魔導戦記リリウス☆セレナーデ【完結】

作者 鉄機 装撃郎

鋼鉄纏いし百合の花、相対せしは鬼の群れ

  • ★★★ Excellent!!!

第壱楽章読了時点でのレビューをお許しください。

この作者様の作品をどれか一作でも読んだことがある方なら、どんなテイストで書かれていらっしゃるかピンとくることでしょう。

『重い』のです。それは物理的な重量でもあるし、雰囲気や空気感でもあるし、登場人物の生い立ちや過去、発した言葉でもあります。
勝手ながら『鉄機節』と名付けたそれらは、肌をひりつかせ、精神を摩耗させ、呼吸を浅くさせ、どろりとした汗をかかせます。言うなれば文字、文章、作品そのものを用いた『暴力』とも表現できるかもしれません。

ただ、辛くとも、読んでしまう。
怒涛のように押し寄せる絶望の数々に打ちひしがられながらも、その先に救いがあるはずだと信じ、藻掻くように読んでしまうのです。
これは、この作者様だからこそなせるひとつの牽引力に他なりません。これは身に付けようとして身に付けられる類のものではないと思います。



前置きが長くなりましたが、本作のお話をしましょう。
本作者様の描く物語は(例外こそあれ)オッサンが渋くてかっこいいのです。
だがしかし。この作品はどうでしょう。

主人公はふたりの女の子、百合の香りを仄かに漂わせるふたりの女の子が主人公なのです。
最初は「ん?」と思いました。氏の今までの作品のテイストと女の子がどうにも結び付かない。読み始めるまで一体どんな化学反応を生み出すのかと期待が高まります。

中身はもっとすごかった。
今までの文章が質量を持って殴り掛かってくるような感覚、物理法則に基づいた緻密な情景はそのままに、ちゃんと女の子たちが生きているのです。地の文とふたりの会話、その雰囲気の乖離さがまた不思議と作品の牽引力となって活きる。

特筆すべきは戦闘シーンでしょう。今までの同作者様の別作品における戦闘シーンの迫力はそのままに、いやそれ以上に表現され、それに搭乗せざるを得ないふたりの少女の楽観さ、そして焦り、生への渇望とも取れる心の有り様が読む側にも手に取ったように伝わる。
ヒヤヒヤとか、ハラハラとか、そんな生易しい言葉とは違います。生身で戦場に立たされたような感覚。それがこの作品を読んでいく内に僕が感じたものです。

恐らく、続きを読んでいけばまた絶望に苛まれるのでしょう。恐らくですが。
それでも足掻いて物語の波を掻き分けて進む。

アヤカとハナ、そしてリリウス。
彼女たちが最後に立つ場所は、希望に満ちているはずだと信じて。

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