第47話 『通』その3

「あのさ…黙ってたけどさ…俺、今年の夏、家出したんだ」

「家出?44にもなって?実家から家出?」

「あぁ…ていうか失踪?」

「失踪って…俺の横に今いるじゃん」


 どうやら『通』は家出したらしい。


「それで1か月連絡取れなかったのか?」

「ん?」

「いや…先月だろ?」

「ん?」

「えっ?オマエ、何日家に帰らなかったの?」

「1日だけど」

(失踪って…家出ってレベルでもねぇ…)

「ところで桜雪…オマエが飲んでるソレ、ちょっと貸してみろ」

「ジュースか?」

「あぁ…もしかしてアセスルファムKが入ってるんじゃないか?」

「えっ?なに?」

「アセスルファムKだ」

「うん…知らないし…どうでもいい」

「ダメだ!! アレはダメなんだ」

「なんで?」

「頭が良くなりすぎるんだ!!」

「ちょっと何言ってるか解らない」

「だから、アセスルファムKを飲むと、頭が良くなりすぎるんだ」

「夢のような成分だな、大量摂取したいのだが」

「ダメだ…アレはダメなんだ…よしコレは大丈夫だ…」

「良く解らないけど…オマエは、ガブガブ飲んでも大丈夫というか、むしろ飲め」


「それで…オマエ、一晩どこに行ってたの?」

「恐山…秋田県だ…」

「恐山?って秋田だっけ?」

「青森だ…行こうと思ったけど…秋田で1泊したんだ」

「うん…旅行じゃねぇか?」

「野宿したんだ」

「中学生みたいだな」

「怖かったんだ…とても」

「野宿くらいで怖い奴が、なんで恐山を目指したんだ?」

「話すと長いけど…墓参りに置いて行かれたんだ…俺…」

「うん…それで?」

「家族で行くもんじゃないのか普通…」

「うん…まぁ決まり事ではないがな」

「俺、それでキレてさ…なにもかも嫌になってさ…それでイタコに会いに行こうって」

「うん…やっぱ、アセスルファムKを大量に摂取した方がいいんじゃないか?」

「でも…一般道で行ったから疲れちゃって、それで秋田で野宿したんだ」

「公園で?」

「いや…車で寝た」

「うん…」

「朝起きて、コンビニ行って…それで、ソープに行ったんだ」

「うん…話がよく解らないんだが…」

「だからコンビニで朝飯食って、それで、そのままソープへ行ったの」


 行動が滅茶苦茶で良く解らない…。

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