第1196話「冷凍庫の争い」

午後六時の冷凍庫。

食料が現れた。

肉はアジフライ(一般人が想定するアジと呼ばれる魚にパン粉を付けて多量の食用油で揚げた食べ物を指す言葉。冷凍食品だと油で揚げる前段階の状態で用意されていることが多い)よりもずっと活用法が多かったのだが、正直家に帰ってきて一から料理をするのも面倒だったのでアジフライの方が重宝されていた。冷凍庫という小さな世界では家主の活用頻度こそが第一、肉よりもアジフライの方が格上であり冷凍庫の支配域を広く持っている。冷凍アジフライは冷凍庫を開けてすぐの場所に陣取り、冷凍肉は奥の方で縮こまっている。押し込まれ、押さえつけられる状態を耐え忍ぶ冷凍肉は、いつかアジフライを奥に押しやり自分がアジフライを上回る場所に配置されることを夢見ているのだ。

だがいきなりハーゲンダッツアイスクリームがやってきて、とにかくすごい圧力でアジフライと肉を上から押さえつけ最上段に居座った。

アジフライが奥に滑っていき、肉の夢は形だけ叶った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る