04-16:ジャバウォックの嘶き
04-16-01:ジャバウォックの嘶き/何だありゃ! 空前絶後の、巨大ヘビ!!
ステラは可能な限りの全速で
「なんじゃありゃあ……? シオン君見ろ、わけがわからん化物がおるぞ! モヤシの化物だ!!」
「――――……」
「シオン君?」
ステラが耳を凝らせば、彼女にしがみつく彼が延々『怖くない怖くない怖くない』とつぶやき続けていた。
「あ~いかん、いまポンコツだったわ……っていうかそもそもシオン君じゃ見えない距離だな」
となればどうするべきだろう。明らかに『わるいもの』なのは見た目がうごめくモヤシ……
(取り敢えずひと当てしよう。まずは……シオン君見てないし、超長距離だしぶっぱでいっか)
ステラはグラジオラスを抜き放ち、非常に気軽な心持ちで
(座標指定は
ゴマ粒よりも小さい目標であるが、故に
「『
極細の超長刺突として言葉通りぶっ放された。『ボギョーム』という愉快で素敵な音を伴って、光の速さでモヤシの頭をすぱんと貫く。当たったモヤシが苦痛に口を開けてニョロニョロと見をくねらせた。
「ブルズアイ! フゥ~小生0点小僧よりいい仕事した……はずなんですけどねぇ?」
確かに皆中したはずだが、
(凄く痛いけど命には全然かかわらない……って言うかもう再生してる? えぇー)
ちなみに
遠目でモヤシがぺちこーんぺちこーんと暴れだした。どうも何かを貪っているように見える。
そんなことを考えていると胸元から女性の声がステラの耳に届いた。
『――対象、
「おや、イーさん目が覚め……って、あれがジャバウォックなの?! どう見てもモヤシじゃん?! だめだめ小生認められません。もっとこう、醜悪な化物を所望します!」
考えてみてほしい、長い旅路の末に見たラスボスがモヤシ1袋38円税込。そんなロールプレイング・ゲームが盛り上がるはずもない。そもそも旅の結末でもないという点を差し置いても、波静かな平野に唯一残った髪の毛めいた存在が求めていた敵だとは俄に信じられなかった。
『巫覡ステラ。形に意味はありません、存在に注目を』
「だがモヤシだぞ……?」
『更に巫覡ステラ、先程の一撃はあまり効果がありませんでした』
「ああ、そうっぽい。何でだ?」
『その件で申告すべき情報が存在するのですが――剣士シオンはなぜ怯えているのですか?』
一瞬言葉に詰まったステラはおずおずと言葉を切り出す。
「……彼、高所恐怖症でな」
「コワクナイコワクナイコワクナイコワクナイコワクナイ……」
『――』
イフェイオンは沈黙した。
『……状況、理解しました。情報を御伝えしますので一度停止願います』
「あいあい、了解だよ」
◇◇◇
森の中に降り立ち大地を踏みしめると、漸くシオンは復活した。きっと彼の心では
「で、どうしたんですか? 僕アレを何度も味わうのは精神衛生上よろしくないので途中でやめられても本気で辛いんですけど」
胸元の六花結晶を睨むシオンの目は、『ふざけたこと抜かしたら叩き割るぞ』と物語っていた。
『端的に申し上げます。剣士シオン、
「そらどういうこった? 手応えや効果は薄いが、貫くには貫いたじゃないか。ほら、古事記にも1回刺して駄目なら1000回刺せっていうじゃない」
『その点について巫覡ステラの能力値前提を上方修正しました。しかし決定打に欠けます』
「くっこの、マシンめいたお姉さんが舐めくさりやがって……ちょっとクるものがあるじゃないか」
ぐぬぬと唸るステラを置いて、イフェイオンは続ける。
『基本的に
「え、まって監視? 監視なの? 除きプレイはちょっと趣味じゃないんだが……」
『単純なデータ観測です。お気になさらず』
「いや普通は気にするよ普通は。シオン君もそう思うよな?」
話を振られた彼は肩をすくめるのみである。
「そんなに興味深いなら、ステラさんを
『
「そういやシオン君は『剣士』呼びで、小生は一律『巫覡』呼び……つまり巫女や神官指定されてるな?」
「資格を持つ、或いはヴォーパルを担う可能性がある者を『剣士』と呼ぶのですか?」
『肯定。剣士シオンは未だ
「
『剣士シオン、以後
憧れていた六花の騎士、その見習いともなればさしものシオンの心も踊る。とはいえそれを表に出すほど子供ではないのだが。
「わかりました。それであれだけの巨体に対抗できるのですね?」
『現状不可能です』
「おいィ、ならなんでそんな取引持ちかけたのさ? 対抗できなきゃ意味ないじゃない」
むすーと頬を膨らますステラだが、イフェイオンは淡々と続ける。マシーナリーはどこまでもマイペースであった。
『事態の解決には2つの問題があります。1つはイェニスターの協力が必要であること』
「そりゃあそうだよな。同じヴォーパルの剣、対抗兵器としてはこれ以上ないけど……まだ目覚めてないはずだ」
『肯定。剣士メディエは
「それはわかった。なら、もう1つの問題ってのは?」
『剣士シオンの
「まぁ、そうなるでしょうね……」
ではどうするべきか。解決方法はイフェイオンが淡々と告げた。
『巫覡ステラ、及び剣士シオン両名に申請します。粘膜接触による魔力パス疎通契約を締結して下さい』
「……うん??」
イフェイオンの言葉にステラが大きく首を傾げた。
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