第25話真実の口編⑬
バチン!
ブレーカーの電源をオンにした。
バリバリバリバリ!!!
なんの音だ!?
ついにぶっ壊れたのか?
そうではない、研磨機が動いて、玉を吐き出した音だ!
もうすでに上部に玉が空っぽで、そこに研磨機から吐き出された玉が一気に流れる音!
バリバリ!!!
さらに台の裏から溢れていた玉が吸い込まれていく、
ゴーゴゴゴ!!
物凄い地響きのようだ!
やがてその凄い音は少しずつ静かになっていく。心臓が動き出し、血液を体内に送り込んでいく。
みるみるパチンコ台から、貯まっていた玉がお客さんに払い出されていく。
「やっと、なおったんやな!」
立ち上がっていたお客さん達が、真っ二つに別れてパチンコ台に戻って座っていく。
まるでモーゼの十戒の、海が割れるシーンのようだった。
ブレーカーを立ち上げた僕は、ヘナヘナとその場にへたり込んだ。
疲れと安心から全身の力が抜けた。
そして研磨機から引っこ抜いた、ラミネートのような物体を手に持っていた。
それはパチンコ台に刺していた札だった。
それにはこう書かれていた。
「出玉が止まらない!」
思わずその札を床に叩きつけて、さらに踏みつける。
「止まっとるやないか!!」
ふと我に帰る。
そうだ、散々待たせまくったお客さん達の、お客さんの対応をしなければ。
「班長!向こうからお客さん達に謝っていってくれ!俺はこっちのお客さんから謝っていくから!」
班長と手分けして、待たせまくったお客さんに謝罪してまわる。
「ほんま!どんなけ待たせとんねん!」
「申し訳ありません。」
必死に頭を下げる僕。
最初は怒っていたお客さんだったが、
「お兄ちゃん、大丈夫なんか?」
「はい?」
見ると、僕のカッターシャツはビリビリに破けて、ズボンも研磨機によじ登って汚れまくっていた。
そして、僕の顔、顔が研磨機の埃をかぶり、まるで爆発したコントのような格好だった。
「とりあえず玉が出てきたからもういいよ。」
そんな僕を前にして、みんな許してくれた。
そんな格好だから、逆に救われたのかもしれない。
「お兄ちゃん!」
散々待たせた、あのおばあちゃんである。
大当たりした台の電源まで切ってしまい、さらに脚立まで持って支えてくれたおばあちゃんである。
「本当に申し訳ありませんでした。」
きちんと頭を下げる。
すると、缶コーヒーとおしぼりをくれた。
「もういいから。ちょっと休みや!あんた!」
ありがたくて、涙が出そうだった。
対応は下手くその下手くその最低な対応だったが。
必死にやった事により、それを目の当たりにしたお客さん達が、僕を許してくれたのだ。
パチンコ屋って、機械ばかりで営業しているけど、集まるのは人間。
人間の温かさ。こんな極限状態に知るのだな。
それでも、本気で怒って最後まで許してくれなかった人は、何人かいてたのは事実である。
(失笑)
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