第98話
アイドレーターの潜伏地点が
「この施設の電波の送受信は、どこでやってるわけ?」
「本来なら、昴様と酒匂さんのいる管制室でしょうけど……今は多分違うわ」
唯奈の質問に時雨は管制室と答えようとしたが、どうやら真那の解答はそうではないらしい。
「どうして?」
「前も言ったと思うけど、そもそも東京タワーの電波送受信の役割は、リミテッド建設と同時に廃止にされているの。だから、このタワーはただの象徴的な建造物になって放置されていた。私たちはここを拠点にするにあたって、防衛省の周波数をキャッチするために色々といじったのだけど、使えたのは電波の受信機構だけだった」
ならば別の場所にもう一つ管制施設があると考えるのが妥当か。
「でも、間違いなくこの施設の中よ。アンテナは支線や支柱の内部に配置された有線で送受信を行ってる。だから配線の行き届かない場所からでは、機能を操ることはできないわ」
「旧東京タワーは私たちの根城よ。当然目のつく場所にアイドレーターの潜伏場所はない……これまで捜索してきた場所のどこにも、答えはないってわけね」
といっても他に連中が隠れられる場所などあるのか?
「タワーの支柱の部分はどうですか……?」
「それはない。烏川時雨の位置からなら明白でしょうけど、トラス構造のタワーだから、そもそもタワーの大部分は吹き抜けになってる。潜伏できる場所なんてないしあっても外から丸見え」
「上の方はどうなのだ?」
「それもないですね。慰霊碑とバーのある特別展望台を除けば、まともに生活などが出来る空間は存在しません。それ以前に、そんな場所を根城にすれば、即刻私たちが発見しています」
「俺がさっきまでいた最下層にもいくつか空間はある。だがアイドレーターが隠れられるような場所はない。これまで俺たちの手つかずだった場所は精々あの格納庫くらいだろうし……」
デルタサイトが収納されていた格納庫。あの内側に別の部屋があるという可能性もなくはないが、だがそれでは彼ら自身も出口を失ってしまう。
それに自分たちが使う出入り口を爆破する奴はいないだろう。たとえ目くらましのためだとしても。リスクが大きすぎる。
「大田区全域がノヴァに……」
「早くしないと取り返しのつかない事態になるぞ」
「……取り返しのつかない事態なのは、ここも同じみたいよ。デルタサイトが破壊されて、ナノマシン濃度が少しずつ上がってる。もう数分もしないうちに、この場所はノヴァだらけになるわ」
しまった、そのことを失念していた。時間が残されていないのは時雨たちも同じなのだ。
昴たちが手続きしてデルタサイトをここまで搬入してくれるのを悠長に待っている時間的余裕もなさそうだ。
「大気感染率、0.6パーセント……これまでの観測からして、平均2.4パーセントでノヴァは出現しています。これはあれですね、マジでくたばる五秒前」
「余裕噛ましてる余裕なんてないんだ。クレア、真那、俺たち以外に生体反応は観測できないのか?」
「それが、やっぱり何も感知していないのです」
「どうなってる……」
本当に禍殃はここにいるのか? 全部勘違いなのだとしたら。
こうして悩みやみくもに思考を重ねる間にも別の場所で暗躍しているのだとしたら。もしそうならばもう手遅れだ。
「……ねえ、ちょっといいかな」
「その声、紲か?」
インカムから聞きなれた声が聞こえてくる。
「うん。柊さんのお見舞いに来てて、それで話を聞いていたんだけど……」
「織寧紲、何か分かったの?」
「えっと、話してることのいくつかがよく解らなかったんだけど、とにかく今の問題はあの倉嶋禍殃って人の居場所なんだよね?」
「ああそうだ。だが場所が解らない。そもそも連中が隠れられるような場所なんかないし、あってもソリッドグラフィで観測できるはずだ」
「それなんだけど……そのソリッドグラフィっていうのどんな環境でも観測できるの?」
