残念ながら本日は快晴です 2
マラソン大会のスタートの合図が鳴る。
パァンという音と共に生徒達が一斉に走り出した。
全員が我先にと走り出す。全行程3kmだというのに、そんな事はおかまいなしに全速力で走る。
私は小学生の群れに飲まれないように、少し間をおいてゆっくりと走り出した。
さわやかな風の中を走る。
緑一色だった河原沿いの沿道はすこし枯れ始めて、ススキなどの穂が頭を出している。
ところどころに植えられたハナミズキは赤い小さな実をつけていて、少し珍しい鳥がちょこちょこと動き回りそれを食べている。
順位など気にせずにのんびりと走っていれば、実にここち良い風景だ。
走り出して1kmもたたないうちに、最後尾に追いついた。
それは顔見知りで、少し前に一緒にゲームをやった、ようたくんであった。
このようたくんは少々ぽっちゃり体型ぎみである。
序盤のペース配分を考えずに周りについて行こうとしたのだろうか、完全に息が上がっていて早足程度のスピードしか出ていない。
私は抜き去ることもできたのだが、ここはのんびりと彼と共に行く事にした。
「ようたくん、おつかれ」
「はぁはぁ、おじさんに追いつかれたか」
「まあ、無理せずのんびりといこうよ、今は歩いて息が落ち着いてきたらまた走りだそう。ようは完走すればいいわけだし」
「そうだね、わかったよ」
それまでは焦った様子で、かなり無理しているように見えたが、私がいる事で安心したのだろうか、いったん歩き出した。
しばらく歩いて居ると、ようたくん呼吸も落ち着いてきた。
先のほうを見るとボランティアで参加している保護者の方が、こちらに向かって手を振っている。
「よし、はしろうよ」
すこしだけ良い格好をしたいのだろう、私もそれに付き合う。
「がんばれー」
「がんばって」
保護者の方からやさしい声援が聞こえてくる。
「どうも、ありがとうございます」
ようたくんはあまり返事をする余裕がない、代わりに私が挨拶をした。すると、
「あなたが噂の
「はぁ、わかりました」
と、気のない返事を思わずしてしまったが…… いったいどの子の事だろう?
その後、ちょくちょくと保護者の方から声援をいただくのだが、私だけは
どうやら私は学校では有名人らしい。
ゆっくりと順調に進んでいた二人だったが、とある交差点にさしかかった時に大問題が発生する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます