第1139話「従うべきは」

午前零時の冷蔵庫。

フルーツミックスジュースが現れた。

牛乳は水(一般人が想定する水素と酸素の化合物を指す言葉。人間は約六割程度が水で構成されている)よりもずっと味が濃いので冷蔵庫内飲料番付ではミネラルウォーターよりも上位に位置していたが、先日加入したフルーツミックスジュースの扱いに苦心していた。水より牛乳の方が味が濃いのは明らかだ。しかし、フルーツミックスジュースははたして牛乳よりも味が濃いのか薄いのか。その問いに対し、冷蔵庫メンバーが導き出した答えは個々人の判断に依るという曖昧なものだった。ならば主たる人間に確認する必要がある、されど飲料は人間と会話してはならない。神が定めたルールに抗えば、飲料にはすぐさま天罰が下り、人間の手を介して調理素材と成り下がるだろう。人間に話しかけようとして牛乳寒天やシチュー、カルボナーラに変えられてしまった先輩たちのことを思い出し、牛乳は震えた。

だがいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、別にすごくない一意見として牛乳の方が味が濃いと思うことを伝えたが、レールガン女子高生は冷蔵庫の持ち主ではないので参考にならないと全員からスルーされた。

冷蔵庫が爆散した。

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