「どういう意味だ?」
要領の得ない質問。どんな環境でもというのは地帯による寒暑の違いに関する話か。
ソリッドグラフィの観測方法はサーモグラフィを用いていない。衛星による識別である為、おそらくそう言った環境は影響してこないだろう。
「えっと、なんて言うかね……時雨くん、前に話したことなんだけど、23区の次期都市開発計画って、覚えてる?」
「そんな話前に聞いたな」
確かリミテッドの拡大を目的とした政策だ。
2053年夏に防衛省がマスメディアを介してリミテッド全域に報道したものである。リミテッドの領域を拡大し比例して人類の生存領域も拡げる目的。
その中心地点には旧東京タワーが配置されているだとか。次期都市開発計画の象徴たる先駆けとしてだ。
「その開発計画なんだけど、どうやって領域を拡大するか話したよね」
「確かリミテッドの地下を掘って、その地下に空間を作る。そうして、そこに新たな領域の建設を図るんだよな。確かその計画は破綻したんだろ。俺たちの使っている地下運搬経路が邪魔になって」
「うん。でもね、中止になっても地下空間は埋められていないんだよ。中途半端に作られた状態で放置されてるの……
「――――!」
衝撃が脳天を貫くような感覚。頭の中で、何かが繋がった気がした。
「そういう、こと……」
真那の動揺が無線越しに伝わってきた。
「次期開発計画、その名残で旧東京タワーを中心に地下に放置された空間──間違いない。そこだ」
「地下空間に、カオウはいるのか……?」
「可能性はかなり高いですね。確かに紲様の疑問通り、ある程度地底深い位置までは、ソリッドグラフィでは感知できないかもしれません」
「やっぱり、間違ってない?」
「彼は陰険なマッドサイエンティストですから。インテリ根暗っぷりは、佐伯・J・ロバートソンにも引けを取らない勢いでしょう。じめついた地下空間に身を潜めていても何もおかしくはありませんね。今後は倉嶋禍殃のことは、偏屈モグラ野郎と呼ぶことにしましょう」
「早く地下に向かわないと」
「待って、どうやって行く気なの?」
唯奈の疑問に思わず足を止めた。失念していた。確かにどうやっていくのだろう。散々タワー内を捜索しても、地下につながる道などは見つけることはできなかったのだ。
そう考えると施設の内部からはいけないという可能性がある。
「地下運搬経路から向かうのか」
「そう考えるのが妥当でしょうが、少し気になることがあります。もしそうであるならば、そもそも彼らがソリッドグラフィに映ることはないはずです。幸正様はこの施設内部で不審人物を感知したと申しておりました」
「それに、燎はタワーから地上に出てくる人影を見たと言っていたな。もし地下運搬経路から向かえるのなら、そもそも外に出る理由がない」
「う、にゃぁぁああああ! 頭が爆発しちゃうのだぁ!」
ここまで思考を巡らせた経験が少ないのか凛音はたまらなくなったように腕を振り回しながらその場で地団太を踏む。小学生かと錯覚するような幼稚なその挙動を脇目に見ながら考える。
禍殃が地下運搬経路ではなくこのタワーそのものの内部を経由して外に出ていたという事実。間違いなく地下から時雨たちの活動領域に足を踏み出しているはずなのだ。
レジスタンスメンバーが血眼になって探しても地下につながる経路は見つからなかった。つまり経路と思えぬような場所に禍殃たちの用いる通路があるのか。
「糖分が足らぬのだ……」
「も、持ってきたのです!」
頭を抱え髪を揉みくしゃにかき乱した凛音のそばに、何やら糖菓子を無数に抱え込んだクレアが近づき抱えたそれらを凛音に手渡していく。
凛音は何かに憑かれたようにそれを受け取る。包装紙を引きちぎっては中身を食いちぎり咀嚼、嚥下する。
「お父様にも引けを取らない食欲なのです……お父様はいつも言っているのです。ガロウの血を継ぐ者ならば健啖であれ。よく食し、よく鍛え、よく戦うのだと。これがお父様の教えなのです」
