第24話「魔法名ってなに?」
「よく来た友よ!」
セルをみたサントスの表情が歓喜に沸く。
助っ人が来た!
「あ、宜しくお願い致します。自分、モンスター素材の査定しますので……」
うん。そうだね。モンスターを捌く手伝いはしないそうです。そこの所どうでしょうかサントスさん。
「うん……そっか……そうだよね……モンスターに配布する食事札、均一だと不公平だしね……」
項垂れるサントスに何をかを感じたセルだが気にしない事にした。
「サントスさん、マールさん頑張りましょー!」
「うん、よろしくね!」
「よろしく……でも……暇なとき手伝って……ね?」
もじもじしながら言うサントスだった。
余談だがセルはサントスを手伝う事はなかった。あからさまにマールの方が忙しかったからだ。そちらを手伝うセルであった。
「……」
「どうしたのだ、サントス」
「なんで師匠がいるんですか?」
モンスターを捌く人が増えました。
「ふむ、貴様を励ましてやりに来たのだ」
「本音は」
「チカリがスパルタモードに入ったので逃げに来た。ついでに貴様を修行と称していびりに来た」
「この筋肉ダルマ!!!」
こうしてサントスの作業は遅々として進まないままだった。
「これでお酒作るんですか?」
「うむ。まずはこれから砂糖を作ろう」
ジュルットを豪快にかじると白髪のドワーフ、グールガンは目を光らせて言う。
すっかり馴染んでいるグールガン。
今回は地上から大樽を分解して持ってきている。酒を作る気なのだとか。
その為グールガンはアユムの許可を得て製造所建設予定地を確保した。
「そういえば、16階層によさげな木材があったな、取りに行くか……」
白髪のドワーフグールガンは顎を撫でつつ師匠たちの元へ歩いて行く、人材確保のためのようだ。
「よっこらせっと」
アユムはジュルットを片付けると鍬をもって畑を耕しに出かける。
そんな様子をマール専属猫ことアームさんは呆然と眺めていた。
活気の出てきた15階層。
そこはもはや何も存在しなかった頃の15階層ではない。
14階層に延びる階段を眺め続けた日々はすでに遠く。アームさんの記憶はいつしかモンスターとして従順だったころの記憶に薄いガラスをかぶせ、その上に成り立っているようだ。
だからモンスターとしての自分が薄いガラスの下に居る。
アームさんとしての自分はそのガラスの上でアユムたちと戯れている。楽しい。その楽しい時間にガラスの下の自分が吠える。
『モンスターが人間となれ合うのか。滑稽だな』
ガラスの下の自分は冷たい瞳、冷たい表情。
いつからだろうか。そいつは白く染まっていった。
アームさんは本来奇麗な赤であり、現実でも赤い毛並みだ。
ほどなくアームさんの支配する階層で白い猫型モンスターが出てきた。
アームさんは震えた。
まるでそれは、自分が、モンスターとしての自我が出てきたように思えたからだ。
大事な日常が壊れそうだ。
そう、まるでこのガラスが割れて、すべてがモンスターの自分に飲み込まれそうで……。
そう白い自分に……。
「アームさん。リッカだ」
「にゃあ(師匠! あんた神様や!!)」
おい。
「にゃにゃぁ~(世界の声がシリアス(笑)やってるけど、世の摂理は一つ! 美味い物こそ正義!!!)」
『がう』からすっかり『にゃ』に移行した駄猫はシリアス先輩を嘲笑してる。
シリアス先輩はさみしそうに帰っていった。
空気の皆さん毎度申し訳ございません。うちの駄猫が……。
タイトル回収。
魔法名:体の構成上適性のある魔法を現す文字。基本的に誕生後魔法神に祈祷し適性ある者が名前の一部に1文字頂く。
例)賢者の娘:アリリィ・ザ・アイノルズ 「暗黒魔法」以外「全魔法適性」を示す文字「ザ」
アユムの地方では魔法神信仰が薄いため魔法名を持つ人間が少ない。例がとしては魔法おたくのギュントル師匠。ギュントル・エ・マッジ。「エ」「重力魔法」を使える文字。ちなみにアユムも調べれば岩石魔法の特性文字が出ます。文字を頂ける事は非常にレアなことです。
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