シチリア島奇譚

作者 橋本圭以

夜陰のなかでも力強く生きていく人々

  • ★★★ Excellent!!!

シチリア島といえば、地中海を望む美しい景色が印象的です。文明の交差点でもあり、そして、「シチリアの晩祷事件」など、おどろおどろしい事件の舞台でもあります。

そんなシチリアの島で、青年ラウロは、パレルモ大司教の副葬品を盗み、大金を手に入れようと企みます。ところが、神の罰であるのか、仲間に裏切られ、毒を盛られ、どん底の人生を行くことになります……

静かに、だけれど確かなる、自己肯定感を得たい方にオススメの作品です。

というのもこの作品、主人公は盗賊だし、出てくる人はほぼ悪人しかいないのですが、命の尊さを書いている、と思える作品なのです。
もちろん、ラウロをはじめ人を騙し利用したり、人を踏みにじるような人たちばかりの中で、様々な人が悪あがきして、それでも「生きていく」という様を、作者ならではのフラットな目線で描写しています。
第16話で、「人間に、簡単に死なれちゃ困るんだ。」ととある登場人物が言いますが、まさにそのとおりで。
この作品は、全体として晩祷が行われる夜陰の印象がありますが、そのなかでも力強く生きていく人々の姿が印象的でした。

この作品を読むと、自分も、彼らのようにバイタリティを持って生きてみたいなあ、と、ふと思います。

暗いけれど元気になれる、そんなまさに「文学」らしい素晴らしい作品ですので、ぜひご一読を。

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