7/21 メロンパンアイス
私が住んでいる場所の近くに、昨年開店したメロンパンアイスを販売する店がある。
店の名前を聞いた時は『メロンパン味のアイスがあるのか!』とわくわくしながら楽しみに開店日を待っていたのだが、実際は何の事は無く、メロンパンに切り込みを入れてバニラアイスを挟んだ物だった。
正直言ってがっかりした。味は悪くないのがせめてもの救いだった。
というか、焼きたてのメロンパン自体が美味いのだから、そこにバニラアイスを挟めばもっと美味いのは自明の理だ。
バニラアイスと一緒にメロンパンの生地で作ったラスクも挟んであり、柔らかいバニラアイスとサクサクのラスクの対比がとても良かったのを覚えている。
メロンパンの味も悪くなく、バニラアイスも濃厚で悪くなく、ラスクの歯応えも悪くなく、値段も悪くなかったのだが、何故かそれ以降買う気になれず、店の前を通っても素通りするだけだった。
だが、今回、そのメロンパンアイス屋が勝負を仕掛けてきた。
焼きたてのメロンパンにマスカルポーネクリームとホイップクリーム挟み、エスプレッソシロップをかけたティラミスメロンパンを出したのだ。
メロンパンアイスの店なのに、アイスを捨ててティラミスを取ったのだ。
なんという背水の陣。これが失敗したら次はどうするのだろうか。
この意気込みは買ってやらねばなるまい。
恐らく、この店の最後の戦いなのだ。
そう決め、一目散のメロンパンアイスの店へとやって来た。
店構えは換わらず、あの時のままだ。
そして悲しいかな、私以外に客は居ないようだ。
取りあえず店員を呼ぶために呼び鈴を鳴らす。すると、奥からメガネをかけた店主がやって来た。
「ご注文は如何致しましょうか?」
「このティラミスのを一つ」
「かしこまりました。380円ですね」
財布に丁度あったので、380円ぴったり支払う。
思ったより安い。
確かメロンパンアイスも350円と子供の顔ほどの大きさの割には安かったな。
「おまたせしました。メロンパンティラミスです」
来た来た。
横に切れ込みを入れたメロンパンに二種類のクリームと黒いシロップを入れ、サクサクのラスクもおまけに挟んだメロンパンティラミスだ。メロンパンの上部にはココアらしき粉もかかっている。
これだけだと美味しそうに思えるのだが、サイズがそこいらのハンバーガーより大きい。
女性や子供はおろか、男性でも口に納める事が出来ないサイズだ。
おやつに食べるには大きすぎるんじゃないのか?
そして思い出す。
そうだった。この食べ難さで敬遠していたのだった。
メロンパンアイスもサイズが大きく、間食では済まない大きさだった。
受け取ったら店先のベンチに腰掛け、縁から少しずつ削っていくように食べる。
味は悪くない。ティラミス味のクリームとメロンパンのサクサクさが相まって、質の良い洋菓子を食べている気分になる。
しかし、上下に断たれたメロンパンのどちらかと中に詰まっているティラミス味のクリームを上手く一緒になるように食べるのだが、どうやっても鼻にクリームか上部のココアが付く。
これはよろしくない。
美味いのだが、食べ難すぎる。
そして量が多い。
380円でこの量は安い。味で判断しても安い。
だが、多いぞこれ。
ようやく半分まで食べたのだが、少しティラミス味のクリームに飽きてきた。
半分の大きさで250円でもいいんじゃないだろうか……
甘い物は好きなのだが、これは、中々、うん、飲み物がないと辛いぞ。
なんとか食べ終えることは出来たのだが、メロンパンとティラミスをこれだけ食べるのは少し辛いな。
クリームが多すぎて、若干の気持ち悪さもある。
メロンパンの味も悪くなく、ティラミスのクリームで悪くなく、ラスクの歯応えも悪くなく、値段も悪くないのだが、次も買うかと言われたら悩む。
悪くない。悪くないのだが、量が多くて二の足を踏んでしまう。
普通ならば美味くて安くて量があれば得だと思うものだが、そうではない場合もあるのだな。
立て看板にメロンパンアイスマロン、メロンパンアイスマンゴー、メロンパンアイスベリーベリー、メロンパンアイスバナナチョコの写真と『Coming Soon』の文字が書かれているが、もう夏は始まっているのにComing Soonのままという事はそういう事なのだろう。
惜しい。実に惜しい。
もう少し、こう、なんとかなれば、もっとこの店は流行ると思うのだが……
良い部分が沢山あっても、それが逆に悪い部分になる事もあるとは。
商売は難しい。何が正解か分からないな。
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