頻繁に釣りでもいかが? 1
渓流の釣り堀でなかなかの好成績を示した数日後、せいりゅうくんとようたくんが我が家へ遊びに来る。
だがその手にはいつものゲーム機ではなく、杖ほどの長さの袋に包まれた棒をもってきた。
「釣りの練習をしよう!」「ルアーの投げ方を教えて!」
どうやらこの間の釣りで、二人は味を占めてしまったらしい。
手始めに二人の持ってきた釣り具を確認すると、竿とリールから構成される投げ釣り用のセットだった。
川釣り用で軽量で扱いやすくは出来ているのだが、これには少々練習がいるだろう。
バットを無闇に振ってもボールに当てられないように。釣りもある程度の練習を積まないと狙った位置に投げ込めない。
練習をするには、広い場所が必要だ。
まずはグラウンドへと移動することにした。
影がほぼ真下に落ちるお昼過ぎ、河原沿いのグラウンドへと到着した。
周りを見渡すとほとんど人がいない、じりじりと焼き付けるような太陽の下では無理もない事だ。
私もここで何度かリトルリーグの練習に付き合っているが、夏休み中は朝早くに集まり日が上がりきる10時前には解散をする。この時間の気温は、運動するにはいただけない。
一通り見渡して、我々は無人のゲートボール場を間借りすることにした。
まずは二人に釣りがいかに危険かを解く。釣りにおいては針が凶器と化すからだ。
先日行った、リールの付いていない竿と糸だけの『のべ竿』でも十分に針は危ないが、リールのある投げ釣りでは危険度が一気に跳ね上がる。もし誤って人にでも引っかかったら一大事となるだろう。
私はスマフォで『刺さった釣り針の対処法』という動画を子供達に見せた。
その動画は『オレンジを人体に見立て。釣り針を突き刺してからそれを抜く』という内容で、写っているのはただの果物であったが、針を引き抜くシーンはなかなか痛々しい。
想像豊かな子供達には少々きつかったかもしれないが、いかに危険なのかという事は伝わっただろう。
この動画を見ると、それまでははしゃいでいた子供達が急に尻込みをしてしまった。
どうやら過度に伝わり過ぎたらしい……
「投げる際に、周りに十分気をつければ大丈夫」と私が必死になだめる。
子供達はなんとか気を持ち直して、ようやっと練習が始まった。
糸の先に練習用のゴムのおもりをつけて、竿を振り、おもりを投げる。
これならよほどの事が無い限りはケガはしないだろう。
軽く投げる練習をすこししてから、まずは距離よりも正確さの練習をした。
草の中に転がっている古いタイヤを的に見立てて、そこへ放り込むようにおもりを投げる。
10メートルくらいから初め、的の中に収まるようになって来ると、徐々に距離を話す。
目的があると、子供達はやる気がでるようで、この練習は飽きずに続いた。2時間あまりの特訓を経て、その日は解散となった。
練習の様子を見守っていたが、最終的には20メートルくらいならどうにかなりそうだ。
さて、今日は練習だけだったが、このままでは満足はしないだろう。
ちゃんとした『釣り』をしないと、せっかく買った道具も浮かばれない。
しかし我が小学校には『小学生だけでは川遊びをしない、必ず保護者同伴で遊ぶこと』という特別な校則があり、子供だけでは川には近づけない事になっている。
私は大人であり、小学生であるのでどちらの立場であるのか確認が必要だろう。
今度のプールの授業の時にでも職員室に立ち寄り、聞いてみる事としよう。
翌日、夏休みの
たまたま美和子先生が当直らしく、相談をしてみる事になった。
すると以外な答えが返ってきた。
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