8/5 秋刀魚の干物
干物。
それは風の力を利用して作られる保存食。
基本的には素材の水分を抜くだけで干物になるのだが、出来上がり後の味に違いを持たせるため、塩水に漬けてから干したり、焼いてから干したり、煮てから干したりと様々な干物が存在する。
中には凍らせたり、灰の中に入れることで水分を抜くという変わった方法もある。
ベーコン等の燻製も素材の水分を煙で抜いているので、分類的には干物だ。
そして、干物と言えば魚の開きだ。
干物には貝や肉や野菜等があるが、尤も基本的な干物は魚であり、それも背から刃を入れて体を開いた物が一般的だ。
島国であるこの国は、そうして魚を保存食にしてきた。
肉類を禁じていた時代が一時的にあったらしく、食卓に上る主菜に尤もたる物は魚の干物だったと言う。
だからこそ、この国の魚の干物は安価ながらに一級品が多い。
特に秋刀魚だ。
秋刀魚の干物が良い。
干物と言えば鰺か𩸽と言われるが、私は断然秋刀魚を推す。
秋に大量に取れる秋刀魚はそのまま塩焼きで食べるのが美味いのだが、秋以外は干物がとても美味い。
そもそも、秋に取れすぎた秋刀魚を保存するために干物にしているため、旬の味そのままの旨味を凝縮させている。
大きさも鰺みたいに小さく無く、𩸽のように大きくなく、一人前としてちょうど良い。
さらに、この時期になると昨年の秋刀魚で作った干物は安価で提供されるようになる。
秋に新しく秋刀魚が捕れるため、昨年の秋刀魚はもう価値が無くなるのだ。
個人的には生よりも干物の方が好きなので、とてもありがたい。
このように、味も良く、大きさも良く、そして値段も安価な秋刀魚の干物は本当に良い。
そのままオーブンで焼いて、頭と尻尾以外全部食べるのが爽快だ。
勿論中骨も食べるぞ。
干物の骨は柔らかくなっているから噛み砕きやすいし、何より骨付近の身は味が詰まってて美味い。
という事で、最近の朝食はほぼ秋刀魚の干物だ。
これに納豆と味噌汁を付ける、なんともご機嫌な朝食だ。
今日も秋刀魚、明日も秋刀魚。明後日も秋刀魚。
ふふ、この時期は本当に秋刀魚日よりだな。
秋刀魚様々だ。
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