7/30 ハンバーガー
ハンバーグをパンで挟んだ食べ物がハンバーガーであるのならば、コロッケをパンで挟んだ食べ物はコロッカーではないのだろうか?
そんな事を考えながら、町外れにあるダイナーにハンバーガーを食べに来た。
ハンバーガーとは挽肉を丸めて焼いたハンバーグと呼ばれる肉をパンに挟んだ料理であり、米国の国民食と呼ばれるサンドイッチの亜種の事である。
何故ハンバーグが米国料理ではないのにハンバーガーが国民食になっているのかと疑問に思うだろうが、これは広大な国土を車で移動する際に長時間かかる場合が多く、運転をしながらでも片手で食べられる料理が発展してきたためではないかと言われている。
ハンバーガー以外にも、ホットドッグ、スラッピー・ジョー、ピーナッツバターサンド、ブリトー等の亜種サンドイッチだけでなく、ピザやフライドポテトやフライドチキン等の片手で食べられる料理が発展してきた。
運転をしながら食事をするのははしたない事のように思えるが、米国料理はこのように合理性を取った料理が多い。
そもそも国民性も合理性を求める場合が多く、過程を大事にするのではなく結果を大事にする。
要するに、美味しければ何でも良いのだ。
格式や伝統に縛られない自由の国らしい考え方だ。
まあ、それが良い場合だけでなく、悪い場合もあるのだがな…
その一例が、少し前に映画で話題になった匂いは後から添加出来るという事だ。
食べ物の価値はその大半が見た目と匂いで判断されており、いくら味が良くても見た目と味が悪いものは人気が出ない物だ。
分かりやすいのがカレーライスを皿の上で全部混ぜる事だ。
味は同じのはずなのに、全具ぐちゃぐちゃに混ぜたカレーライスは見た目が汚くなって食欲が涌かなくなる。
だが、逆にカレーの匂いは食欲を涌かせる匂いであり、目を瞑ってしまえば見た目が悪くても美味しそうに感じてしまう。
このように、人は食べ物を見た目と匂いで判断しており、過程がどうであろうと最終的に見た目と匂いが良ければ美味しいはずだと言う考え方が米国料理にある。
そして作られたのが、ハンバーガーの臭いのする食品用香水だ。
どれだけ材料が悪くとも、どれだけ調理が適当だろうとも、どれだけ見た目が悪かろうとも、このハンバ-ガーの臭いのする食品用香水を振り掛ければ、それが立派なハンバーガーになってしまうのだ。
冷たく硬くなったパンでも、まるで焼きたてのパンのような香ばしい匂いになり、
電子レンジでチンしただけの肉でも、まるで炭火で焼いたような匂いになり、
ケチャップとマヨネーズだけのソースでも、まるで野菜や果物や肉汁をふんだんに使ったソースのようなフルーティな匂いになる。
このハンバーガーの臭いのする食品用香水を使えば、大幅に材料代や手間代が抑えられ、安価で美味い(匂いのする)ハンバーガーが作れる。
これはハンバーガーだけでなく様々な食品用香水が使われ、それによって米国料理は手軽に美味しさを演出している。
これが米国の合理性だ。
この国でも焼き魚に焦げの匂いのする食品用香水をかけることがあるらしいが、殆どの店はやっていないと信じたい。
とりあえず、この店は本格的な本場のハンバーガーを提供してくれているが、そういった人工的な香り付けはしていないだろう。していないはずだ。
ハンバーグもきちんと米国の基準にあわせて牛肉のみを使用している。
この肉々しいハンバーグとチーズの間にハニーマスタードをこれでもかとかけて食べるのがとても美味いのだ。
マスター、ハンバーガーとフライドチキンとオニオンリングとバナナシェイクのジン入りを頼む。
バナナシェイクは先に出してくれ。ジンはワンフィンガーでいいぞ。
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