第20話

「初々しいわー」

もりちゃんが笑った。

「な、なに、なによぅ! やめてよもー!」


私はもりちゃんを両手で押した

「ちひろ、よかったね」

もりちゃんがまた笑う

「ねえ、さっきの、おかしくなかった? 私なんか、変じゃなかった?」


私はドキドキが収まらなくて、声が上ずって、足をバタバタとさせてみた


「だいじょーぶよ。どっからどう見ても、山本さんの彼女だったよ」

「ね、もりちゃん。ゆうべ、私が聞いたの、夢じゃないのかなあ。まだ信じられない」

「私も実際聞いたわけじゃないけどねー。でも、さっきの山本さんとあなたの感じだと、間違いないんじゃないー?」

「へ、へへ。えへへ」

自然と、笑ってしまう

「よかったね。ちひろ」

「ありがとうもりちゃん。ほんとにありがとう。今日、なんかおごる」

「えーいいのー? あでも、彼氏と一緒に帰ったりしなくていいのかなー?」

「え? そんな、急に、そんなこと、まさか、無理。無理だよ。」

「あっはっは。そんなことって、一緒に帰るだけじゃん。一体どんなことよ」

「そんなことしたら死んじゃうよ! 心臓がパンクしちゃう」


突然、もりちゃんが私を抱きしめた


「も、もりちゃ、ん?」

「よかったね。ちひろ。心から、祝福と、応援するよ」

優しい声だった。

私は、そのもりちゃんの言葉で、山本さんの彼女になったんだーって、じんわりと思えてきた。

私はおでこをもりちゃんの肩に預けて

「ほんとに、ほんとに、ありがとう。もりちゃん」

て言った


「ちひろのケーキ食べたいの」

もりちゃんが言った。

「いいよ。20センチのホールで作る。今度のお休みにね」

私が答えた。そして

「もりちゃんは、ずーっと、私の一番大事な人だからね!」

真面目に、言った。

「ええー。2番目でいいよー」

もりちゃんが笑って言った。

「ダメ。だめよ。一番はもりちゃん。いつまでも、そうなんだから」


私は、うん、そうよ、そうなんだから。とかひとり言を言った。

もりちゃんは隣で笑った。


なんだかとても、素敵な時間が流れていくようだった

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