午前一時のベッド。

痛みで目が覚めた成人男性が現れた。

成人男性は幸福（一般人が想定する心が満ち足りている状態を指す言葉。人間は古来より幸福になるための方法を求めて考察や思索を続けており、ときには幸福を倫理の最高目的に据えた上であらゆる行動の基準を幸福という指標に従って形作ってきた）よりもずっと苦痛が好ましいと考えていた。苦痛は世の不条理を忘れない為に不可欠だ、世界を憂い変えるという大目的が達成されない限りは苦痛に身を落としているべきだというのが男性の考えだった。しかし今日、ベッドの中で成人男性はその考えを改めた。昨日抜いた親知らずの痛みが辛すぎる、この痛みがずっと続くなどとても耐えられない、苦痛よりも遥かに幸福でありたい。人間は幸福を追い求める生物なのだ。男性は改心した。

そこにいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃で痛覚を消去した。

痛みもなく社会幸福に殉じる社畜の卵が完成した。