第四話「この世界」
今俺たちは部屋を変え、長い長いのテーブルの端で、三人かたまって座っている。某魔法使い映画に出てくるようなテーブルだ。
俺たちが出会ったのはちょうど夜のご飯時
だったらしく、リリィーの提案で話の続きは食べながらしようということになったのだ
来る途中、一人なのにこんなでかいテーブルを使っているのか?って聞いたら、いつもは自分の部屋で食べてるの!っと怒鳴り返された。
彼女の弱点を見つけたかもしれない。
「うわ、なんだろう。不味い訳じゃないけど薄味だ」
「仕方ないのよ、物資が行き渡ってないの。だから戦争なんて早くやめればいいのに」
なんだかブツクサ言っている。よほど今の飯に不満を持っているらしい。
しばらくの間ナイフとフォークの音が響いた。(全部俺の音だけど)
なんであいつら音を一切たてずに食べれてんだ?新手のマジックか?
ここは日本人ってことで見逃して貰おう。本職は箸なのだ。
「ユウキ、君はいろいろと質問しておきたいことがあるんじゃないか?」
気の利くやつだ。何をするにしても、この中で一番知識不足なのは俺だからな。これからの話をする前に一度いろいろ聞いておきたい。
「そうだな。この世界のことについて詳しく聞いていってもいいか?」
「いいよ。答えられることならね」
こうして教えてくれる人がいるのは、ほんと助かるな。一人だったら自力で調べたりと、大変めんどうだったろう。
「まず、この世界のことを教えて欲しい。お前ら魔族と人族は戦争しているのか?」
薄々分かってはいるが、念のためだ。真偽はしっかりとさせておきたい。どうもこの二人を見ていると、戦争してる雰囲気には見えない。互いに無警戒すぎだろ。
「うん、そうだね。人族と魔族はもう何百年も争い続けているよ」
「他に種族はいるのか?どうやって暮らしてる?」
「種族については、人族と魔族以外だと、獣人族、森人族、炭鉱族があるね。どの種族も、人族の国で普通に生活していたり、単一種族だけで隠れて暮らしている者もいるらしい。
そしてこれは、人族も含まれているんだけど...奴隷に落ちている者もいるんだ。」
「なるほど、な」
ここまでテンプレにそっていると逆に清々しいな。けどおかげで、想像がしやすい。だいたいの状況は分かったし、これ以上は自分の目で見た方が良いだろう。次の質問だ。
「じゃあ次、ステータスってどうやって出すんだ?ステータスがあるってのは聞いたんだが肝心の出し方がわからなくてな」
「ええ?!ほんとにあんた何も知らないのね。この世界の人なら100%知ってる常識よ」
知ってるか?
常識って、言われてるほどそこまで定着してるもんじゃないんだぜ。絶対知らない世間知らずが何人かいるからな。
「生憎俺は、この世界の人じゃないんでな。俺の世界には、ステータスも称号も、スキルも魔法も、何もなかったぞ」
「すごいわね。ステータスも称号も、スキルも魔法もないなんて...逆に何があったのよ」
「空飛ぶ鉄の塊とか」
リリィー周辺にハテナマークがいっぱい飛んでいるのがわかる。そりゃ、伝わらないか。
「面白い話だねー。本当に君の世界に何もなかったみたいなのに、魔法やスキルの存在を君 は知っていた。なんでか聞いても?」
鋭いやつだな、というか俺が迂闊なのか。
「あ、ああ。俺の世界にあった書物には、この世界みたいな作り話がたくさんあったんだ」
「へー、それってつまり君以外にも転生者がいたってことなのかな。しかも、その人は帰還して、自分の世界にない知識を持ち込んだ、と」
!?
確かにそう考えることもできる。言われなければ気づかないものだな。今まで全く考えたことがなかった。もちろん本当かどうかはわからないが、一つの可能性としては十分にあり得ることだ。
「話を戻そう。ステータスだったね。〈ステータスオープン〉」。
シオンが呟くと同時にウインドウが現れる。
「これででてくる。基本的にステータスは他人に見えないから、どこで開いても大丈夫だよ。こんな風に見せようとすれば話は別だけど」
そう言うと、シオンはウインドウを俺とリリィーの方に見えるようにした。
名 前:シオン
年 齢: 19
称 号:《勇者》《決意した者》etc
スキル:《聖剣変換》《魔剣変換》etc
年齢19!?俺より年上?さすがファンタジーというべきなのか身長と年齢は比例しないらしい。
「あっ、私も魔剣変換なら持ってるわよ。ほらほらっ」
いつから出していたのか、リリィーも自分のウインドウを見えるようにした。
名 前:リリィー・アスカ・スカーレット
年 齢: 28
称 号:《魔王》《魔法を統べる者》etc
スキル:《魔力無限》《魔剣変換》etc
年齢28...思わずリリィーの方を二度見してしまった。目が合う。
リリィーは嘆息すると、呆れ顔で言ってきた。
「言っておくけど、私は後、百年はこの姿のままよ。人族の歳の数え方と一緒にしないで」
あまりにも数字が微妙すぎて反応に困ってしまった。振り切るならもっと振り切れよ!
わかりづらいんだよ!
さて、俺も。
「〈ステータスオープン〉」
名 前:ヒイラギ・ユウキ
年 齢: 17
称 号:《転生者》
スキル:《神性なる身体》《火炎耐性》etc
暗視はどこにいったかと思えば、etcをタップすれば普通にでてきた。
他に気になる点といえば、神性なる身体か。これもタップしてみる。
《神性なる身体》
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なんだこれ、文字化けしていて読めない。気味が悪いな。
《転生者》
精神安定作用がある。
《火炎耐性》
火、炎、への耐性が上がる。
《暗視》
暗闇でも昼間と同じように見ることができる。
他は普通に見えるんだな。
「なあ、なんで魔法は項目にないんだ?」
「魔法っていうのは自力で行使するものだからよ。 魔力とイメージ力を使って、自分の起こしたい現象を起こすのが魔法」
俺のふとした疑問には彼女が答えてくれた。
「その点、スキルや称号は発動してしまえば、あとは勝手にその現象が起きるの。これはそういう風にできている、と考えるくらいでいいわ。スキルや称号、ステータスはわからないことだらけなの。だから全く別物だって考えてくれていいわ」
難しい話だな。スキルや称号、それからステータスはあくまで世界の法則。あくまで自分の力じゃないってことか?
それに比べて、魔法は自力で行使する力だから自分の力だと。
ステータスに載る載らないもそれが関係しているのか?
だめだ、頭が痛くなってくるな。
「あ、さっき魔法は、魔力とイメージ力を合わせることによって、なんでもできるっていったけど、一般的に知られていないの。だから普通の人は教科書に載っているような基本的なものしか使えていないの。もちろん私はなんでも使えるけどね!」
ふふん と、リリィーがこちらを見てくる。
あー、なんか別の意味で頭が痛くなってきた。
「てか、お前らいいのか?ステータス見せちまって」
「普通はダメよ。ステータスはスキルや称号が載ってる生命線なんだから」
「うん、ユウキも見せる相手は選んだ方がいい」
「もうそんなに、互いを信頼してるのか?」
本当に、幾ら何でも互いに無警戒すぎじゃないか?勇者と魔王だろ?
「「いや?
だって、ステータスを見られたところで、誰も僕を(私を)殺せないよ(わ)」」
一瞬で空気が変わった。
背筋に寒気がはしり、唾を飲み込む。
...違う。
こいつらは自分が他人に負けることを、端から考えていないんだ。例え相手が勇者であっても、魔王であっても関係ないという、恐ろしく深い自尊心。
この時ユウキははっきり自覚した、目の前の人物が勇者と魔王であるとことを。いや、 自覚させられたと言った方が正しいのかもしれない。
「そ、そうか...」
かろうじて、一言返すのが精一杯だった。
その後ステータス鑑賞会が行われた。結局俺も、見せることにした。たいしたものも持ってなかったしな。
シオンもリリィーもデタラメなスキルや称号ばかりだった。チートって本当にあるんだな。
「ねぇ、シオン。平和な世界って言っても具体的に何をするの?」
「まず、僕たちで国を作る。今ある国だけじゃあ、どうしても足りない。だから受け皿を作る。誰でも分け隔てなく受け入れられる国を。その国を中心に今ある国も変えていく」
シオンが拳にグッと力を込める。
「けれど国を作るには、莫大な資金が必要なんだ」
たしかに、国を作るに莫大な資金が必要だ。それから、人々を動かせる名のある者も。しかしこれは、勇者と魔王であるシオンとリリィーがいればクリアできるだろう。やはり資金の問題か。
すると、シオンはクイッと後ろを親指で指しながらこう言った。
「だから金策としてドラゴン討伐へ行こう」
リリィーは、あ〜と納得した顔になる。
完全に話についていけなくなった。どこを指指しながら言ってんだ?
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