8/15 鯨肉

スーパーで『鯨の焼肉』という缶詰があったので、試しに買ってみた。


鯨とは海に生息する巨大な生物であるが、魚類ではなく哺乳類の仲間らしい。

その証拠に魚とは明らかに違う形のヒレを持っており、えら呼吸ではなく肺で呼吸をすると言う。


鯨はこの国で古来より食べられてきた動物だが、近年になって国外からの圧力で鯨の漁獲に規制がかかっているらしく、以前より食卓に上る回数が減ったとの事だ。

私はまだ鯨の実物を見たことも無ければ食べたことも無かったので、いい機会だと思い缶詰を購入した。


鯨はカツや刺身やベーコンで食べられていたと聞いたが、缶詰というのは初耳だ。

しかも焼肉の缶詰というのは初めて見た。

少しワクワクしながらスーパーからの帰途に着く。


スーパーからは数分で家に着いた。

台所に入ったらすぐさま購入した野菜を冷蔵庫へ入れ、コップに麦茶を入れて飲みほし、一息つきながら椅子に座る。

そして、購入してきたばかりの鯨の焼肉缶詰を手に取る。


鯨。


まだ食べたことが無い食材だが、一体とんな味がするのか。

夕飯の時間までお預けを喰らうのは待ちきれないため、早速缶詰を布巾包んでから抓みを指で掴み、ゆっくりと引き上げる。

最近の缶詰は缶切りが無くとも抓みを持ち上げれば簡単に開くようになっているのがいい。布巾で包むのは万が一中身が飛び跳ねても周りを汚さないようにするためだ。


抓みが持ち上がったら指に入れる力を少し強めにして、そのまま上ではなく横にぐるりと巻くように蓋を開ける。

クゥキキキ

という金属同士が擦れる音がして、缶詰の封が切られた。

そこから香るは甘辛い醤油の煮物の匂い。この国でよくある味付けの香り。

蓋を8割程開けたら缶詰を傾け、中身を小皿へと移す。

さあ、鯨肉と初のご対面だ。

一体どんな外見をしているのか。

私にその姿を見せてみろ。


ボトン


…………肉だな。

年度のある茶色の液体に包まれた、肉だ。

ま、まあ、どんな肉でも焼いた後の外見は似通っている物だし、鯨だからと言って何か特別な形状をしているわけではあるまい。

重要なのは味だ、

海で生きる巨大生物の鯨は陸上の動物の肉とどんな違いがあるのか。

海中と陸上の違い。とても気になる。

果たして、どのような味がするのか。

茶色い液体に包まれた肉を箸で掴み、口へと運ぶ。


…………味が濃すぎて分からん。

酒と砂糖と味醂と醤油で味を付け、風味付けにニッキを使用しているな、

なんだか肉っぽい物を食べているのは分かるが、肉そのものの味が少なすぎて全然分からん。

というか、これは焼肉ではないだろう。どちらかと言うと甘辛煮と言ったほうが正しい。


……はぁ、所詮は缶詰という事か。

初めての鯨肉なので少し期待したのだが、こんな物か。

一つ186円だったのだ。まあ、こんな物なのだろう。

やはり鯨肉はちゃんとした物を買うべきだな。安易に缶詰で体験しようとしたのが間違いだった。

まあ、まずくて食べられないわけでは無いのが幸いだな。

いつかはちゃんとした鯨肉のカツや刺身やベーコンを食べたみたいものだ。

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