第85話
敵に
彼らは主にM16A2ライフルやライセンス生産されたUZIやMP5短機関銃等で武装している。装備の質は中国軍崩れどもより劣るが、数で攻められるととても厄介だ。
勝連は正面入り口の受け付け用のデスクまで移動すると、M14ライフルを連射する。本来、長銃身のライフルは室内戦には向かないが、敵のアサルトライフルや短機関銃よりも長い射程と高い威力を活かし、一方的に撃ち抜く。
敵は、ただ黙って撃たれるだけで終わらなかった。何人かが短連射を繰り返して牽制しながら、勝連がいる地点に近付く。
接近されてしまうと、長銃身のライフルは取り回しで不利になった。勝連は一度遮蔽物に身を隠すと、武器をM14からUMP45短機関銃に変更する。
左手でM14のハンドガードを保持しながら、右手一本で短機関銃をフルオート射撃。至近距離からの四五口径弾の弾幕は強烈で、近付いた敵の肉片や鮮血を派手に撒き散らす。
「きぇっ!」
勝連が、突然の掛け声に短機関銃を向けようとするが、その時には接近されていた。相手がデスクを飛び越えながら蹴りを放った。右手のUMPが蹴り飛ばされる。
着地した相手が、持っている青竜刀で斬りかかってくるのを、咄嗟にM14ライフルのハンドガード部分で受け止めた。アルミ合金のボディに、刃が食い込む。相手は、左手を柄から離し、匕首を抜いた。
その瞬間を狙い、勝連が相手の膝を蹴る。硬い脛で、膝の皿を割った。体勢が崩れたところで、ライフルに食い込んだ青竜刀を、テコの原理を利用して相手の右手から剥がす。そのままの流れでM14ライフルの銃床で、相手の足を払った。
転倒した相手が匕首を突き出す前に、再度銃床で胸を突いて床に釘付けにする。右手でスプリングフィールドM1911をホルスターから抜いて、眉間に二発撃ち込んだ。匕首を握った手が、力なく床に落ちる。
さらに現れた敵にもM1911を発砲。胸や頭に着弾し、短機関銃を持ったヤクザが二人倒れる。
だが、まだまだ敵は多くいた。特に、中国軍崩れのブルバップ式ライフル持ち達が厄介だ。
『勝連』
ここで、通信が入った。ヘリの副操縦士として参加している
「何だ?」
『苦戦中ではなくて?』
「見えているのか?」
『正面出入り口の方を見て』
言われた方向を見ると、自動ドアのガラス越しに、闇夜にうっすらと浮かぶ漆黒のヘリコプターが見えた。闇に同化して輪郭はぼんやりしているが、ローターの起こす風で周りの木々の枝葉を揺らしている。
「今確認した」
『援護は必要?』
「是非とも」
『あと三〇秒耐えて』
「分かった」
勝連は、なおも攻撃してくる敵にガバメントを撃ち返しながら、応える。
ブラックホーク内で、今まで副操縦士の席にいた邑楽が、機体後部の兵員輸送用スペースに移動した。
「
「了解!」
ウェアラブルコンピュータを操っていた
その間に邑楽も自身の武器を取り出した。後部に置かれていたライフルケースの中から、一丁のライフルを取り出す。銃身と機関部の間に設けられたヒンジをいじり、折り畳まれていたそれを展開した。全長約一・七メートルの巨大な銃となる。
ロシアKBP社の
ハンドガード下の二脚を展開し、先程までライフルが収まっていたケースの上に置く。片膝立ちで狙撃体勢を整える。
邑楽はヘルメットの上から微光式暗視装置と赤外線映像装置を一体化したAN/PSQ-20視察装置を装着した。右目で視察装置を通し、OSVー96のスコープを覗く。これで、建物内の熱源――つまり、銃を持った人間を、識別可能となった。壁を透過し、銃を発砲している人間の周囲が赤く表示される。
「敵が外に展開! 中央棟からです!」
通津が邑楽に告げた。
邑楽は一旦スコープから目を離し、
「数」
「五人! 全員、アサルトライフルで武装! 情報にあった元空挺部隊ではないかと!」
と、通津と問答を繰り広げた。
敵がヘリに向け、射撃を開始する。燃料タンクやローターを破損したら厄介だ。
「私はこれからアルファへ援護射撃を行う。外の敵は任せる」
「はい!」
通津が、MAG機関銃を地上に展開した敵に向け、引き金を絞る。7.62mmNATO弾が発射され、発射炎が夜の闇の中で赤く燃える。MAGに繋がるベルトリンクには、五発に一発の割合で
一方で、敵側からしたら、弾道が見えることで自分達を狙っていることが実感できてしまい、心に恐怖が生まれる。冷静な射撃を行えず、散り散りになったところへ、大量の弾丸が追いかけてきた。その弾丸が追いつくとその身体に穴を穿つ。
ただでさえ永く放置されて荒れていた芝が、弾痕と血痕で滅茶苦茶にされた。
その間、邑楽が狙撃に戻った。最初の的を決めると、引き金を絞った。轟音とともに、銃口のマズルブレーキから抑えきれない程の発射炎が上がり、大口径の弾丸が発射。病院の壁を貫通し、目標へ命中する。
勝連がちょうど撃ち返していたタイミングで、二階の中国軍崩れの一人の頭が、割れたスイカの如く弾けた。頭を失った死体が、血を噴き出しながら一階へ落下する。
「え?」
あまりにも常識外れな現象に、敵が一瞬動きを止める。
そこへ、二発目が放たれた。壁を貫通した弾丸が、中国軍崩れの胸に命中、上半身を吹き飛ばした。並のスプラッタ映画が可愛く見えるレベルの肉片と血の雨が、周囲に降り注ぐ。
「うわあぁぁぁ!」
ついに、敵の中から悲鳴を上げる者が現れた。その内に、三発目が撃ち込まれ、新しい被害者を生み出す。
その隙に、勝連は再度M14ライフルを装備。浮き足立った敵を一方的に撃ち、反撃も許さず殲滅していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます