第三節

 この状況を、どう解釈すれば良いのだろうか……。

 サーバルキャットと言えばサハラ砂漠以南のアフリカ大陸に生息してる動物である。それを自称する目の前の少女の言葉を鵜呑みに出来るほど肝が据わっている訳では無いが、この状況でそれが嘘だという確証も無い。

 だが寧ろ、下半身がケンタウロスのように半人半獣状態であれば尚のこと信用できるが、生憎その象徴は頭頂部に付いた耳と、腰から見え隠れした尻尾のみだ。

 一体、目の前に起きているのは現実か、それとも変な幻覚作用でもある毒でも吸ったか、そんな推測も含め、少年はサーバルと地面にへたり込み頭を悩ませていた。

「えっとー……コクトちゃん、だっけ?」

「ちゃんって……いや、まあ、そうだよ」

「そっかー」

「……それだけか!?」

 空回りしたような質問に、思わずコクトは仰天する。

 他に何か質問が来るかと身構えていたはずなのに、構えを見ずどこかへ行った対戦相手を唖然と眺めているような感覚だった。

 挙げ句の果てにはツッコんだ。


「え~……。んー、じゃあ~」

「あ、あぁ……」

「……、」

「……、」

「今はいいや」

「あふんっ!」


 ズコーッと、前のめりに崩れかける。


 彼からしてみれば、人生史上ここまで空回りな状態は未経験だった。対応に困ることこの上ない。

「ッたたた……」

「おもしろいことするね~♪」

「あー……まぁな~」

 気が狂う。

 が、この質問で現状を彼女がどう把握しているのかは何となく察しが取れていた。

(まず第一に、仮定するべき条件はだ。正直嘘をついているようにも見えないし、かといってこの状況を鵜呑みにするには情報が足りなさすぎるが、もしそう捉えた場合、つまりはこの島では生物が生まれ、獣人化の現象が起きているという事……まあ、この子に至ってはその現状を理解できていないような感じだ……と言うか、この「のほほん」とした顔が何というか、本当に何も考えて無いんじゃないか?)

 現状をなんとか理解しようとするが、目の前の雑念に惑わされ掛ける。

「と、とりあえず、だ。サーバルは……ずっと此所に居たのかい?」

「ううん。私は……よくわかんないけど今ココにいたよ?」

「そっか~~……、他に、自分以外に知り合いとかいるのか?」

「わかんない!」

 彼女の元気ハツラツな声に、今後の行く先を不安に思ってしまう。

 あり得ないことが起きていて、現状を一番知っていそうな第一現地民に話を聞いてコレだ。もう何を聞いても、無駄かも知れない。


「まあとりあえず、色々歩いて探してみるか」

「どこか行くの? 私も行くー!!」

「別に良いけど、理由を聞いてみて良いか?」

 その言葉に少女は、立ち上がり、顔を寄せ、無邪気ながらの裏表の無い顔で放った。


「面白そうだから!!」

「……際ですか」

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