第42話囚われた芸人編③

結局深夜に帰宅し、その次の日も早朝より、パチンコ店での勤務。

くたくたになった。

その日の晩に、速攻で商店会長からラインがきた。電話で話したいと。

こっちから電話してみると


「おさむちゃーん!大丈夫か?生きてるかー?昨日はお疲れ様やでー!」


第一声がそんな感じだった。もうかなり馴れ馴れしい。

「さあ、さっそく、カラオケバーにはいつ入れる?」


「◯日は仕事が早番で次の日休みなので、行けると思いますけど。」


「じゃあ今すぐ、カラオケバーの店長に電話して、ほんでどうなったか、折り返し連絡ちょうだい。」


そして、カラオケバーの店長に電話する。

「その日はオッケーですよ!来て下さい!」


「よろしくお願いいたします。」


「ほんで、うちの店のライター作るんですけど、そこに祝!ピン芸人原田おさむ。って入れさせてもらっていいですか?」


「はあ。僕でよければどうぞ。」


そして、また商店会長に電話する。

「ふむ。おさむちゃんのライター作るってか。よかったな!」


「いや、僕なんかでいいのかどうか。」


「おさむちゃんが、売れて来てる証拠や。それとなおさむちゃん。」


「はい?」


「おさむちゃん、赤いジャケット着てーな。」


「はあ?」


「おさむちゃん、見た目が地味!芸人に見えへんねん!」


「いや、もとからこういう人間ですので。」


「あかーん!こう商店街歩いててもさ。俺の方が目立つのよ。おさむちゃん、見た目の芸人らしさが全然ないの。」


「いやそう言われましても。」


「これからな、商店会のみんなでおさむちゃんを有名にさせていくの!まず俺とカラオケの店長で芸能プロダクション立ち上げるつもり。」


「はあ?」


「だからおさむちゃんは商店街歩いてるだけで、みんなが振り返るくらいの格好しないとだめ!赤いジャケット俺とお金折半してでも買おうや!」


「お金出してもらうのは申し訳ないです。赤いジャケットなら楽天で一万円以内でありますけど。」


「あ、ほなそれ!買って!注文して。ほんでとどいたら俺に写メール送って。」


「えええ?」


「カラオケバーに入るときまでに用意して!注文して!急がせて!」


半ば無理やり楽天で、赤いジャケットを注文させられる。

料金は、ジャスト一万円くらい。

次の日にも商店会長から電話かかってくる。


「おさむちゃーん!赤いジャケット届いた?」


「まだです。」


「急がせて!カラオケバーまでに間に合わせて!」


また次の日電話かかってくる。

「赤いジャケット届いた?」


「届きました。」


「写メ送って。」


「送りました。」


「ええやん。」


「はい。」


「これ、カラオケバーに入る時に着ていって!ほんで店長には、俺に買ってもらった。って言うて。」


「はあ?」


「そしたら、店長からも何かしてもらえるかもしれんやろ?それでいって!」


この人!強引すぎる。

そして、やり方が、なんか汚い・・・

しかし、これはまだ生易しい方だった。

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