第21話

彼氏っていうのになってから、何日か経った。特に、なんていうか、変わらない毎日が流れる。夜になると、なんか、ちょっとメールしたりすることが増えたかな、と思う。

なんていうか、もっと、昼休みに屋上で一緒におべんと食べたり、小指をつないで帰ったりするようになるのかと思っていたが、屋上は立入禁止だし、帰る方向も逆だし、彼女は部活があったし。


これでいいのかなあ? と、思う毎日だ。

ただ、なにか、こう、そわそわする、というか、落ち着かない。ゲームをしてみても、ネットを開いても、漫画を読んでも、集中できない。


「会いたい」


夜、一人の部屋で、小さく、つぶやいた。無意識だった。

俺の気持ちが、胸の中から溢れてきて、言葉になって口から出てきたみたいだった。

会いたい。


ああ、おれ、あの子のこと、こんなに好きだったんだ。と、自分でも驚いた。実際、彼女に告白されるまで、特別な意識を持ってたわけじゃなかった。と、思う。

うちのテニス部のアイドルで、かわいい子で、こんな子の彼氏になる奴はうらやましいね、とかは思ってたかもしれない。


わずか、数日で、こんなにどっぷりはまるもんか? と、思った。


ケータイを握った。

アドレス帳から、峯岸さんを探す。

フリガナを編集して、アドレス帳の一番最初に出るように変えた。

受信メールボックスを編集した。峯岸さんだけのフォルダを作った。

インターネットに接続して、峯岸さんへの通話が無料になる手続きをした。


ガタガタと机をあさって、フォトスタンドを出した。最後の大会のときみんなで撮った写真を、机の上に飾った。


メールを送りたいけど、なにを話していいかわからなかった。

こんなに、会いたいのに。こんなに好きなのに。特に用事もないのにメールをする、やり方がわからなかった。

必死に考えて、できたメールが


「こんばんは。元気ですか?」


だった。

すごく悩んで迷ったが、意を決して、おれは、送信ボタンを押した

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