第178話 豆好きか?

 そんなわけで店に着いたわけだが…

「何を頼んだの?」

「エビのトマトソースパスタ…」

 またか…

「エビ嫌いだよね?」

「食べれない」

「トマトも嫌いだよね?」

「食べない…トマトソースは食べるよ」


 結局、他にイノシシ肉のパッパルデッレきしめんみたいなのも頼んで。

「あの~肉料理って、もっと安いのありませんか?」

『彼女さん』一応、僕の財布の中を気にはしている。

 シェフが一人で回している小さな店でシェフ拘束である。

「……豆と…豚の…それください」

 インゲン豆と豚の内臓をトマトで煮込んだ料理が運ばれてきた。

「……食べてみる…」

 ブタの内臓を舐めて

「ダメだ…」

(だろうな…)

 そもそも、腸とか心臓とか言ってたもんな…なぜ頼んだ?

「豆は食べる、おいしい」


 インゲン豆を全部食べて、僕は肉を全部食べた。

 よく豆食う女…

 食事中、店に持ち込んだ「豆の燻製」をゴソゴソ食っているのだ。


(豆ばっか食ってるな…)

「あのね…後で黒豆持ってきたから食べて…でも自分の車に忘れてきたから…忘れないように」

 手の甲にアイライナーで『まめ』と書いた『彼女さん』


『まめ』と書いた手で豆を食うんだな…。


 続く…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る