第79話
救急患者搬入口から侵入した
この病院の待合室は、二階から吹き抜けになっており、エスカレーターが配置されている。混乱を生まないためか、上昇用と下降用で二カ所に分かれ、それぞれ離れた位置に設置してある。
そこは、敵の武器庫と化していた。ロクなことに使われないであろう武器弾薬が山のように積まれている。そこを護るために四人の中国軍崩れがいた。無線機で忙しなく北京語でやり取りしている。
まず、明智が仕掛けた。持っていた軽機関銃をフルオートで発砲。二〇発近くの弾薬を浪費して、三人の敵を蜂の巣にする。
残った一人が明智にライフルの銃口を向けるが、引き金を絞る前にルナのG36Cカービンで頭を撃ち抜かれた。
「マコト、もう少し絞って。弾薬がもったいない」
ルナが苦言を言ったところで、正面玄関の見張りが駆けつけてきた。
「
駆けつけてきた見張りは三人。
「上を取られたら厄介だ! 二人で援護しろ!」
「了解!」
勝連の命を受け、雲早とルナの二人は、近くのエスカレーターを駆け上がる。エスカレーターは故障しているのか、動いていなかった。
そこへ、敵の増援が沸いてきた。明智達が侵入してきた通路の逆方向から、一階、二階ともにワラワラと現れる。そいつらは、真っ先に雲早とルナを狙い始める。
「マコト、弾幕だ!」
「分かった」
明智はSPWの連射を再開した。当てるのではなく、相手に狙いを点ける暇を与えないための、制圧射撃。一階と二階に分かれているため、太刀掛のOA-15XSカービンや勝連のUMP45短機関銃も一緒に弾をばらまく。
撃ちまくっているうちに、何発かが敵の武器庫に命中し、武器の山の一部を崩した。箱が落ち、蓋が開いた拍子に明智達が潜む場所に手榴弾が一個転がってきた。
一瞬ギョッとなったが、幸いにも安全ピンが付いたままなので爆発はしない。そもそも、銃弾が当たった程度で暴発する榴弾など、危なくて持っていけるはずがない。基本的には外装は丈夫で、起爆剤が点火された時に中から爆発するのだ。
「俺にいい考えがある」
ここで、勇海が何かを思い付いた。
「どうするんだ?」
「こうするんだ!」
勇海が足下に転がってきていたM26手榴弾を拾うと、安全ピンを抜いた。
「身を隠せ!」
警告しながら、勇海は手榴弾を武器の山へ投げ返した。
明智達は銃撃を止めて慌てて通路に退避する。
四秒後、手榴弾が爆発した。
爆発炎が他の武器弾薬を誘爆させる。
明智は背中でその爆発の余波を感じた。建物全体が大きく揺れる。その轟音はまるで雷鳴だ、と思った。地面が揺れ、明智は立っていられなくなる。
幸いにも建物は爆発の揺れに持ちこたえてくれた。武器弾薬の山の近くにいた敵の何人かは、不運にも爆発に巻き込まれ、爆心地に近い方のエスカレータが崩落した。
「シュウ、ルナ、無事か?」
勇海が、無線でエスカレータを駆け上がっている最中だった二人に尋ねる。
少しの間の後、
『なんとか』
と、返答が来た。
『すでに二階に上っている。これより二階の敵を掃討する』
「頼んだ」
勇海が二人の報告に応える。
「今、チャーリーから連絡が入った」
勝連が口を開くと、
「
と、嬉しい報せを伝え、
「敵は混乱している! 一気に攻め込むぞ!」
と、周りの三人に号令を掛けた。
勝連と太刀掛が、それぞれM14ライフルとショットガンに武器を持ち替える。
一方、明智には問題が発生していた。持っていたSPWが、爆発の余波でどっかに吹っ飛んでしまっていたのだ。
仕方なく、明智はB&T MP9短機関銃を構える。グリップは左手で握り、右手はフォアグリップを軽く握りつつ、いざという時には刀か警棒に手を伸ばせるようにする。
勝連は、なおも通信機に向かって叫ぶ。
「各員に通達! 捕虜の奪還に成功! 繰り返す、捕虜の奪還に成功!
これより、アルファとブラボーは作戦を『陽動』から『殲滅』へ移行する! 敵の一人たりとも、明日の朝日を拝ませるな!」
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