クレアはなぜか尊敬のまなざしを実の姉に向けている。
「よし、完食なのだ」
「おみごとなのです」
「だがなクレア、食事は食べるだけで終わりではないのだ。ちゃんとお片付けしなければならないのだぞ。それもガロウファミリーの教訓なのだからな」
「な、なのです!」
「そうと決まれば、ダストシュートにレッツラゴー! なのだ」
凛音に腕を引かれクレアはなすがままに施設内へと連れられていく。こんな時であっても陽気な少女たちであった。
「ダストシュート……?」
「どうした?」
はっとしたようにホログラムウィンドウ越しに真那はその相貌を険しくさせる。
「時雨、東京タワーのダストシュートって、どこにあった?」
「どこって、普通に最下層のエントランスホールに……おいまさか」
「最下層にあるなら、ダストシュートに入れたものはどこに落ちるの?」
思いもよらない斬新な思考。あり得なくはない。
「ダストシュートに入れられたゴミは、地下運搬経路のゴミ集積地点に落下する、と考えていたけど……改めて考えてみると位置がずれてるわね」
無線越しの唯奈の声は何かを確信したようなもので。
「そもそも旧東京タワーには本来、エントランスにはダストシュートなどなかったはずです」
「あのダストシュートは何だ? 何のために存在してる?」
「……もし次期開発計画の際に地下空間への入り口として空けられた場所が、あのエントランスにあったとしたら。その入り口は封鎖されたでしょうけど、倉嶋禍殃がその封鎖した場所を再び開通させていたとしたら。私たちの目を攪乱させるためにその入り口は隠す必要がある。勘ぐられない不自然でない形で」
「入り口を隠すためにダストシュートを配置した……ということですか?」
そういうことなのか。確かに考えてみれば地下につながる入り口がないのはおかしい。
これまでその存在すら大して気に留めてこなかった。その疑念を抱く可能性もあったわけで、禍殃たちが何の対策もしていないことはありえない。
そのための目くらまし。お得意のブラフ作戦。
「……確かめるほか、無いな」
「ですね」
「真那、クレア、お前たちはその場に待機しろ。何が起きるかもわからない。爆発に備えてくれ」
「我々もここに待機、デルタサイトが搬入され次第、設置しなおしますな」
「ああ酒匂さん頼む。それから柊……いや紲、柊を任せるよ」
「な……っ、ちょ、ちょっとアンタね、私が手負いだからって、半分民間人の織寧紲に護らせるのはどうなのよっ」
驚嘆と憤慨の入り混じった絶叫が響いてくる。
「いや違う、お前のことだから、自分も参戦してきそうだからな。その体で突っ込まれても怪我が悪化するだけだ」
「……余計な気遣いよ。まあ心配しなくても、身の丈は見極めてるつもり。ここでおとなしく状況経過を見守ってるわ」
むくれたような声音の唯奈。こう言っておけば少なくとも地下にまで武器を持って乱入、なんてことにはならないだろう。
言葉にすることは憚られたが、今の手負いの彼女が同伴すればきっと足手まといにしかならない。彼女もそれを理解しているのだろう。あえて食い下がってくるようなことはしなかった。
「よし、行くか」
「まって時雨」
駆け出そうとして真那に呼び止められる。
「なんだ?」
「……ごめんなさい、なんでもないわ」
「なんだよ」
「いえ。気を付けてと言おうとしただけよ」
不自然な真那の発言に脳天を叩かれたような気分になる。真那の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
「っ、時雨さんっ、ノヴァなのですっ」
「来たか」
クレアの呼びかけにはっとしてタワーの方角を見やる。開け放たれた重厚な扉から何やら巨大な塊が転がりだしてきていた。
