皇記二六七八年
羽の月
1/24 煮込みハンバーグ
煮込みハンバーグ。
それはハンバーグの可能性の形。
完成された料理のハンバーグをデミグラスソースに入れて煮込むという、再調理を施した
ただでさえハンバーグはそれだけで美味いというのに、そんな事をしたらもっと美味くなるに決まっているだろう。
ハンバーグの柔らかでありながら肉の味をしっかりと感じさせるその身に、デミグラスソースの少し苦味を感じさせながらも溶けた牛肉と野菜とバターの旨味の多重奏を纏わせ一体化させるのだ。
ただ上からソースをかけただけではない。
ハンバーグの内部までその旨味を染みこませ、逆にハンバーグからも肉の旨味を引き出してソースへと調和させてある。
ハンバーグとデミグラスソースという別々の料理ではなく、煮込みハンバーグという一つの料理料理として完成させるのだ。
これは中々出来る事ではない。
普通ならばそれぞれの味が独立してしまう物だ。それを完璧なまでに一体化させている。
これが
また、煮込みハンバーグはそれだけでなく、更に半熟の目玉焼きを乗せる事で破壊力が抜群に増す。
やや濃い目の味になった煮込みハンバーグを目玉焼きの淡白な白身が中和し、とろりとした黄身は濃厚な旨味と足してくれる。
煮込みハンバーグと目玉焼き。この組み合わせは世界を狙える。いや、世界を超える味だろう。
そんな煮込みハンバーグだが、唯一、たった一つだけだが弱点がある。
可能性が高すぎるからこその問題点であり、それは克服するのがとても難しい。
一体どういう物かと言うと
ハンバーグのレベルがデミグラスソースより高すぎると、煮込んだ時にちぐはぐな味になってしまうのだ。
質の良い牛肉と香辛料をふんだんに使ったハンバーグは肉々しくてとても美味いのだが、そのハンバーグは中を半生の状態にして香辛料をかけてで食べるのが一番美味い物であり、ソース類をかけるのは逆に味が落ちてしまう。
それと同じで、デミグラスソースに入れて煮込むと中まで火が通ってしかって硬くなるのと、ふんだんに使われている香辛料が抜けてソース側に移ってしまい、結果的にハンバーグの味が落ちてしまう。
なので、実は煮込みハンバーグのハンバーグはそこそこのレベルの物で十分だ。
牛肉100%ではなく、6:4ぐらいの合挽きで尚且つ高級な物でなくていい。
そう、煮込みハンバーグは安価な物で作ったほうが美味いという、料理の可能性の形なのだ。
程々の物のほうが美味くなる料理など、誰が予想するだろうか。
煮込みハンバーグ。
その可能性は料理の世界に見事な一刀を与えるだろう。
これからの料理業界の移り変わりが楽しみだ。
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