第87話 花嫁じゃないの?

 昔の彼女さん家のトラ猫トラちゃん。

 去勢はしたけど花嫁さんを迎えたいと彼女が言いだした。

 そんなわけで、捨て猫の里親探しに出向いて、長毛種の猫さんを譲り受けた。

 命名『ハナちゃん』花嫁のハナちゃん。


 ところが、トラちゃんはハナちゃんがお気に召さないのか、怒ってばかり。

 どうにも相性が悪い。

 ハナちゃんは臆病な猫で、いつも隠れるように歩いていた。

 とても賢い猫だった。


 そんなハナちゃん、避妊手術の日。

 車で僕が病院へ連れて行ったのだが、病院へ入るなりガシッとしがみついて離れない。

 普段は遊ぶとき以外割と距離をとっていたので嬉しいような気持ちになった。


 手術のために毛を駆る看護婦さん。

 長毛種のハナちゃん、なんだかマヌケな感じに仕上がった。


「さて…あれ?…うん…避妊だよね?」

 先生が看護婦さんに聞く。

「はい」

「この子なの?ハナちゃんだっけ?」

「はい…ハナちゃんです」

 僕が答えると。

「あれ?間違えたかな?避妊になってるけど」

「避妊ですけど」

「えっ?ハナちゃん男の子だよ…ほら」

「えっ?」


 一同絶句である。

 去勢に切り替えて日を改めることになったのだ。


「なんでハナちゃん男の子か!!」

 彼女の怒りっぷり。

「トラちゃんの花嫁さんにならんないってのさ!! オカマが2人になるのか!!」


 どうも長毛種は、たま~に間違えられることがあるようだ。

 どうりでね…オス同士だから縄張り意識が強かったわけだ、相性の問題ではない。


 去勢を終えたハナちゃん。

「なんで2回も毛を刈られんくちゃならんのさ!!」

 ハナちゃんはトラちゃんの弟さんポジションにジョブチェンジしたのである。

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