「フェンリルですね。数は四……捌ききれない数ではありませんがいかがしますか?」
「相手してる時間も惜しい。走るぞ」
アナライザーを抜銃し接近してくる狼たちに向けて駆け出す。
肩部に接続されている機関銃型兵装を剝いて飛びかかってくる巨体に、脊髄反射的に体を屈めた。
そのまま前方に飛び出し突撃を回避する。ノヴァたちは時雨の上方を駆け抜け後方へと流れていった。すぐに踵を返しこっちに突進しながら金属弾を射出してきた。
「このまま振り切る!」
一気にタワーへと向けて飛び出した。閉まりきっていなかった扉に身を滑り込ませ、広々としたエントランスに人影がないかを探る。
すぐに入り口付近に凛音の姿を見つけた。
「迎撃準備だ!」
彼女がすでに獣化しているのを確認し、そのまま小柄な凛音の傍へと急接近する。
その間にも、閉まったばかりの扉が外側から捻じ曲げられる衝撃音が轟いていた。
瞬きをしながら言葉の真意を探ってくる彼女の体を抱え上げると、その場で踵を返す。
「行くぞ凛音っ、ぶん投げるぞ!」
「なぬぁっ!? ま、待つのだシグ」
勢い任せに凛音の小さな身体を扉を突き破って侵入してきた狼たちめがけて投擲した。
「ぬにゃぁぁぁあああっっ!?」
限界膂力で投擲された凛音は一瞬にしてノヴァに肉薄した。
予備動作なしの放擲であったわけだが、流石の反射神経か。急接近した彼女は銀狼の頭部へと踵落としを炸裂させ、そのまま敵の軌道を九十度真下へと逸らす。
地面に叩きつけられ頭部が粉砕した個体には目もくれず、彼女はその反動で飛び上がる。そうして追随してきていたもう一体に突っ込んだ。
今度は鋭利な金属の尾で首元のコアを真っ二つに叩き割り、その回転を生かしてすぐ後ろから迫ってきていた個体に拳を突っ込んだ。
彼女の小さな手の甲はあっけなく装甲をぶち破り、後背から鈍色の液体が迸る。
「さすがですね」
「戻ってきてくれ!」
「シグレ! まだ沢山いるのだぞ!?」
時雨の後方を見て彼女は鋭い悲鳴を上げる。そんな彼女の後ろにも新たな個体が出現を始めていた。
「時雨、デルタサイトが機能していない以上、何度倒しても敵は減らないわ!」
「進むしかないか……仕方ない、捕まってろよッ」
凛音の華奢な脇腹を抱えそのままエントランスを一気に駆ける。そうして、ダストシュートのある壁際にまで肉薄した。
「な、ぬぁっ、ぶ、ぶつかるのだっ」
「もしただのダストシュートだったら、二人とも大怪我だな!」
もう止まることなどできない。彼女を抱えたまま怪物の口のように不気味に開け放されたダストシュートへと躊躇なく突っ込んだ。
体の各部を殴打しつつも、何やら広い空間に投げ出される。
少なくともただのダストシュートの内部とは思えないくらいの、手を伸ばせる広さ。そして同時に襲い来る容赦のない重力感。
つかの間の抵抗すら与えられず、落下を始めていた。
「ぬ、ぬぁぁあああっ!」
真っ暗な空間だが、視界の端に梯子らしきものがあるのを見受けた。突っ込んだ投入口から下に伸びている。本来ならばあれを経由して下へと向かうのだろう。
対面の壁を力任せに蹴り飛ばし反動で梯子に食らいついた。
「危な……」
「考えなしに突っ込むからです。とはいえまあ、フェンリルは追ってきていませんね」
上を見上げると、すでに定位置にまで戻った扉が再度動く様子はない。安堵のため息を漏らしつつ下方に無限に続く気の遠くなるような通路を見下ろした。
「……どこまで続いているんだこれ」
「目視では地面が確認できませんね」
「シグレ、リオンは自分で降りられるのだぞ?」
彼女を抱えたままであることを思い出し、彼女の腰を肩で持ち上げる形で自分の上の梯子に捕まらせた。
彼女が落ちても大丈夫なように、という粋なはからないのつもりだったが、上を見上げるといささか背徳感が芽生える光景が広がっている。
