雪国模様 2

 サディスト達の群れから執拗な攻撃を受ける。

 はじめのうちはよけていたのだが、なにせ多勢に無勢、校庭の一角へと追い詰められた。


 絶え間なく雪玉が飛んでくる、とてもではないが避けきれない。

 雪玉がボコボコと当たり始めた「イタタ」と反射的に言ってしまうが、所詮は雪なので痛くはない。

 たいした事はないと安心していたら、一つが当たり所がわるく、欠片がえりの隙間から背中へと侵入する。


「うはぁ」


 私は思わず声を上げてしまった。

 それを見た子供達は無邪気に笑う。


「ちょっとまってね、背中の雪を払うから」


 そういうと、いったん子供達は攻撃を辞めてくれた。

 しかし戦いは終わらない、つかのまの休戦だ。

 なぜなら背中の雪を落としている間にも、子供達は次に私へと投げる雪玉をせっせと作っている。


 これはたまったものではない。


 四面楚歌しめんそかの私に、一つの考えが浮かんだ。

 人は追い込まれた時には信じられない力を発揮する。




 まずは子供達の気を引くことにした。

「どうせやるなら本格的な雪合戦をしてみないか?」


「なにそれ?」「そっちのほうがおもしろいの?」


「それはやってみると分るよ」

 思わせぶりな台詞で雰囲気を作る。


「やってみたい」


 うまく話に乗ってくれた。これでサンドバッグにならずに済みそうだ。



 私はニュースで報道されていた、本格的な雪合戦のルールを思い起こす。

 それを少しアレンジをして楠田先生に提案をした。

 その提案は受け入れられて、紅白のチームに分かれて大々的に雪合戦をする事となった。


 楠田先生からゲームの説明がされる。


「みなさん、紅白のチームに分かれて、本格的な雪合戦をしましょう。

 敵と味方に3本づつ旗を立てます、敵の旗に触れたらその旗は消滅します。

 3本すべて消滅させれば勝ち、時間切れの場合は旗の多い方が勝ち。

 プレイヤーは移動中に雪玉があたったらアウトです。いったん戻って味方の旗にタッチしてそこからやり直しましょう」


 極めてシンプルなルールだ。たしかニュースで見た雪合戦では一度でも雪玉が当たると死亡扱いで、そのゲーム中は復活は出来ないのだが、それをやってしまうと雪玉に当たった子供は暇になってしまう。

 そこで独自に復活ルールを追加した。



「どうです、みなさん、ルールは分りましたか?」


「はーい」


 元気の良い返事と共に、いくさが始まる。

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