神様の加護が結界に挟まっておりてこなかった(笑)
やっぱり僕は生まれながらの天才だね!
ん? まずは何をするのかって?
決まってるよ。
【人類を滅ぼす】よ。
僕たちを生み出すなんて正義に反するじゃないか、だったら僕達も悪役を受け入れて苦しんで滅んでもらうよ。
それが僕達を生み出した攻めてもの償いじゃないかな(キャピ)
じゃあ、もうそろそろ良いかな?
世界の声君、あとよろしくね。
あ、変なちょっかいかけて来たら…………………………君から消すよ。
・・・
・・
・
格闘大会3日目。
タヌキチは15階層にいた。
やる事は山積みだった。
オークの派遣農家が頑張ってはいたが回っていないなので、スケジュールに合わせた作業の中で遅れを全てタヌキチがフォローしていた。
大会で見せた空中殺法でムフルの木のお世話をし、高速の抜き手で芋を植え、その小さな手でトウモロコシに魔法力を通す。
作業が終わり夕暮れ時期になりお食事処マールを仮に預かるマールの兄弟子イスコの所へ行く。出された料理を完食し、ダンジョン作物を所望する。
イスコは何故だか悲痛な表情のタヌキチを不審に思いながらも多めに芋を渡す。芋を一つ齧りながらタヌキチは漠然とした不安に駆られる。あゆむとの一戦から不安が、危機感が止まらない。ただ、こうやってダンジョン作物を食べている時だけ、何故だか安心できるのだ。
「キュウ(俺が分からない。この不安が分からない。この恐怖が分からない。居ても立っても居られない……帰りたい………でも、この世界で何かが起こっている気がする……怖いよ……)」
涙を拭きながらトウモロコシに噛り付く。優しい甘味がタヌキチを包み込む様でとても心地よかった。今日はもう寝て、明日も一生懸命頑張ろう。体を動かし、作物の育成に名一杯気を遣おう、そうすればこの漠然とした不安から逃れられる。
タヌキチは女性冒険者チームの後について女風呂へ向かう。だって寂しいのだもの。
……結界さんは空気を読まなかった。
「キュウ(がっでむ! 結界のくせに生意気!!)」
「なんだ風呂か? よし俺が居れてやろう」
ガチムチのモヒカンとカラフルアフロの筋肉コンビがタヌキチを拾い上げる。
「キュウ(いやだ! なんかこいつら濃い! 何か洗脳されるような気がする!)」
「元気だな。ナイスアフロ!」
アフロはタヌキチにウィンクするとサムズアップ。そして何故だかアフロが揺れる。
「キュウ(やばい! あのアフロ、意志を持ってる! 地球外生物被ってるこの人!!)」
タヌキチは楽しい人達に囲まれて不安を忘れる…………。
「キュウ(いやいやいや! 今すっげー恐怖!! そして不安!!)」
アフロに癒されたタヌキチはやがて自分もアフロにしたくなる……。
「キュウ(なにそのアフロ押し!! いやだから! 大変そうな髪形嫌だから! てか、地味に洗脳しようとするな!!!)」
アフロに聞いた、日常生活で大変な事は? 『あ?風呂!』
「キャウ(ドやったよ! この人、つまらないおやじギャグでドやってるよ! まって! そこのアフロの人! 美容師連れてくる算段いらないから! どっ動物虐待反対! だれかーーー!)」
賑やかな15階層でタヌキチの不安は薄れてゆくのだった。
「キャウ(……きれいな締めじゃないし、僕何も救われてないよ?)」
だった。以上。今日はおしまい。
「キャ………」
≪本日のダンジョン農家!はこれにて終了となります。またのお越しをお待ちしております。≫
「キャウ(強引な締めだよ?)」
タヌキチ。次話からアフロ決定な。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます