06-99:章末

06-99-01:エピローグ

 ヴルカンから遠く離れた街路にて、シオンとステラは歩きながら話し合っていた。


「シオンくん、彼らはわたしの議案を役立ててくれているかなぁ?」

「どうでしょう。使い方がピーキーですからねぇ、ステラさんの案って」

「むぅ……思いつく限りは書いたから、幾つかヒットするものがあればいいのだが」


 いたずらには何時だって代償が伴う。それはちょっとした良心の痛みだったり、ごめんなさいと謝ることだったり、やんちゃした末お財布の危機だったりする。

 故にやったことの補填として、今回はステラのアイデアで恩返しとした。


 なにせ街1つ崩壊しかねない事件が、まるまる珍事となってしまったのだ。予見どおり身を崩すものは出るだろう……故にアルマドゥラやグルトンに、対策をかけあっておいたのだが上手く動いてくれているかどうか。


「ま、やるこたぁやったしな。立つ鳥跡を濁さずだ」

「滅茶苦茶泥水にしてますけどね?」

「元から濁っているなら、結果的に『濁していない』といえるだろう」

「そりゃそうですが……」


 はふぅと息を吐くステラは背伸びして晴れた空を見やる。


「しかしまぁ、今回はへんぴな事件に巻き込まれたものだ」

「辺鄙な事件はいつものことでしょうが」

「猫にも会えなかったし……はぁ、もふもふが恋しい。エルフの国では会えるといいなぁ」

「あー、どうでしょうね。次はそれ以前の問題な気がします」

「それ以前ってーと……ハイエルフ問題か」

「ええ、上下関係がはっきりしていますから。ステラさんの感覚ではとにかくでしょう」

「ふむぅ、例えば?」


「街で動くなら、僕が奴隷って扱いが妥当でしょうか」

「おい誰だそんな事抜かした輩はテメェぬっころすにゃひんっ!」


 武器に手をかけたステラの脇腹を、シオンの居抜き人差し指でつつかれ変な声が出る。


「そういうところですよ。ハイエルフが幅を利かせているので、そういうふうな解釈になります……ハーフエルフはギリギリ奴隷ですかねぇ。物好きが飼っているペットぐらいの扱いです。エルフ以外は有象無象の雑草と見てますからね」

「前から思ってたがマジ相いれんよな」

「でしょう。だから僕は心配で心配で……はぁ、今から胃が痛いです……」

「……な、なるべく善処します」


 申し訳なくしょぼくれるステラにシオンが苦笑する。ステラは接しやすいが、この先の国では悪い方に作用する事となるだろう。それが問題を巻き起こすことはもはや既定路線とも言える。


「さて、どうなりますことやら」

「サーっといってサーっと帰ってこれるといいんだがね」


 にこやかに言う彼女の言葉に、シオンは『ふらぐ』の存在を感じ取った。次もまた一筋縄では行かない……もとより分かっていたことだが、今から気分が重くなるシオンであった。

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