コピープロテクト 板に透明の線

 CD-ROM時代の話ではありますが、プロテクトをかけるシステムを売り込んでくる会社があって、それを採用した事がありました。


 僕が技術面の受け答えをやってました。



 やはりプロテクトという技術は分からない人間も多い。


 制作などはCD-Rの段階でプロテクトがかかっていると思っていたり。


 Rとは普通に家庭で焼くようなROMですね。


 それプロテクトがかかっているのなら、コピーできる手段があるという事だ。


 コピーできないからプロテクト。


 メカニズムとしては前回解説した通りディスクにエラーを作ってそれを検出する。


 チェックプログラムの方を潰してしまえばコピーできてしまうのには違いない。


 まあ簡単な事ではないですけどね。


 あとはドライブによっては正しく判定できず起動できないトラブルなどもあり得るという事で色々とサポートも必要だったり。



 そしてこのディスクにエラーを作るという技術なんですが、要するにトラックの端っこに何も書かない領域を作るんですね。


 普通ロムの裏見れば銀色の光沢してますね。


 アレが光を反射し、反射の具合でデータを読み取るのですが、エラー領域にはその光沢がないんですね。


 サンプル品の裏を見せられましたが、こう光沢の中に輪っかのように線が入っているのが分かる。


 通常のロム作成の工程では不可能な事なので板を再現する事は不可能なものです。



 それを採用してテスト。


 プルーフ、つまり試作品が送られてきたのですが、それを見て愕然。


 プロテクトには何も問題はありません。


 問題は表の印刷。


 印刷はカラーなんですが、どんな色でも使えるわけではないんです。


 発色数が決まっていて、色数が多いほど料金が高い。


 なので安く済ませるために色数は限界まで落とすものです。


 人はパッケージ見て商品選ぶ事はあってもロムの表見て選ぶ事はない。


 大体4色とか選ぶ事が多かったです(その会社では)。


 4色なんですが、何も描かない下地の色を使う事も出来た。要するに計5色と考えていたのですね。


 下地の色をベースに4色載せてイラストを描いていたのですが、要するに下地の色とは銀なんですよ。


 その銀を活かすように絵を作っているのですが、そこに見事に輪っかが入っている。


 銀の光沢ありませんから。


 完全に透明板。


 これは予想外。


 しかしプルーフというのは最終確認で、基本的に作り直しは無い。


 工場側の不備ではない事を確認するためのもので、製品の不備を直したければ純粋に発売延期。


 工場を押さえた費用もろもろは全てこちらですから、実質一本の生産ラインをフイにする事なのでそれを上回る損害が出ない限りやり直しは無い。


 これは教訓だな、とプロテクトシステムの提供元にも報告。


「それはこちらも予想外でした」と。


 今後はその注意も促す事でしょう。



 余談ですが発売後、やはりドライブの相性なのか動作しない事例はありまして、


 購入者である事を確認してプロテクトの解除法の案内をしたのですが、

 (これはそういう事態を予期して自社で独自に入れた物)


「そんなプロテクトなど聞いた事が無い。そんなものがあるなら他でも利用してるはずだ」


 みたいな事を言われた。


 なんか「不備に対してよく分からない言い訳をしている」風な捉え方をされたっぽいのですが、


 本当に購入者ですか? と聞いてみたくなる。

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