信じられないデバッグ

 デバッグと言うのは製作中、または完成品のゲームに問題がないかを実際にプレイして確認する作業の事です。


 大抵はバイトなどを数人雇って数日間、何度もプレイしてもらいます。


 バイトといえど割とあちこちのゲーム会社でデバッグをやっていたりして、慣れている人だったりします。


 最近はデバッグ専門の会社もありますね。


 そっちで数人バイトを囲い。要望にあわせて派遣するのです。



 なにせただゲームが好き、というだけでは務まらない。


 デバッグにもスキルがあり、それを心得ていないとただ遊びに来た人になってしまいます。


 この手のゲームでは、どういう所にバグが潜みやすいか、どういう所に穴がありそうか。


 そしてバグを発見したら、どうやって発生したのかを詳しく報告できる事。


 どうすれば再現できるのか、の再現手順、条件の絞り込みができるほどバグは直しやすくなります。


 そのいかに直しやすくできるか、がデバッガーとしてのスキルと言えます。



 しかし小規模なプロジェクトや本格的なデバッグ前には、社内で見繕ったり経験の浅いバイトを使う事もあるのですね。


 一番よくあって一番困るのが


「止まったー」


 そして原因は分からない。


 まあこれはありがちで。



 ひどいのになると、


「ちょっと来てください」


 と呼ばれて、行ってみると


「これ」


 と画面を指される。



 いや、バグを発見した時の対処法はマニュアル渡してあるでしょ。


 それに従ってくれ。



 またある時は、


 これは言葉で説明できないから、と呼ばれて延々と手順を見せられる。


 ……これ文章で説明できないのは色々と問題でしょ。



 そういうのは「曲がりなりにも料金発生してるんだから、ちゃんとデバッグのやり方を指導しろ」と制作を叱ります。



 最も信じられないケースとして、


 ウィンドウズのアプリだったのですが、


『PhotoShopとIllustratorを起動した状態で起動すると動かない』


『PremireとSoftImageを起動した状態で起動すると動かない』


 とおおよそ大容量のメモリを使用するアプリケーションを複数起動してのテストを延々と書き連ねていた。


 何だかんだでゲームは結構な容量を使う上、ウィンドウズなのでメモリオーバーで起動しないという事はなく、


 スワップ発生して起動が著しく遅くなっているのですね。


 場合によっては進行が再開しない事もあります。


 デバッグの方法に「まず全てのアプリケーションを終了する」と書いてあるのに全く読んでいない。


 そしてゲームのデバッグそのものは何もやっていない。


 これでデバッグ完了です。


 そんなものを普通に引き上げてくる。



 素人でもこうはいかない、というレベルです。

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