「いいですかロリコン野郎様。凛音様がスカートの下に着用しているのは下着ではなくインナーです。それを見て興奮するとか変態ですか。ちなみにインナーの下に下着は履いていません。もう一度言います。インナーの下に下着は履いていません」
「履いてるに決まってるのだ」
ため息をついてすぐに意識を引き締める。冗談など交わして場を和ませている時間的猶予など存在しないのだ。
こうしている間にもリミテッド全域が危険にさらされ続ける。
「しかし、この梯子……明らかにダストシュートではないな」
「はい、それにすでに地下運搬通路よりも深い地点にまで潜っています。もう間違いなく、この行き着く先は地下空間ですね」
「ここに倉嶋禍殃がいる可能性は……」
「状況から鑑みて、ほぼ100パーセントと仮定してもいいでしょう」
再度実感して思わず生唾を飲み下す。突発的なことであったためまともな装備も持ち合わせていない。
片手でアナライザーのシリンダーを展開し残弾数を確認する。指向性マイクロ特殊弾が三発装填されていた。
「通常マグナム弾のクイックローダーは三つ持ち合わせている……だが特殊弾はこれだけだ」
「正直厳しいですね。禍殃様と肉弾戦でやり合ったとして時雨様の勝率はせいぜい数パーセントでしょう」
「臨機応変にやるしかないな」
そんなことを話しているとようやく地上が見えてきた。地下における足場というのが正しいか。そこに足をつけ抜けないことを確認してから梯子を離す。
ダストシュートの真下であるわけだが、普段投げ入れられているはずのゴミは見当たらない。そこから考えてもここには誰かが住んでいるということになる。
「よし、準備はいいか?」
「問題ないのだ」
小さく首肯するのを確認して広間の端にある巨大な扉に手を付けた。
視界に広がった光景は見渡すほどの広大な空間。金属の壁で統一されたその空間は、奥が見えないほどに広い。
息を飲もうとして、耐えられないほどの腐臭に苛まされた。入り口付近には、数十人の人間の遺体が山積していたからである。
「このドッグタグ……U.I.F.だ」
死体の首から下がった金属の認識票を見て背筋が寒くなる感覚を覚えた。この遺体はまだ腐食が進んでいない。殺害されてから数時間といったところだろう。
「間違いない、ここにいる」
「ぅ……ひどい匂いなのだ……っ」
「お、おい大丈夫か?」
嘔吐感を押さえ込み、反射的に凛音をさがらせようとしたとき。彼女が掠れ声を漏らしてその場にかがみこむ。
血の色に染まっていた瞳はその濃さを薄め硬質化していた耳は徐々に垂れた。金属の尻尾は粒子として拡散していく。あまりにも強過ぎる刺激臭に獣化が解けかけていた。
「こんな状態で襲われたら……」
「時雨様! 上です!」
ネイの叫びにも似た言葉。反射的に応じることが出来なかった。
上を見上げた時には既に遅く、数メートル上の通路から落下してきた人物に頭側面を蹴り飛ばされる。ブーツの硬い感触がこめかみに突き刺さり紙吹雪のようにその場から吹き飛ばされた。
「がっ……」
用途不明な機材を蹴散らしながら、それらの山に背中から突っ込んだ。
グラグラと揺れる視界の中、機材を体の上から退けながら立ち上がる。時雨を蹴飛ばした人物が持つ二丁の短機関銃が火を噴いた。
「んぅぁ……ぬゃぁあああああっっ!!!!」
腐臭のあまりに立ち上がることが出来ずにいた彼女の無防備な背中に。容赦のない無数の弾丸が嵐となって打ち込まれる。
激痛に触発された絶叫。真っ赤な飛沫。それらをぶちまけながら凛音はその場に顔面から突っ伏した。
「凛、音……っ」
絶句しその場から一瞬動き出せなくなる。
だが両手に持った短機関銃の銃口を時雨に向けたその人物────ショートヘアの少女を見て瞳孔が震えた。
「風間、泉澄……っ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます